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勘弁してよ、鈴原さん。『禁煙』|サクッとショートショート
それは職場の昼休みの出来事だった。
オレと同僚で楽しく雑談をし、同僚が「僕の弟が先週から禁煙を始めたんですよ」と言葉を切り出すと、オレの横でお菓子を貪っていた鈴原さんが、食べていたお菓子を口の周りに沢山付けながら、オレたちの会話に入ってきた。
「弟さんすごいですね! 私なんて、なかなか禁煙ができないんですよ! でも、弟さんのやる気を聞いて、私の心にも火が付きました。」
そう言うと鈴原さんは前
ガラクタ山のピロンと村の真実【短編小説】サクッとショートショート!
オイラの名前はピロン。
仕事は山積みのガラクタを、大きな石で潰して粉々にすることだ。
なんでガラクタを粉々にするのかは、バカなオイラにはわからないが、この村では昔からの
大切な仕事なんだ。
オイラはそんな大切な仕事を任されている。
オイラはバカだけど、そういう意味では頼られてるのが自慢だ。
ガラクタと言っても色々とあるんだ。
とくに優先して粉々にするのは、硬い緑色の板みたいなモノや、ヘ
🎭双子村【短編小説】サクッとショートショート!
僕は友人2人と双子村に向かっている。
双子村とは通称で、本来の村の名前は僕も友人も知らない。
双子村はネットのオカルト好きには、それなりに有名らしい。
僕はオカルト的な事には興味はないが、友人2人はとてもオカルト好きなため、この双子村の情報を知った途端、興奮が収まらない様子だった。
双子村の場所が、僕達が住んでいる場所の隣県ということで話が盛り上がり、その勢いで双子村に行くことになった。
「悪魔の王を復活させよ」と聞こえる【短編小説】サクッとショートショート!
「悪魔の王を復活させよ」と突然、頭の中で声が聞こえた。
最初は空耳かなと気にも止めていなかったが、その声は次の日にも頭の中で聞こえて来た。
それが毎日毎日と聞こえるので、私はノイローゼ気味になってしまった。
私は精神に異常を起こしてしまったのかと思い、市内にある心療内科に受診しに行った。
精神科医の先生は私の話を真剣に聞いてくれたが、具体的なアドバイスはもらえなかった。
代わりに精神を安
🚗車輪様【短編小説】サクッとショートショート!
仕事である地方まで来た。
しかし、カーナビ通りに進んでいくと、かなりの田舎の方まで来てしまった。
そして今は、両側が田んぼばかりの農道を車で走っている。
100メートル先の十字路の交差点に信号機が設置されていた。
こんな交通量が極端に少ない農道に、何故こんな立派な信号機が設置されているのだろうと不思議に思った。
そしてタイミングが悪いことに、僕が交差点に近づく頃、信号機のライトが黄色にな
肉塊の転生者11【短編小説】サクッとショートショート!
自由自在に動かせる舌と、強靭な歯のコンビネーションで、肉塊の一部を咀嚼する。
舌と歯は、私が意識しなくても、無意識にまるで洗練された職人の動きのように、上手に肉塊を咀嚼していた。
奥歯で肉塊を噛むと、そこからは何とも言えない旨味を凝縮した液体がジュワ〜っと溢れ、それを受け取る舌は初めて性行為を経験した童貞の男性のように、歓喜に溺れるほどの満足感を味わう。
私はこの魅惑の肉塊の味に魅了され、無
肉塊の転生者10【短編小説】サクッとショートショート!
⬅1話へ
私は窪みに入れた舌を、ちょうど肉塊の歯に引っかかるようにして自分の方へと引き寄せてみた。
すると肉塊が軽いのか、私の舌の力が強いのか、ほんの少しづつではあるが肉塊を私の方へと引き寄せることに成功した。
目の前の肉塊が私と同じような形状からすると、きっとかなりの重さはあるだろう。
そうなると後者の考え方のように、きっと私の舌は私と同等の大きさの肉塊をも引き寄せるだけの力を持っている
毎日がバースデー【短編小説】サクッとショートショート!
「毎日が誕生日なら良いな」と思った。
それが過ちの始まりになるとは、その時の僕には思いもしなかった。
彼女との出会いは偶然だったのか、仕組まれたことなのか、今となってはわからない。
しかし、その時の僕は彼女と出会えた事に、神に祈りを捧げたくなるくらいに感謝をした。
30歳になるまで、僕の人生に女性というものは存在しなかった。
クリスマスやバレンタインデーには、まるで他人事のように考え、他
スローモーションの断末魔
その日はいつもと違い、何か陰鬱な感じがした。
俺の名は青木、田舎の工場で車の部品の検品業務をしている。
毎日毎日、ラインから流れる車のシートに異変がないか調べる仕事だ。
車にも興味がなく、派遣の募集で始めた仕事に最近は不満を抱き始めてきた。
社員と同じ仕事をしても、派遣ということで社員より遥かに給料が少なく待遇も悪い。
そんな不満が徐々に俺の心に蓄積していった。
そして事件が起きた。
肉塊の転生者9【短編小説】サクッとショートショート!
⬅1話へ
これは歯だ。
しかもこの形状は人間の歯だと思う。
人間であったときの、舌で歯を触る感覚にすごく似ている。
他の動物の歯は見たことしかなく、触ったことはないが、やはり人間の歯だと思う。
そうなると目の前にある、美味しそうな物体は、人間の肉塊ということになる。
私は同種である人間に、たまらなく喰らいたいという感情に芽生えてしまったのだ。
自分が肉塊になったから、人間を喰らいたい
肉塊の転生者8【短編小説】サクッとショートショート!
⬅1話へ
とくに舌の先端に意識を集中してみると、人間の手の時とは比ではないくらいに詳しく情報が集められた。
まるで舌の先に目があるかのような不思議な感覚だった。
この美味しそうな物体は、様々な特徴があった。
まずは形の形状だが、この部分は私の体のように、丸い肉塊の構造になっている。
私のように右足が飛び出ているという特徴もない。
この部分は最初に確認したときと同じである。
最初に確認
肉塊の転生者7【短編小説】サクッとショートショート!
⬅1話へ
そこで私は、舌を右手だと思って動かしてみた。
するとどうだろう。
私が右手を上げようと考えてば舌は上に上がり、下に下げようと考えれば下に下る。
まるで私の右手が、口の奥から生えているような不思議な感覚を感じた。
しかしここでまた一つの問題が起きた。
まるでイカやタコの足のように、長く伸びた舌を手のように動かそうとしても、細かな動きまではできなかった。
舌を動かそうと思ったと
肉塊の転生者6【短編小説】サクッとショートショート!
⬅1話へ
その物体の様々な場所を舐めているうちに、この美味しそうな物体の大きさや形が何となくわかってきた。
簡単に説明すると、私と同じような肉塊の形をしており、大きさも同じくらいに思えた。
そう思うと、この美味しそうな物体は、私と同じように元は人間だった物体なのだろうか?
しかし私の肉塊の体のように、足が生えたり、口や鼻の穴があるようには思えなかった。
ただの肉の塊でしかないよう思え、生