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季節と、ポイントカード。

「ポイントカードお持ちですか」
あった気がしてカードケースの中を探す。期限が少し切れていた。新しいものおつくりしておきますので、と買った花束と一緒に袋に入れてくれた。

“そっか、よかった ”
今朝、長い片想いは散った。でも思い描いたようないつも大好きな恋ではなくて、好きで、落ち着いて、好きではないかも、と思うとまた彼は現れて、好きだと思った。ポイントカードが少しずつ更新されて期限が延びていくように、私の気持ちもずるずると延びていた。もちろん気持ちのポイントは月日を流れるほど溜まっていった。カードの開始日時にはもう3年も前の日付が記されていた。こんなに貯めたんだから切れてしまうのはもったいない、と店に足を運ぶのと同じように私の気持ちも延長されていったのかもしれない。

だから今朝、覚悟を決めて送信ボタンを押したのだ。未読でしばらく止めていた彼からのメール。『変わらず元気、そろそろ会いたいね』なんて返した。そっか、なんてそっけない返事が返ってくるとは思わず。

お客様、と呼ばれて我に返った。
こちら商品とポイントカードです、3ヶ月以内のご利用でまた期限が延びますので。
3ヶ月以内にはまた花を買おう。気持ちの期限を延長しない代わりに、ここでポイントを貯めよう。抱きしめた金木犀の花束から秋の匂いがした。秋から冬に変わるとき、私の気持ちの季節もちゃんと更新してあげよう。帰路についた私の目には涙が流れていたけれど、匂いのせいにして、もう少し泣いていよう。

p.s. 大好きな友人が、新しい気持ちを更新できますように。

#エッセイ #秋 #金木犀 #小説 #恋愛 #コラム

読んでくださってありがとうございます。今日もあたらしい物語を探しに行きます。