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新型コロナで世界のリーダーの支持率上昇中 なぜ安倍政権だけ下がったのか?

ボリス・ジョンソン首相 ©AFLO
 世界を覆うコロナ・ショックの中で、政治指導者の一挙手一投足に改めて注目が集まっている。…評価を高めた政治家、低めた政治家の命運を分けたものは何なのだろうか。
「ポピュリスト」の人気が再燃している?
 コロナ・ショックを受けて、これまでポピュリスト政治家として名指しされてきた政治家の支持率が上昇しているのが目を引く。…
ボリス・ジョンソン内閣の支持率は、2019年12月時点で34%、不支持率が46%だったのが、3月末になって支持率52%、不支持率26%と逆転、記録的な上昇をみせた(YouGov調査)。この数字は首相がコロナ・ウイルスに感染したことへの同情もあることも考慮しなければならないが、一政権がここまでの高い支持率を得るのは異例のことだ。
 支持理由についても、これまで首相を「無能」と判断していた有権者は少数派に転じ、2020年に入って「有能」とする割合が増えている。イギリスは、依然として感染者封じ込めに手こずっているにも関わらず、である。…
米トランプ大統領はどうだろうか。ここでもトランプ大統領を評価する有権者は49%、支持しないのが45%と支持率が上回る(米Gallup調査)。…トランプ大統領への支持率が概ね40%前後で推移してきており、これまで不支持率の方が高かったことを考えると、追い風が吹いていることは間違いない。
危機時に与党を信頼しがちな有権者たち
 政治情勢を示す英語に「旗下集合効果」というものがある。これは、危機時にあって、現政権の指導者を支持する態度が有権者の間に広がる現象を指す。
 国難にあっては党派を超えて政権を支えることが有権者の責務であるという意識に加え、政策に多少の不満があっても、危機管理対策では野党よりも与党に信頼が寄せられる。野党にかけるリスクよりも、現職を応援してリスクを減らし、安全を取ることが合理的だからだ。
 例えば、…ジョージ・W・ブッシュ大統領は…在任期間の平均支持率は49%に過ぎなかった。しかし、2001年の9.11同時多発テロを受けた直後には86%という、米憲政史上で最高の支持率を記録している。…
 だから、支持率上昇の恩恵に浴しているのはポピュリスト政治家だけではない。ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのコンテ首相など、それぞれの絶対的な人気の度合いは異なれども、コロナ・ショックを受けて支持率の上昇をみている。
 ちなみに、メルケル首相のドイツをはじめ、台湾、ニュージーランドなど、コロナ・ウイルス封じ込めに一定程度成功していると評価されている国のリーダーは女性であることが多いことも特徴的だ。
有権者は政策で評価しない
 少し前に政治学者の間で話題になった『現実主義者のための民主主義』という本がある(エイカン=バルテルズ著、2016年〔未邦訳〕)。この研究は、過去のアメリカの有権者行動を解析して、いかに有権者は時の政権の政策や業績を考慮しないで投票しているのかを実証したものだ。
 自然災害やインフルエンザの感染など、政権とは関係ない出来事がその責任とされたり、直近の経済情勢だけが考慮されたりする一方、歴史的な転換となるような時の政権の政策が評価されないことが多いという。…
 もちろん、これは有権者が愚かだというわけではない。全ての有権者が複雑な現象の原因と結果を政策と結びつけて理解できるわけではなく、認知上のバイアス(好ましいと思うことに引き付けて解釈すること)や党派性が投票の基準になるためだ。
 こう考えると、コロナ・ウイルス対策のように、専門家の間でも場合によっては意見が分かれる政策は、有権者が冷静に判断できるものではない。
そこで政治に求められるのは、単に安心感を提供できるかどうか、なのである。
安倍政権の支持率低下 日本はなぜ例外?
 そう考えると、日本の特殊さが際立つ。というのも、コロナ・パニックを受けて安倍政権の支持率は低下傾向にあるからだ。3月中は持ちこたえていたものの、直近の4月10-13日の世論調査では支持率は前月から5ポイント下がって40%、2月以来となる不支持率(43%)との逆転現象を経験している(共同通信調査)。
 トランプを含めて各国指導者の支持率が上がる中、なぜわが国の総理の支持率だけが下がっているのか。確かに政府の対策に不満は寄せられてはいるが、死者数をみても、他国ほどひどい状況ではない。外出禁止措置についても、他国のように罰則があるわけではなく、市民生活を過度に逼迫させるものではない。
 日本という例外を作っているのは、そこにもうひとつのポピュリズムが潜んでいるからとの仮説が成り立つ。
 安倍政権とは対照的に、支持率を上昇させているのが小池東京都知事だ。東京オリンピック・パラリンピック延期を受けて支持率が下降していた都知事の起死回生のチャンスを提供したのが、今回のコロナ・パニックだった。支持率は2019年12月をボトムに上昇し、今では80%近い支持率を保っている(産経新聞FNN合同調査)。
 都知事は、3月25日に「ロックダウン」や「オーバーシュート」といった強い言葉を使いながら、国に先んじていち早く外出自粛要請を都民に行い、その後、中央政府が緊急事態宣言を出す下地を作った。4月7日に緊急事態宣言が出された後には、より幅広い業種の自粛要請を政府に対して求め、事業者あたり50~100万円の協力金を約束、国が当初模索していた世帯への最大30万円の「給付金」よりも安心感のある約束を打ち出している。
 医療保健や教育行政などの規制や運営の現場は、日本では地方自治体に任されている。特措法に基づく非常事態宣言も出す主体は政府だが、指定や要請の責任主体となるのは各自治体だ。このため、身近な行政機関は、日本では強い政治不信の対象となっている中央政府よりも住民への安心を供与できる、より大きな存在なのだ。
なぜ日本の首長にポピュリストが多いのか
 ポピュリズムに話を戻せば、冒頭のジョンソン首相やトランプ大統領、ブラジルのボウソナロ大統領など、諸外国では国政レベルでのポピュリズム政治家が目立つのに対して、日本のポピュリストは地方の首長であることが多い。例外は小泉純一郎元首相だが、彼を除けば、田中康夫元長野県知事、石原慎太郎元都知事、橋下徹前大阪府知事・市長、河村たかし名古屋市長など、これまでポピュリスト政治家とされてきたのは全て地方政治のプレーヤーだ。
 日本でなぜ地方レベルのポピュリストが多いのかには理由がある。ひとつは日本の地方政治が「二元代表制」と呼ばれる、民意を代表する首長と議会という2つの回路を持つ制度によって運営されるためだ。定数1の選挙区を持つのは大都市のみであり、それも東京都の場合は千代田区と中央区のみだ(島部・市部除く)。その他の市町村の選挙区の定数は概ね2から6が定数と議会が比例代表制をとるのに対し、首長選挙は大きな単一の選挙区(すなわち小選挙区)で選ばれる多数代表制のもとで行われる。
 こうした非対称性がある場合、議員候補者は特定業界や組織に応援されて「狭く堅い民意」を代表する傾向があるのに対し、首長は大票田の集まる都市部の無党派層からなる「広く薄い民意」を代表しなければならない。従って、首長にとっては既得権益や議会を批判して選挙戦を戦うのが合理的になる。
 ポピュリズムの定義は多様で、一般的には政治・経済エリートに対して庶民と呼ばれるものたちの民意を代表する政治スタイルとされるが、日本の首長はポピュリスト政治を培養しやすい土壌にあるのだ。
 さらに二元代表制のもとでは、日本の首長はアメリカの州知事と同じように、大統領的な政治を行うことが可能になる。議会解散権や条例への拒否権、独自に条例を制定することも可能だ。さらに2017年の地方自治法改正によって、福祉サービスや飲食店営業許可の事務も担うようにもなり、大きな権限を手にするようになった。
 コロナ・パニックのような危機時においては、歯切れよく、毅然とした態度を示す首長の存在感が必然的に浮上することになる。そして、ポピュリズム政治がエリートに対する庶民の声を代表するものだとすれば、日本の首長は、法的権限に欠き、財政赤字に苦しんで弱い政策しか打ち出せない政権与党を仮想敵とすることで、住民の支持を集められる。
 つまり、北海道の鈴木知事、大阪の吉村知事などが休校措置などを含む緊急事態宣言を独自に出し、危機事態の「競り上げ」を行っているのには政治的な理由もある。政権支持率低下と反比例するかのように、彼らの支持率もまた小池知事とともにあがり、政府は背中を押されるようにして4月16日に全国規模での非常事態宣言に踏み切らざるを得なかった。他国と違って、政権の支持率がなぜ下がっているのか、そして首長たちの支持率がなぜあがっているかのひとつの説明になるだろう。
 トランプ大統領のように支持率が上昇している例でも、例えばコロナ対策の陣頭指揮に立つニューヨーク州のクオモ知事も実に87%と支持と不支持率を逆転させている(シエナ大学調査)。
毅然とした態度と無責任さは紙一重
 もっとも、以上はポピュリスト政治家がコロナ・ウイルス対策で最も有効な対策を打てていると言っているわけではない。トランプ大統領も、ジョンソン首相も、当初は経済への悪影響を懸念して、集団免疫の獲得によってウイルス封じ込めを目論み、見事に失敗したことを想起すべきだ。休業要請をする日本の知事にしても、財源に欠く東京都以外は国の財政に依存しなければならない。毅然とした態度は無責任さと紙一重になり得る。
 世界には、ハンガリーのオルバン首相や、イスラエルのネタニエフ首相のように、コロナ・パニックを奇貨として議会の機能までを一部停止し、それまでの強権をさらに強めようとしている指導者もいる。
ポピュリズム政治によって人々の不安感は払拭できるかもしれないが、それでもってワクチンが開発されたり、目前に迫る大不況が解決されたりするわけではない。言い換えれば、現在のポピュリズム政治を作り上げているのは、私たちの漠然とした不安感なのだ。
 有権者は合理的ではないかもしれないが、歴史をみると、危機時に輝いた指導者が有権者からお払い箱になる時もある。ナチスドイツとの闘いでイギリスを勝利に導いたチャーチル首相は1950年代に二度目の首相の座を降りることになったし、フランスを解放したドゴール将軍は1960年代に自身が提案した国民投票を否決されて引退した。
 平時に戻った時、有権者にどのように判断されるのか――政治指導者の真価はその時にこそ試されるべきなのだ。
(吉田 徹)【引用終わり】
私自身「コロナ対策に関しては不満ばかり」なので、安倍政権の支持率が下がるのは不思議と思いません。
ブログを紐解くと
1月初め、武漢で正体不明の肺炎が発生。「正月休みしている場合ではないと思います」けれど…。
2月初め、高温多湿と距離政策を進める。食堂などでテーブルを話した方がよい。
2月半ば、スイスロシェ社が検査キットを開発。発熱者を全員検査を…。また、お医者さんが発熱者の自宅診療を…。
そして、検査が万全ではないと知る。
3月、発熱ホテルをつくるべき「だるくなったら、すぐ籠る」
4月、発熱ホテルが無理でも「自宅とホテルの併用で、だるくなったらすぐ籠る」を達成して、仮に東京都でだるい人・発熱した人が50万人だったら「50万人が自宅・ホテルに籠って、残りの1350万人に自由になれるようにすべき」と主張しています。また、収入源のひとだけ30万円には賛成で、国民全員10万円には反対です。
だから、安倍政権の支持率が下がるのは不思議と思いません。けれど、不思議だったのは日本よりもひどい惨状の欧米各国で支持率が上がっていることでした。
私にはこれはさっぱりわかりませんでした。
なぜだ?
当初日本と違って、「クラスター検査もせずにのんびりしていた」から感染爆発を起こしてしまった訳です。そして、いざ感染爆発が起こったら、いきなり「国民に外出するな」と呼び掛けて、経済を破綻させているのです。
感染を止めるだけなら、外出禁止が「最も簡単」な政策です。はっきり言えば、誰でもできる政策です。政治指導者は警察官らに見回りを命令するだけで、国会も閉鎖ですから野党に感染爆発させた責任を追及される事もなく、テレビに出て決然とした指導者らしく演説していれば良いわけです。
それで欧米では支持率が上がるのですから、私は「世の中狂っている」と思っていたのです。
しかし吉田 徹氏によりますと、支持率が上がっているのは、突然にあらわれたコロナウィルスによって不安に駆られた市民が「政治よって安心感を得ようとしている」からだそうです。「旗下集合効果」で政権与党を支持するのだそうです。
 本文中の言葉を借りて言い換えれば、市民は複雑な現象の原因と結果を政策と結びつけて理解できるわけではなく、即ち『どうすればよいのか』自分ではさっぱりわからないから、政治指導者が決然と自信ありげに演説していると認知上のバイアス(好ましいと思うことに引き付けて解釈すること)によって、「我が国の首相は解っているに違いない。彼についていけば安心だ」などと思ってしまうので、支持率が上がるそうです。
 つまり、「どうすればいいかわからないので、とりあえず政権を信じることにする」らしいです。
追伸としてつけさせてい出したコラムの中にも「日本でも、2011年の東日本大震災後、菅直人内閣の支持率は一時的に上昇している」とあります。
私は東日本大震災の時には、ここが被災地だったのでニュースなどをみている暇がなくて政権支持率が上がっていたとは気が付きませんでした。ただ、開いたアパートも空き家も山のようにある千葉県のこの市に、仮設住宅を200軒も建てるバカさ加減に呆れていただけです。「東北にもっていけばいいのに」と本当に思っていました。
東北のように被災した方が沢山いる所では当然アパートと中古住宅ではたりませんので、仮設住宅を建てる必要があります。
しかし、被害状況が全く違うこの市では、別の対応もできて、はるかに短時間でしかも安い費用で人々に避難所をでて仮の宿を提供する事が出来たのです。それなのに「家が津波で攫われた人がいる→仮設住宅を建てる」という解決策しか思いつかない短絡思考で、数倍の費用をかけて人々に余分な期間の避難所生活を強いたのです。
本当に、アパートの家賃月5万円、中古住宅が500万ら円から1千万のこの市で、2年たったら壊すのに1軒5百万もする仮設住宅を建てる価値がどこにあるのか、私にはさっぱりわかりませんでした。
アパートの家賃だったら120万円で済んで、しかもすぐ入居できます。家族が多い人には中古住宅を国家が買ったり借りて入ってもらえば良いわけで、わざわざ仮設住宅を建てる必要性は、この市にはありませんでした。
私は「家が津波で攫われ→仮設住宅を建てる」と同じ短絡思考が「感染症が発生した→外出制限→失業しても命が助かればよい」だと思います。
たしかに中世のヨーロッパに発生した黒死病のような感染症であれば「失業しても命が助かればよい」です。実際黒死病の時には人口が半減したので、感染症が鎮まった後には猛烈な人手不足になりました。
しかし、私は今回の新型コロナウィルス感染症と黒死病は別物だと思います。東日本大震災の時の、私の住む街と東北3県のように違うと思います。
ですから東日本大震災後、菅直人内閣の支持率は一時的に上昇しても後に急落したように、今支持率が上がっている欧米諸国の支持率は経済が破綻した後で急落すると思います。
そこで日本の安倍政権ですが、2月から必死になってクラスターを探し続けた努力の成果もあり欧米各国よりは感染を広げなくて済みました。
けれど、今は世論に煽られて小池百合子東京都知事の路線に引きずられているように感じます。(収入源の人30万円が全員に10万円になったように…)
そこで私は、「直接国民に向けて、丁寧に何度も何度も説明するべきだ」と思います。2月~3月にかけて、テレビでは連日「検査・検査・検査」と、日本政府は検査をしないと騒いでいました。ですから国民は、検査をせずに感染者数をごまかしたいのかと誤解しました。検査を増やさない理由が解らなかったからです。
しかし中には真実をネットなどで発言する医師などもいて、「検査」とは何かが次第に知れ渡るようになりました。
つまり「検査」は感染直後にはウィルス量が少なくて、感染していても「陰性」にでる、しかも的中率が70%程度だということです。ですから重症化して肺炎治療をするときには必要になっても、検査官の感染の危険を加味すれば「検査に血道をあげるのは、愚かしい」という事が一部には知れ渡るようになりました。
この間2ケ月程度だと思います。
しかし、政府が最初から丁寧に直接国民に説明して「余分な検査は、却って害悪だ」と国民が理解していれば、国民は「国家に見捨てられている」と不安になる事はなかったのです。
つまり国民は「発熱しても、国は検査してくれない」事から、「発熱して不安だから検査して欲しいのに、国は陽性判定が出て感染者数が増えるのが嫌で検査してくれない」「陽性なら早く知りたい。そして薬が無くても治療して欲しい。それなのに検査してくれない」と誤解して、不安に駆られていたのです。
もともと安倍政権は「安倍政権を許さない」というマスコミ世論の中で、それでも真剣に政治を動かしていけば「解ってくれる人は、解ってくれる」というスタンスでした。
しかしコロナ問題に呈しては、何分にも新型ウイルスなので「解っている人はいない」ので、「解ってくれる人は、解ってくれる」という状態にはならないのです。
つまり、現在の安倍政権は、国民が不安に思っているのに「安心感を提供できていない」のです。
私は、短絡的に外出を禁止して経済破綻させる政権よりは、安倍政権ははるかにましだと思っています。今小池さんとか枝野さんとかが総理大臣だったら大変でした。ヒーロー気取りでロックダウンロックダウンでと連呼して、半年後には大恐慌だったでしょう。ですから「歴史的な転換となるような時の政権の政策が評価されない」傾向があるそうなので、もしかしたら安倍政権は数十年後には「ましだった」と評価されるかもしれません。おじい様の岸元首相の「安保改定」が後の世に評価されたように…。
しかし、私は経済再始動の時には「経済を破綻させるわけにはいかない」と、国民に丁寧に説明してマスコミ世論の集中砲火を浴びても説明して・説明して・説明して、毎日毎日記者会見を開いて説明しつくして頂きたいと思います。(10万円のようにおしきられるのではなく)
なぜならば、後の世だけでなく今の世にも評価され支持を集めた方が、より多くの力強い対策を繰り出すことができるからです。
私は、本当に心から安倍総理を応援しています。安倍政権のコロナ対策には不満爆発ですが、それでも小池百合子東京都知事に出しゃばられて、豊洲の二の舞になったら大変なので、「コロナ死の涙と失業者の涙との間で、揺れ動いてしまう」安倍総理はを応援しています。
このような時にはよく言われることですが、安倍総理には「一晩ゆっくりとお休みになって、落ち着いてじっくりと構えて頂きたい」と思います。
(追伸)

日本の安倍政権だけが「コロナ危機で支持率低下」という残念さ 4/17(金) 19:16配信

Almost 90% of New Zealanders back Ardern government on Covid-19 – poll​

危機の時、政府の支持率は上がるというのが政治学の常識だ。実際、コロナ危機で主要国の支持率はどこも上がっている。しかし例外がある。日本の安倍政権だけは支持率を下げているのだ。コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「そんな国はほかにない。あまりに残念だ」という――。
■コロナ禍の世界の中で「政権支持率」が異様に低い日本
新型コロナウイルスによる感染拡大に全く収束の兆しが見えない。安倍晋三首相率いる政府の対策は後手に回ってばかりだ。4月14日発表のNHK世論調査(*)では、内閣に対する支持率は前月より4ポイント下がって39%と、ここ数年で最も低い水準となった。
*4月10日から3日間、RDD方式で全国18歳以上の男女が対象。調査対象2085人のうち60%の1253人から回答を得た。支持率39%というのはそれほど低くはないように思われるかもしれないが、世界に目を向けると、異様な数字であることがわかる。次のリストをみてほしい(支持率出典は文末に掲載)。
【新型コロナ感染拡大後の直近の支持率(増減)】(支持率の高い順に)
●アンゲラ・メルケル首相(ドイツ):79%(11UP)
●メッテ・フレデリクセン首相(デンマーク):79%(40UP)
●マルク・ルッテ首相(オランダ):75%(30UP)
●ジュゼッペ・コンテ首相(イタリア):71%(27UP)
●スコット・モリソン首相(オーストラリア):59%(18UP)
●文在寅(ムン・ジェイン)大統領(韓国):56%(17UP)
●ボリス・ジョンソン首相(イギリス):55%(22UP)
●エマニュエル・マクロン大統領(フランス):51%(15UP)
●ドナルド・トランプ大統領(アメリカ):49%(5UP)
●安倍晋三首相(日本):39%(4DOWN)
●ジャイール・ボルソナル大統領(ブラジル):33%(2DOWN)
これは筆者が、欧米の主要国のリーダーに対する直近の支持率をまとめたものだ。右端の数字は新型コロナウイルスの感染拡大前との変化である。これをみると、どのリーダーも支持率を大きく上げているのがわかる。主要国で支持率が下がっているのは、わが国と、「どうせ誰かがいつかは死ぬ」「ちょっとした風邪」と一切の対策を拒否しているブラジルのジャイール・ボルソラノ大統領だけだ。
こちらの棒グラフはニュージーランドの調査会社(4月8日発表)がまとめたものだが、政府の新型コロナ対応に対して、支持すると答えた人の数はニュージーランドで84%と最も高かった。G7のどの国も50%以上が支持している一方で、日本ではわずか35%に過ぎない。お隣の韓国も、3月27日に世論調査会社「韓国ギャラップ」が同国政権の支持率は55%と発表し、1年4カ月ぶりに55%を回復したとしている(翌週に支持率56%に上昇)。
■死者数が桁違いに多いイタリアやイギリス、アメリカでも支持率上昇
こうして見ると、支持率が高いのは、コロナ感染拡大を止めた国ばかりではないことがわかる。死者数が桁違いに多いイタリアやイギリス、アメリカでも、リーダーへの支持率は上がっている。イギリスのボリス・ジョンソン首相は、当初、対応が大幅に遅れ、感染者を激増させてしまった。しかし、その結果、自らも感染。退院後に医療従事者への感謝の言葉を動画で発信し、国民から共感を集めた。
 こうした支持率上昇の背景には「ラリー・ザ・フラッグ効果」(Rally 'round the flag effect)がある。これは1970年に政治科学者のジョン・ミューラーが提唱した理論だ。アメリカの歴史において、深刻な危機のたびに政権の支持率が急上昇してきたことから、「国難においては、人々が国旗の下に集結するように、リーダーへの支持が高まる」という結論を導き出した。

例えば、湾岸戦争(1991年)の時にはブッシュ大統領(父)の支持率は59%→89%に、9.11(2001年)時のブッシュ大統領(息子)の支持率は50%→90%へと急騰した。日本でも、2011年の東日本大震災後、菅直人内閣の支持率は一時的に上昇している。

こうした現象は、(1)危機的状況において、国民は極度の不安に陥り→(2)リーダーや政権に自分たちを守ってくれる存在として役割を期待する→(3)愛国的感情が高まる→(4)団結や連帯のシンボルとしてのリーダーの存在感が高まる、といったプロセスをたどる。

たとえばトランプ大統領は、就任以来、「移民」「民主党」「中国」「世界保健機関(WHO)」と次々に仮想敵を作り、支持を集めてきた。「戦い」を演出する方法は、人心を弄する古典的な手法だ。古今東西の指導者たちは、人々の不安や怒り、恐怖を自分の求心力に結びつけてきた。

■安倍政権は「究極のKY」だから支持率低下する

実は「非常時」を強調し、支持を呼びかけるレトリックは安倍首相が得意としてきた論法でもある。北朝鮮のミサイル問題や少子化などを「国難」と呼び、野党を「国民と与党の共通の敵」と印象付けることで、自身のリーダーシップをアピールしてきた。

そして今、人類共通の敵に立ち向かうという、真の「国難」にあって、まさにその指導力が問われているが、どういうわけか急速に求心力を失っている。誠に残念なことである。狡猾な指導者であれば、この危機を支持率上昇の機会として存分に活用し、人心操作にも成功しているだろうが、現政権があえてそうしないのは、ただ単に「できない」からなのだろうか。

第3次世界大戦に匹敵するともいう危機的な状況で、国民は船長不在の航海を余儀なくされている。今回の危機の難しさは、敵であるウイルスは目に見えず、むしろ人々の恐怖や不安という感情との戦いとなっている点にある。

つまり、威嚇や脅しや経済制裁などの「力」が全く役に立たず、これまでのやり方は全く歯が立たないのだ。求められるのは、きめ細かでスピーディーな対策、そして人々の心に寄り添うコミュニケーション力である。

ところが、安倍首相はこれらがからっきし苦手だ。心に寄り添うコミュニケーションができない。英語では空気が読めないことをTone deaf(音痴)、Out of touch(音信不通)と表現するが、寄り添うどころか、逆に神経を逆なでする施策や言動に、国民はあきれ果てている。「なんでわかってくれないの」「これじゃない」。その悲鳴が連日、国中でこだましているように感じられる。

■本当の「国難」に置き去りにされる国民は哀れ

日本の政治家なんてしょせん、その程度のもの。国民は、政治などに期待せずに、自らの責任を果たせ。そんな声もある。しかし、平常時ならともかく、この本当の「国難」に、置き去りにされる国民は哀れだ。

だから、筆者は安倍首相にこれまで下記のような点を何度もお願いしてきた。

□ 揺るぎのない強さとやさしさを持って、正面から国民に向き合ってほしい。
□ 原稿など読まずに、前を向いて、自分の言葉で話してほしい。
□ 迅速に決断をし、徹底した情報開示をしてほしい。
□ 国民の不安、恐怖、怒り、心配に自分ごとのように心の底から共感し、寄り添う姿勢を見せてほしい。
□ 間違いがあれば、素直に認めて、謝ってほしい。
□ 責任は自分にあることを明確に示してほしい。
□ 国民のために身をていして、この困難を乗り越えるべく粉骨砕身、取り組む姿を見せてほしい。
□ 具体的な展望を示し、未来に希望の灯をともしてほしい。

■日本国民は危機を解決してくれる「ヒーロー」を求めている

世界のリーダーは上記のポイントをしっかり実行している。だから、彼らの言葉に多くの人が勇気づけられ、励まされ、涙を流す。そして「この人ならかじ取りを任せられる」と思えるのだ。だから支持率が上がる。

安倍首相やそのブレーンの中に、「メディアや国民が、こうした危機にわれわれをスケープゴートにして批判するのはおかしい」という気持ちが少しでもあるなら、日本はもうダメだ。

国民は、こんな時だからこそ、はせ参じるべき「御旗」や、危機を解決してくれる「ヒーロー」を必死に探している。その役目を果たせるかどうか。安倍首相は正念場を迎えている。

支持率出典:
Corona-Krise ist das wichtigstes Problem für Deutsche​
Sondaggio Demos: gradimento per Conte alle stelle​
VVD laat PVV en Forum verder achter zich in virtuele peiling: ‘Rutte is een echte crisismanager’
Coronavirus sees approval-rating soar for EU leaders
BAROMÈTRE DE CONFIANCE POLITIQUE LCI – EPOKA – MARS 2020
Coronavirus reaction pushes PM’s popularity into positive territory
Guardian Essential poll: coronavirus response boosts Scott Morrison’s approval rating
President Trump's Job Approval Rating Up to 49%
Bolsonaro's disapproval rating rises amid virus havoc
Poll: 88% of Kiwis trust Government's coronavirus response, vastly higher than other nations
文大統領の支持率56% 1年5か月ぶりの高水準
Almost 90% of New Zealanders back Ardern government on Covid-19 – poll​

(七重コメント)

私は別段ヒーローを求めていません。
コロナを完全に抑えたいから外出を制限すれば、企業は倒産して失業者が満ち溢れる。一国の指導者が「コロナで死んで欲しくない」。同時に「倒産も失業もして欲しくない」と願えば「どうすればいいのか」解らなくて、多少はウロウロするのも仕方がありません。
 でもそろそろ、思い悩んだ果ての決断をして、針路を決めて欲しいと思います。

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