Z世代が聴く名盤 #32 Miles Davis「Bitches Brew」
ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。
そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。
筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。
作品情報
マイルス・デイヴィス、(多分)39枚目のオリジナル・アルバム。「フュージョン」というジャンルを確立した歴史的にも重要な作品とされている。
前置き
ここ最近は就活と卒論から現実逃避教養を身につける為に今までチャレンジしたことのなかった作品を聴く意欲が高まっている。なかでも今自分が最も興味を寄せているのがジャズだ。元々父がジャズ好きで、車の中や父の部屋からそういう音楽が聞こえてくることがよくあったので、全く馴染みがないジャンルではないし遺伝的には自分もジャズ好きの素養があるのではないかと見込んでいる。
ただ今作の存在を知ったのはかなり最近で、この動画を見てまずジャケットの良さに惹かれてから作品そのものにも興味が湧く、所謂「ジャケ買い」(買ってないけど)的な自分としても珍しい入り方をした。個人的にジャズは全くの未知の領域で、マイルス・デイヴィスという巨匠の存在は下の動画で名前だけかろうじて知ってたけど、曲とかプレイスタイル云々については例によってさっぱり分からない。
事前に予習というかもっと作品を楽しめるように情報を集めていた中でよく今作の評論として見かけたのが「当時猛烈な勢いで若者の人気を集めていたロックに接近した作風」というもの。ロックは自分も好きなジャンルだし、この辺の評論も今作への興味を後押ししてくれる。
このシリーズを書き始めた当初の自分だったら今作のような2枚組の大作は聴き疲れすると考えて避けてたと思うけど、なんだか今回は行けちゃう気がするので満を持してトライしてみようと思う。
感想
結論から言うと、無理でした。もう全然ダメ。基本的に同じメンバーによるセッションがほぼ丸ごと収録されており、曲数こそ6曲(CD版だとボーナス・トラックが追加されて7曲)と少なめだが1曲1曲は平均15分超えの超大作揃いである。これまでも長い曲には度々遭遇してきたが、アルバム全曲がそんな長尺ばかりとなるのはさすがにこちらも未経験であり、結構しんどかった。
ジャンルとしては先の動画の通り「モードジャズ」というものに分類されると思われる。コードやメロディという概念がかなり希薄でパッと聴いてみた感じだと皆が好き勝手に演奏しているように聞こえる。父がいつも聴いてるジャズと比べてもかなり前衛的で、曲の区別もつかないしちょっと自分には掴みどころが見出せなかったかな…というのが何回か通して聴いての感想。
「ロックとジャズの融合」という評論については、言いたいことは分からんでもないんだけどこれを「ロック」とするのはちょっと無理矢理すぎない?となった。確かにエレキ・ギターやエレクトリック・ピアノといったロックではお馴染みで(少なくとも当時の)ジャズにはなかった電気楽器を使っているという点では「融合」というワードは合っているのかもしれないけど、あくまで主役はマイルスのトランペット(もしくは演奏者全員)であるため自分の耳には普通に純度100%のジャズに聞こえる。「フュージョンというジャンルを確立した」という評論もあるらしいけど、そのジャンルに属するCASIOPEAやT-SQUAREとは似ても似つかない音楽だし…
そんな訳で、ジャズを初めて聴くという人には当然ながらお勧めできない。自分もこれ以外のジャズの名盤は全く知らないけど、自分の肌に合う名盤は同じジャズでももっと他にあると思う。今作を聴くならばもっと人生経験を積んでから、もっといろいろな角度から音楽を楽しめるようになってから、じゃないと厳しい。精進あるのみ。
一番好きな曲:特にないけど強いて挙げるならSpanish Key
一番「…」な曲:特にないけど強いて挙げるならPharaoh's Dance