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海がみたかった

海がみたかった。

現実逃避したくて、海がみたくて(日本海がいい)、折角なら行ったことがない場所が良くて、富山に行くことを2日前に決めた。

行ったことがないから何もわからないけど、海の近くがよくて、美術館も行きたかった。教授に相談したら色々教えてくれて内川周辺に行くことにした。街並みが面白いよ、海は見えないかもしれないけど。新湊大橋から見えるみたいなので大丈夫です。意地でもみます。海なし県育ちの海への憧れは半端ないんだから。

新幹線に乗って富山に降りた。路面電車が改札を出た真正面にいて、その色が眩しくて絶対乗ると決めた。とりあえず荷物をホテルに預けたい。

路面電車は調べてたからとりあえず内川周辺に行くことにした。空いてる電車、地元みたいだなって思った。ちょっと古びてる感じが心地よかった。

内川周辺の街並みは面白いなんて表現じゃ足りないなって思った。こんなにも川が近いのか、水が近いのか、船がたくさん止まってる、隣り合う家同士の間に隙間はない。似ているようで少しずつ違う家々をいつまでも観察したいと感じた。小さなホテルを見つけたり、オシャレなお店を見つけたり、綺麗に揃った屋根の角度に見とれたり…どこか他の国のような、でも確かに日本の風景、そんな不思議な感じがした。

オススメされた六角堂というカフェに行った。町家を改装して作られたこのカフェは木のぬくもりに溢れていてなんだか不思議な安心感があった。この日は雨で傘を預けたのだけど、その時に受けとった小さなオブジェがとっても可愛らしかった。お昼を食べて、お手洗いを借りたのだけど…もう、ここのカフェはお手洗いを借りるために入るべき。説明するのはなんだか勿体無いから書かないけど、もう、写真集とか出してくれないかなって思った。空を見上げたとき隙間から見える標識が私の最高の推しポイントです。

新湊大橋に行かなくちゃ。

確かこの辺で急に雨が強まり、風がめちゃめちゃに吹いてきてびしょ濡れになった。傘なんて役に立たないじゃん。あのスキニーは絶対絞れたな。やってないけど。新湊大橋に着く頃にはびっしょびしょで珍しく風邪ひくんじゃないか?って思った。エレベーターに乗って橋の中へ。天気がこれなので海は荒れに荒れていた気がする。海よりも橋の中の冷たい感触しか記憶にない…こんな予定じゃなかったのに

暫くしたら雨は止んだから、オススメされてた船に乗ることにした。地元の方しか乗らないんだろうな…なんだか申し訳ないな…せめて誰か来てくれ…と願ったけど人数は増えなかった。船からの景色は好きだった。海、橋、工場、古びた感じ、揺れる船、渋いおじさん…なんだ、最高じゃん。

内川周辺に戻って、さっき迷って結局食べなかった六角堂のデザートが忘れられなかったからもう一回行った。今度は二階に。階段が好き、棚が好き、机も引き出しも椅子もクッションも木の温もりも、なんだろうこの落ち着く感じ…ケーキが美味しくて飲み物が温かかった。

駅に戻って夕飯はしらす丼を食べた。
かまぼこを買ってホテルの部屋で食べよ〜お土産は明日買おう。
もう、眠い。

次の日はガラス美術館に。晴れた日の外観は眩しくて、館内は温もりに溢れていた。エスカレーターにのって上を見上げながら無駄に行ったり来たりし、展示室に入ってガラスの綺麗さとその反射を見つめたりした。カフェのお花で彩られたカーテンがオシャレで、机の上にも一輪お花が咲いていた。パフェを食べながら窓際の段差で遊ぶ兄弟を眺めた。

帰らなくちゃ。現実逃避は時間切れだ。

新幹線の中で食べようとますの寿司を買った。動き出す新幹線の窓の風景を止めることができたらいいのに。
ますの寿司は小さいサイズを買ったことを後悔した。もっと食べたかったなぁ…

……そういえば海

また見に行こう、今度は晴れた日に、傘をささずに。