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「会社が近くにあればいいのにーー A氏の通勤とリモートワーク革命」

ガタンゴトン。ガタンゴトン。

A氏の朝は早い。

会社のある都心まで電車およそ×時間。人にいうと驚かれるが、もう慣れたものだ。
そしてこれは電車に載っている時間だ。

自宅から徒歩で駅まで×分。そして、電車を待つ時間。そして、駅から会社までの時間。
そこまでもろもろ含めると、×時間×分。そして、往復で×2。

それをA氏は日常として受け入れていた。
会社への忠誠心と家族への想いで、通い続けた。

しかし、当然、カラダには無理が来る。
始発が出る早朝に出て、ようやく出勤時間に間に合う。
そして、帰りもちょっと残業するだけで家につくのはテッペンを超えてしまう。

睡眠時間は少なく、満員電車のため、通勤時間を仮眠にもあてられない。

「まったくこんな状態な満足に働けないよ」

そうA氏はたまにこぼし、同僚は苦笑して、労をねぎらった。

A氏の長時間通勤は一つの勲章のようだった。

だれかが、通勤がつらいといえば、A氏は通勤の長さについて意気揚々と語った。
だれかが、引っ越したといえば、通勤時間を聞き、近いと羨ましいとこぼすのだった。

「もっと会社が近くにあればいいんだが」
が、A氏の口癖だった。

勤務中に、コーヒーやドリング剤をガブのみしながら、
「こうでもしないと、仕事に集中できないんだよ」とつらそうにしゃべる。

ねむけまなこに勤務しながらも、「いや、本当に会社が近ければなぁ」と、
こぼすのだった。


そんなある日、社長の鶴の一声で「リモートワーク」実施されることになった。
順次、リモートワークの人員を増やしていき、半年後には出社は基本なし、という内容だ。

「やったじゃないですか、Aさん。これで通勤時間がゼロになりますよ」
「ああ、これで仕事に集中できるよ」




半年後―――リモート会議にて



「あれ? Aさん、もしかして会社ですか?」
「ああ、家だと集中できなくてね。会社に来なくちゃ仕事にならないよ」

「いや、しかし・・・」

そして、A氏は愚痴る
「もっと会社が近くにあるといいんだが」





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