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トランプ大統領 ━ 言葉で世界を認識する人は「嘘つき・詐欺師」と罵倒して、世の中は人間の行動で動くと認識する人は「約束を守る正直者」と心酔する。 ●米国、妊婦の査証発給を制限 「出産ツアー」抑制へ

【AFP=時事】米国は23日、いわゆる「出産ツアー」目的で入国しようとする妊婦に対し、今後は短期滞在査証(ビザ)を発給しないと表明した。
 規定変更は24日に発効する。ホワイトハウスは発表で、外国人が「米国で出産することで、子どもの米市民権を自動的かつ恒久的に確保するために」査証を利用していると指摘。「米市民権の健全性は守られなければならない」と表明した。
 米国では憲法により、国内で生まれた人には自動的に国籍を付与する出生地主義が定められている。ドナルド・トランプ大統領は移民の制限を優先政策の一つとして掲げており、出生地主義を廃止する構えを示していた。
 出産ツアーをめぐっては昨年11月、香港の航空会社が米領サイパン行きの航空便に搭乗しようとした日本人女性に妊娠検査を強制する出来事も起きている。
【引用 終わり】
トランプ大統領は、また一つ有権者との約束(=公約)を実行する為に国務省を動かすことに成功したようです。
他国から「出産ツアー」で米国へやってきて、米国で子供を産むと、生まれた子供は米国国籍を取れます。すると出産した女性も 米国人の子供の親として、米国に滞在する事ができるようになるのです。
この手法は かなり前から行われていました。確か アグネス・チャンさんも アメリカへ行って出産したと思います。しかし アメリカに滞在して出産できる資金的余裕のある人たちが、個人的に訪米して出産している時には、さほどの問題は起こりませんでした。金持ちが個人的に訪米して子供を産む場合、多くの人が英語を話せて 米国の生活様式で生活しました。出産して子供に米国籍をとらせた後には 帰国する人も多かったからです。アグネスさんも日本へ戻ってきました。
ところが 近頃 中国人が 特定の業者の主催する「出産ツアー」を利用して大挙して押し寄せて 地元と様々な軋轢が発生するようになりました。
中国人が団体でやってくると、中国様式で生活するからです。その上、中国からの送金で生活する場合、親本人は米国人ではないので税金は払わず、米国人の子供は米国の福祉を利用できるという、中国人にとって都合の良い状態になっていました。
かなりの割合のアメリカ人は この状況に不満を募らせていましたが、「出生地主義」は米国の憲法に掲げられた移民の国米国の国是でしたので、今までの大統領は何も手を打ちませんでした。
「出生地主義」は18世紀~20世紀前半の米国では、合理的でした。なぜなら、気軽に海を越えて行き来が出来なかったこの頃は 米国にやってくるのは殆どか移民でした。しかし 移民が米国籍を取るまでには数年かかります。すると 移民が米国籍を取る前に 子供が生まれる事も珍しくありませんが 生まれた子供の国籍はどうなるのか?
ここで「血統主義」なら、親にまだ米国籍がないのなら親の出身国の国籍となります。しかし 例えば親の出身国がフランスだとした場合 18世紀~19世紀アメリカ開拓時代に田舎で生まれた子供が、ワシントンのフランス大使館まで出生届けを出しに来る事は(不可能ではありませんが)大変です。
さらに数年後に親に米国籍が付与されたら、子供はそれから米国籍を申請するのでしょうか?
また 両親の出身国が違ったら、子供はどちらの国籍になるのでしょうか?
このように 生まれた子供の国籍に「血統主義」を適用すると、18世紀~20世紀半ばの米国では、様々な不都合がありました。ですから まだ米国籍の取得ができない親から生まれた子供でも、子供には最初から米国籍を付与した方が合理的だったのです。
この為に 米国では「出生地主義」が採用されたのだと思います。言葉を変えれば「移民の子供として米国で生まれた子供は 米国で教育を受け 米国で働き 米国に税金を納めるだろう」という前提の下で、最初から米国籍を与えられたのだと思います。
しかし 20世紀後半から、人々が自由に世界を行き来できるようになると、「出生地主義」の前提が崩れてきます。「米国で出産だけして 米国籍をとる。でも出身国で生活して、米国に税金を納めない」とか「米国で出産して 子供に米国籍をとらせたら、親も米国に居座る」など 前述しましたように「出生地主義制度の悪用が 発生する」ようになったのです。特に 中国人があからさまに「出産ツアー」を始めると「制度の悪用」が、人目を引くようになりました。
だから トランプ大統領は「出生地主義の制度の悪用を止めさせる」という公約を挙げて、その実現に向けて一歩を踏み出したのです。
元々米国で「出生地主義」が採用されたのは、18世紀~20世紀前半には その方が合理的だったからです。しかし、20世紀後半からは「制度が 悪用される」ようになったから、「制度を変えるか、制度の運用を変える」のは、当然の事であるような気がします。
だから「トランプ大統領を 支持する人がいる」のです。
しかし、「トランプ大統領は《極悪人だ》として 罵倒する人がいる」事も事実です。
これは なぜでしょうか?
私は 米国人の中で 「世界・人間社会は何でできているか、何によって動いているか」という根源的な価値観が、2種類あって、その価値感の違いによって 米国人はトランプ大統領を支持する人と 批判する人にわかれていると考えます。
《米国人の2つ価値観と トランプ大統領への支持不支持》
1「世の中は 人間の《行動》で動いている」と認識する人  →支持する「約束を守る正直者」と心酔する。
2「世の中は 《言葉》で動くべき」と認識する人
→支持しない「嘘つき・詐欺師」と罵倒する。
別の切り口から分類すれば 
1は 現実主義者 → 人間は勝手に存在している
  哲学分類「唯名論」「経験論」 主にイギリス
※「唯名論」人間一般という普遍は 存在しない。「人間」という分類は人が考えた「言葉」であり、現実社会の中では、太郎・次郎・花子・幸子という個人が存在している。

2は 理想主義者 → 人間はこうあるべきだ。
 哲学分類「普遍実在論」「大陸合理論」 主に欧州大陸
※「普遍実在論」「人間」という普遍がまず存在して、個人個人は「人間」があって初めて成立する
《米国人の2つ価値観の考察》
米国での哲学といえば 元来 イギリス由来の「唯名論」「経験論」を土台にした プラグマティズムでした。
荒野で生きるか死ぬかの生活をしてながら、国土を開拓してきたアメリカ人にとっては、「人間はこうあるべきだ」と理想を《言葉》で語ったり「我思う 故に我あり」と《思考》するばかりで、作物を育てるという《行動》をしなければ、死んでしまいます。
ですから「(言葉や思考などの)《知識》は、生き残るための行動に利する《道具》である」という「道具主義」に行き付きます。
ですから 1の人達は トランプ大統領のほら話を含んだ発言ではなく 行動によって大統領を評価します。
1の人達のトランプ大統領への評価。
 言葉は道具である。だから、望む結果をもたらすためには、ホラを吹いても構わない。
トランプ大統領は 国民との約束を守って「不法移民をなくす(減らす)。TPPから脱退する。北米自由貿易協定を見直す。温暖化防止条約から脱退する。出生地主義制度の 悪用を止めさせる」という、アメリカ国民が生き残るために利する《行動》をしている。
だから トランプ大統領は 素晴らしい大統領である。
 これに対して「『人間はこうあるべきだ』という《言葉》によって人々が啓蒙される事によって 世の中は良くなってゆく」と認識している 2の人達は その人物が発する《言葉》によって その人物を評価します。

 ですから 2の人達は トランプ大統領のほら話で、大統領の人格を評価して その行動には目を向けません。

2の人達のトランプ大統領への評価。

言葉こそが その人物の評価基準である。だから、望む結果をもたらすためでも ホラを吹くのは卑しい手法である。

 トランプ大統領は 中国や北朝鮮との交渉に際して、「独裁者の気分を良くしておくこと、「交渉するのに 損にはならない」と考えているのだと思います。だから《言葉》を道具として使って 習近平主席や 金正恩委員長を「良い友人だ」「素晴らしい人物だ」などと持ち上げることがあります。

《言葉》を評価基準にする人達は、なぜトランプ大統領がそんな言葉を使うのかが理解できずに、本当に大統領が金委員長を「素晴らしい友人だ」と考えているとは到底思えないので、「嘘つきだ」と感じてしまうのです。

 つまり トランプ大統領の発する《言葉》に振り回されて、パニックに陥り、彼が全く理解できない。そして理解できないが為に「恐怖感」が醸成されて、トランプ大統領が悪魔に見えてしまうのだと思います。

 だから どんな手段を使っても《悪魔》を引きずりおろさなければならないと思い詰めて、ウクライナ疑惑で弾劾騒動を起こしたりしているのだと思います。

 このように 「親トランプ」 対 「反トランプ」の、現在のアメリカの分断は、元をただせば「現実主義=唯名論=イギリス哲学」 対 「理想主義=普遍実在論=大陸合理論=欧州大陸」という イギリスと欧州大陸の 根源的哲学の違いから発生しています。

 ですから これは 対立を解消する事は難しいかもしれません。なにしろ イギリスと欧州大陸は 中世のキリスト教神学の頃の「普遍論争」に端を発して、哲学論争を千年もやっていますから… 

 そして 結局はイギリスがEUから離脱するのは、「根源的世界観の違いを 埋められなかった」からかもしれないと思います。

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