百合オタやっててよかったなあと思ったワケ


 私は女性同士の友情や恋愛を描く「百合」というジャンルが昔からの大好物であり、ブログでは年に一回、その年に刊行された百合漫画の中で特に優れていると思ったものをランキング形式で発表している。
 この記事が結構ウケがよく、一度に大きく拡散されることはないものの私のブログの記事の中では珍しく、常に長く広く読み続けられているタイプの記事であり、SNSでは「参考になった」等の意見を多く頂戴している。去年は百合アワードと題し、紹介する作品の幅を漫画以外のメディアにまで広げ、一般投票を行ったり有識者からの意見を参考にするなど、個人ブログとしてはちょっと逸脱した手間を割いている。
 どうしてこのような記事を書いているのかというと、主な目的のひとつは百合市場の開拓、拡充にある。「百合」というジャンルはだいぶ浸透してきたものの、専門漫画誌が相次いで休刊したり「BL」と比較すると商業面で供給が少なかったりと、市場は広いとまだまだ言い難い。
 少しでも多くの人に優れた百合作品を手にとってもらいジャンルの魅力、その広さや深さを知ってもらうことで、また1冊でも多くの商品が売れてクリエイターに利益として還元されることで、市場が広がり受け手も作り手も、何より私が幸せになろうじゃないかという目的があり、なんだか意識が高そうに見えるけれど結局は単なる自己満足なのだ。

 そんな自己満足を続けていたある日、某誌の編集の方からメールをいただいた。献本したいのだという。その後、私の家に数冊の雑誌と、編集者の方による直筆の手紙が共に送られてきた。
 その編集者の方は私のブログの読者であり、またひとりの熱心な百合オタクだった。頂戴したメール、そして直筆の手紙には私にとって嬉しい内容が書かれていた。
 この方もまた私の意思に賛同し、百合というジャンルの魅力を広げるために、新しい百合漫画を連載へとこぎつけたというのだ。雑誌のカラーとは少々異なる正統派百合作品の理解をなかなか得られなかった社内で、孤軍奮闘した結果なのだという。才能ある作者の方との二人三脚で作り上げた作品は細部に至るまでこだわりが行き届き、とても素晴らしいものに仕上がっていて、私はすぐに感想を送った。
 百合オタクとしてだけではなく、編集者としても才ある方の活躍のおかげで、またひとつ魅力的な百合作品が世に送り出され、さらに多くの方の目に届き、市場を広げた。丁寧に書かれた手紙を読み返しながら、拙い知識と拙い技術の拙いブログながらも、思うままに百合の宣伝活動を続けていて本当によかったと思った。そして何より、この編集の方に対しては深い感謝の思いしかない。
 
 今回の件に限らず、「百合の魅力に目覚めました!」といったようなメールをいただく度に、私はひとりの百合オタクとして、歓喜の想いに打ち震える。また、こういった草の根活動を通して、まさかと思うような嬉しい出会いや出来事が多くあった。
 私は百合が好きなだけの人間であり、人よりちょっと多く百合を嗜んでいるだけである。その魅力的なものの「ちょっと」をひとりでも誰かと共有しようと思っただけで、得られたもの、教えられたものの輝きはとても大きかった。動機の根源は、単なる自己満足だったのにも限らず。
 このケースに限らず何にでも言えることであり少々説法じみてくるが、自分の中にあった知見や技術を分け与えることで、巡り巡って得られるものは、簡単に奪って得たものと、その価値は比べ物にならない。それは気のせいだとか考え方次第なんて精神的な物差しで言っているのではないのだ。綺麗事でもなんでもなく、明確に「違う」のである。
 先述の編集の方もそうだ。この方の「百合の魅力を知ってもらおう」という思いが、素晴らしい作品を生み出し、ジャンルの未来を支える一助となった。それは何らかの形で巡り巡って、この方の元へ返ってくるのだろう。いや、この方にとって深い価値のある何かが、もう返っているのかもしれない。
 物や人間に対して安易で暴力的な消費を促したり、奪ったり奪い方を煽るだけの陳腐なコンテンツが広がりやすく、支持されやすい社会にあっても、誰かに分け与えて得られるものの魅力にはかなわない。今更感あふれる自己啓発本のようなことを言ってしまったが、そうなんだから仕方ない。


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怪文書/LG(B)TQ/百合/【連載中】コミック百合姫『こじらせろ!百合妄想』yomuco『ガールズラブ・オブ・ザ・デッド』/【連絡先】nanaoku7oku@gmail.com
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