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ななまんの考える「機材としてのベース」論。

プロフィールで「アマチュア・ベーシスト」と名乗っているのに、そう言えばベースについて真正面から語る記事をこれまで一本も書いていない、という世間的にはどうでも良いが、自分としては驚愕の事実に気づいてしまった日曜日の午後なのである。
そんな訳で、今日は時間もあることなので、自分なりの「機材としてのベース論」をまとめつつ、今メインで使っている機材についてご紹介させていただこうと思う。

今年は、自分の怪我や新型コロナのせいで、今日に至るまでまったくライブハウスのステージに立てていないのだが、何事もなければ、年に2回の恒例ライブと、先輩方のバンドのエキストラなど、多ければ年に6〜7回はステージに上がる機会があるのだけれど(その割には巧くならないのだが)、「サラリーマン」という生き方をしながら、自分の中の大いなるアマチュアリズムを炸裂させる機会がそれだけある、というのは恵まれている方だと思う。

学生の頃からだが、ステージに上がる機会を得るたびに、今度はああいうベースを使ってみようとか、こんなエフェクターをかませてみようという、良く言えば向上心、悪く言えば機材収集癖に身を委ねていた結果、今まで買ったり売ったりした機材はどれだけになるだろう。金額に換算すると、などと考えてみると空恐ろしいが、おそらく高級外車1台分くらいのお金は突っ込んでいる気がしなくもない。「ベース馬鹿」である。

ただ、ある程度「ステージ慣れ」してくると、徐々に自分なりに「ベストなな機材」というのは見えてくる。つまり、必要なものと不必要なものの峻別が上手くできるようになるということであり、同時にライブハウスへの移動にあたって「如何に運ぶ機材を少なくできるか」というところに目端が利くようになるということでもある。もっとも、機材を少なくする工夫というのは音楽的な意味合いよりも、加齢による「体力の低下」によって、という面は大きいのだが。

今使っている機材もだいたい3年前くらいにはすっかり固まったかな、という感じではある。
結局のところ、今自分が関わっている音楽ジャンルからすると、

1.現場で一番「つぶしが効く」ベースは、ジャズベースタイプの機材である。

という事に気づいてしまったのである。
もちろん、このようにやや極端な事を言えば、
「プレベも良いぞスティングレー最強SGベースを忘れるないやいや男は黙ってサンダーバードだろダンエレクトロかわいいなやっぱスタインバーガーだろ莫迦野郎」と百家争鳴になるのは理解しているし、それぞれが、それぞれの個性を持った素晴らしいベース達であることも十分承知をしている。
ただ、あくまでこれまでの自分の経験と音楽性の上では、歌モノからインスト系まで無難に音作りができるのはいわゆる「JBピックアップ配置」の機材なのである。むやみにパワーが強くなく、丸い音からスラップのドンシャリな音まで出せて、良い意味で個性が前に出すぎない。こういう機材が、やはり現場では重宝すると言うか。

2.プリアンプはあったほうが便利。だけど、ベース本体はパッシブが吉。

私のようなアマチュアでは、ベースアンプまでライブハウスに持ち込むわけではないので、どうしてもライブハウスに常備されているベースアンプを使うことになるのだが、何度も行っているライブハウスならともかく、初めての先だと、どんなベースアンプがあるかわからないし、ベースをつないでアンプのEQをさわりながらああでもないこうでもないと悩むのも時間と労力が勿体ないので、私の場合はアウトボードのプリアンプをエフェクターボードに組み込み、そこで粗方の音を作っておいて、ライブハウスのベース・アンプは必要がある時にちょっといじる程度にしている。まあまあ大きい箱であれば、どうせベースはプリアンプからDIに送られて、そこから先の音作りはPAさんにお任せとなるのだから、足元のプリアンプこそ肝であるように思うのだが。
ベースにプリアンプが搭載されているアクティブタイプのベースは、そういう意味では手元でEQが扱えるので、曲間に調整できるなどの利点があり、ここも捨てがたいのだが、パッシブタイプ+アウトボードプリアンプ方式の利点はバッテリー切れの心配をしなくて良いということが大きいし、演奏する音楽ジャンルによってプリアンプを差し替えることで違うキャラクターのトーンを出すことも出来る、という点は重要なメリットだと思う。

3.やっぱり5弦ベースは、いいぞ。

一度使い初めてしまったら、もう後戻りは出来ないというか。
普通の4弦ベースの、低い方にさらにもう一本低い弦(Low-B弦)が張られている5弦ベースを使い始めたのは2002年の頃。今ではすっかり、自分の中では5弦がベースの標準になってしまい、たまに4弦を持つと「何か足りない」という気になってしまう。
5弦に初めてトライするベーシストにとって、私も初めの頃はそうであったが、「左手と右手でそれぞれ違う弦を触ってしまう」という事をしてしまう。Cの音を出すのに、左手は3弦の3フレットを押さえているのに、右手が4弦を弾いてしまう、という具合である。
これはいずれ慣れるものなのだが、何の事はない。5弦を「フィンガーレスト」代わりにしてしまえば、右手も楽だし、4弦以下の距離感が4弦ベースと一緒になるので、弦の取り違えもぐっと少なくなくなる。何より、任意の場所でフィンガーレストが使えて、かつ5弦のミュートも出来ていることになるのだから(←こんな怠惰な理由で5弦を重宝している、というのは何か間違えているような気もするが)、言うこと無しである。

もうちょっとましな5弦を使う理由。それはFとかGとかがキーの曲の場合、ベースとして入れたいおかずとしての音は、CとかGになろうかと思うが、4弦ベースの場合、F、Gあたりで始まる曲はローポジションをとるかハイポジションをとるか、それは曲の展開にもよるが、場合によっては「上ずった」音にならざるを得ないこともある。そんな時に5弦があれば、低い方のCやDが簡単に出せるので、フォームがとても楽になるし、5弦の太いゲージによるドスの利いた音は、Eにしても4弦開放で鳴らすより5弦の5フレットで鳴らした方が深い低音が出る。このあたりが5弦ベースの魅力ではあるだろう。

で、今、メインで使っているのはこんなベースで。

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左は、FenderUSA、AmericanStandardのJazzBass5弦。2014年製、色はキャンディ・コーラ。右はBacchusハンドメイド、WoodLineDX5/R。
どちらも、アルダーボディ、JBスタイルの5弦であることは共通。弦はリチャード・ココのニッケル弦。
先に書いた3つの要件を、リーズナブルな価格で調達できる機材で満たそうとすると、こんな形になるのではないか。

この2本を入手したのは2014年から2017年にかけてだったか。
似たようなスペックのベースを2本揃えたのは、厨二病的な表現をすれば、船の世界でいう「一番艦、二番艦」みたいなものにしたかったから(笑)。
最悪どちらかの調子が悪かったり故障したとしても、現場に迷惑をかけずにすむ、ということもあるし。

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Bacchusと言うと、どうしても「安いベース」というイメージがつきまとうけれど、さすがにハンドメイドのシリーズはしっかり出来ているし、音もしっとりとした落ち着いた音。指板のローズウッドは一瞬エボニーかと思うほどみっしり木目の詰まった感じの材で、見た目も、触れた感じもいい感じ。ネックもあまり暴れないあたりは、さすがのメイドインジャパン。
これはBacchusのベースに共通することだと思うのだが、割合ローががっつり出る印象。こちらの方が先に我が家に来たので「姉」となる。さしづめ「和服の似合う、おしとやか系の姉」といったところか。

簡素な演奏デモは、こちら。
Fenderに比べ、ローが厚めに出ているのがおわかりいただけるだろうか。


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Bacchusの妹分として調達したFenderのJB。アメスタなら普段使いで気兼ねなく現場に持っていける。メイプル指板に赤いボディ、というのは自分としては好みの組み合わせで、楽器店で見つけて即買いしてしまった。
やはりFenderのブランド力と言うか、まあ変な話ではあるのだが、ベテランの方々の中にはFenderを持っていかないと「君、安いベース使ってるね」みたいな事を言われるとか言われないとか、ね。まあそれに近いこともあるにはあるので、Fenderも一本くらい持ってないとなあ、とね。これも現場力。
出音は、Bacchusに比べると音の重心がやや高めで、ハキハキとした印象。やはりスラップで弾いた時のパキッとした感じが心地よい。このあたりは指板がメイプルということも影響しているのかもしれない。
さしずめ「妹」は「奔放な、アメリカ帰りの帰国子女」といったところか。

演奏デモはこちらの記事を。Bacchusに比べて、スラップの音が幾分抜けが良いのがおわかりいただけるだろうか。

いずれにしても。
早く、この2本を持ってライブハウスに行き、大きい音でガンガンに弾き倒し、お客さんに盛り上がってもらいたい。
そんな、ついこの前まで当たり前にあった日常が、今となっては本当に恋しい。それは、もう「無いものねだり」になってしまうのかもしれないのだけれど、いつかその「当たり前の日々」が必ず戻ってくる、その時のために、自分の機材と、何より自分の技量だけは、しっかり保っておきたいものだと思う。

(了)

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