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中東の明日を左右する「イランの総選挙」は 今月21日。●イランのロウハニ大統領、辞任の可能性否定 総選挙控え会見

 【AFP=時事】今月21日に総選挙を控えているイランで、同国のハッサン・ロウハニ大統領(71)は16日、記者会見を開き、辞任する可能性を否定した。大統領選出以降、2度にわたり辞任を申し出たことも認めながらも任期を全うすると言明した。
 ロウハニ師はまた有権者に対し、総選挙で多くの穏健派や改革派の候補者が不適格とされているにもかかわらず、投票に行くよう呼び掛けた。
 同国ではこのところ、最終任期となる2期目の終わりを来年に控えている同師が辞任を計画しているのではないかとの臆測が飛び交っている。
 ロウハニ師は会見で、経済情勢と「敵」からの圧力があると米国を引き合いに出しつつ、「私の辞任はあまり意味がない…われわれは国民に公約しており、これらの公約を果たし続ける」と言明。「(これらの最近の問題を理由とする)辞任など考えたこともない」と述べた。
それでもロウハニ師は過去2度にわたり辞任を申し出たが、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師により拒否されたことを認めた。【引用 おわり】
 イランの総選挙の結果は 中東情勢を左右する事になると思います。現在は 一応穏健派がイラン議会で優勢ですが、選挙の結果 革命防衛隊よりのシーア派国粋派が勝利する事になると、一気に中東情勢は緊迫すると思います。
 つまり 現在はイラン政府と議会は国際協調派が動かしていますので、米国との散発的な衝突があっても 戦争にはなりません。しかし シーア派国粋派が政治を動かすことになると、正直申しまして何が起こるかわかりません。
 巷の噂では 前回2016年の選挙でイラン国民が国際協調派を勝利させたのは 経済制裁に疲れて、「米国に 一歩引いても毎日の生活を改善させて欲しい」と希望したからのようです。 
ところが、米国はイラン核合意から離脱しました。ソレイマニ司令官も殺害されました。ですから イランでは「こちらが引いても、米国は引かない。だから、対決路線しかないのだ」という意見も増えていて、今回の選挙では シーア派国粋派の方が勝利するという観測もあります。
しかし 一方で 反政府デモの勢力もあります。
即ち 非常に混沌としていて 私のような素人には さっぱりわかりません。
「ただ どうなるのかな?」と興味をもって、イランの選挙の様子を記した記事を探したら ありましたので、ご紹介したいと思います。前回2016年の選挙の様子です。
感想を一言申しますと まさしく「カオス」です。しかし 、イラン人は 元々は自由な精神の人達だという事が よくわかりました。シーア派宗教政権が政治権力を握っていても、ソ連・北朝鮮のようにはなりえないのです。では ご一読いただきたいと存じます。
● 290議席に「1万2000人」イランの国会選挙、多すぎる候補者の理由 
2017年10月(朝日新聞国際報道部・神田大介 抜粋)
1議席あたり40倍を超える競争率

 イラン 2016年の国会議員選挙は、登録が締め切られた投票2カ月前の段階で1万2123人、1議席あたり41.8人が名乗りを上げました。投票前日には4844人に減るんですが、それでもまだ1議席あたり16.7人。
 定数は選挙区によって違うんですが、人口約850万人の首都テヘランは定数が30。最終的な候補者数が1111人だったので、37倍の競争率ということになります。
さて、こんなにたくさんの中から、人びとはどうやって意中の候補者を選ぶのでしょうか。
 選挙運動ができるのは投票前日までの1週間。ですが、さしたる盛り上がりは感じられませんでした。街頭演説も、選挙カーも、選挙公報も政見放送も見ませんでした。

集会はありました。自由を尊ぶ「水色」陣営の集会では、「黄色」が規制を求めるコンサートが行われる場面も
 1111人ともなると、政見放送も1人数秒ということになりそう。選挙公報だって雑誌1冊分にはなりそうです。実現は難しいでしょう。
数百台の選挙カーが鉢合わせて混乱する中心街なんて、ちょっと見てみたかった気もしますが、そもそもそういう仕組みがないようです。
仁義なきポスター合戦

バス停に貼られてしまった選挙ポスター。たまにはがされるが、すぐに新しいものが貼られてしまう
  日本で選挙の風景と言えば、候補者の顔を印刷したポスターが貼られた掲示板。届け出順に決められたスペースを使います。候補の数が多いと、板が横長に大きくなりますね。

 実はイランでも、ポスターを貼るための掲示板が道路沿いなどに用意されます。なにせ候補者が1千人超。どれほど巨大になるかと思いきや、日本とそう変わりません。
なんと、誰がどこに何枚貼ってもいいんだそうです。となれば早い者勝ち!ではなく、既に貼ってあるポスターの上から重ねて貼るのが当然のようになっていました。選挙戦終盤にはもう、何が何やら。大きさも大小まちまち。お金や手間がかかることもあり、ポスターをまったく用意しない候補も多いようです。 
 また、掲示板以外への貼り出しは禁止されているはずなんですが、バス停、電柱、はては路側帯の植え込みにまでべたべたとポスターが貼りまくられ、きわめてカオスな雰囲気に。ただし、ポスターに政策などは書かれていません。
 こんな状況で、どうやって候補者を絞り込むんだろうか。1週間は短く、あっという間に投票日になってしまいました。
 投票所には学校やモスクが使われます。大きな白い紙に印刷された1111人の名前がずらりと並び、まるで受験の合格者発表のような雰囲気です。
投票用紙を隠さない

隠す様子もなく、投票用紙に書き込む=2012年2月26日
 まず驚いたのは、投票する人たちに隠す様子がまったくないこと。仕切りもない平らなテーブルの上で投票用紙に記入しています。まわりの人と談笑しながら書く人も。ついたて付きの机も用意されていましたが、あまり使われていませんでした。見ると、多くの人が手持ちのビラから候補者名を書き写しています。
 投票は各選挙区の定数まで、全員分の氏名と登録番号を手書きしなければなりません。テヘランの場合は30人分。選ぶのも、名前を覚えるのも、そして用紙に書くこと自体が、かなりの手間です。

 そこで、政治的に同じ考えを持つグループが、それぞれ推薦する30人の名前を列挙したビラを配っています。スマートフォンの画面で確認する人もいました。

左が「水色」陣営のビラ、右が「黄色」陣営のビラ
 ビラは何種類かあるんですが、ほとんどの人が水色か黄色のビラを使っていました。
 イランにも政党はあります。内務省に登録しているだけで280党もあるそうですが、あまり存在感がありません。考えの近い小さなグループが寄り集まり、「2大政治潮流」をつくっています。
 それぞれのシンボルカラーは、「イスラムの教えや昔ながらの慣習に基づき、秩序ある社会を守ろう。イランの国益を再優先にし、考え方のあわない外国とは付き合いをやめよう」という人たちが黄色。「なるべく自由な社会にしよう。外国とも親しく付き合おう」という人たちが水色です。

 ビラの色を見れば、遠目にもどちらに投票しているのかは簡単に見分けられます。だから隠す様子がないんでしょうか。
 3カ所の投票所をまわり、計20人に聞いたところ、19人が「投票した中に名前も顔も知らない人がいる」と答えました。
 イランには、知名度のある政治家はほんの一握りしかいません。また、再選率もあまり高くないと言われています。どうやら人物に投票するというより、進むべき社会の方向性を決める世論調査のような側面が強いようです。

 なお、この選挙は「水色」の圧勝に終わりました。テヘラン選挙区の当選者30人は、「水色」のビラにかかれた30人と一致しています。あまり候補者の数が多すぎても、かえって投票を集める候補者は限られてしまうのかもしれません。

供託金なし、自由あり

 それにしても、なぜこんなにたくさんの人が立候補するんでしょうか。イランの政治制度に詳しい、中東研究センターの坂梨祥研究主幹に聞きました。
「ひとつには、選挙を管理する内務省に行って名前を登録することは誰にでもでき、供託金がないからでしょう」
 日本では、衆議院と参議院の選挙区や知事に立候補する場合は300万円、比例区なら600万円を預け、一定の票を得なければ没収されます。
 イランにはこうした制度がありません。実は、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアも選挙供託の制度はなし。イギリスやカナダにはありますが、10万円もしないそうです。
 日本の供託金が高いのは売名行為を防ぐためだとされていますが、イランのように人数が多いと効果は薄そうです。
 「それと、自由ということが大きいのでは。イランではさまざまな制約があり、特に公的な空間では、人びとが完全に自由にできることはなかなかありません」と坂梨さん。
 イランでは自由なデモや集会は事実上禁止されています。地上波のテレビ局はすべて国営で、国の方針に沿わない報道をした新聞や雑誌はすぐにとりつぶし。
 音楽やダンスなども、一部の例外を除き、人前ですることは制限されています。
 そんなイラン国民にとって、誰でも参加でき、自分を表現できるというのは貴重な機会で、魅力的に映るようです。
立候補できるのは審査に合格した人だけ

ただ、全員が立候補できるわけではありません。
国(の一機関)が事前審査をします。基準は、イラン国籍がある、30歳以上75歳以下、選挙区で悪い評判がない、イスラム法学者の統治に忠誠を誓うこと、など。
 審査は密室で行われ、失格の通知にも理由は一切説明されないため、国に都合の悪い候補者が落とされているのではないか、という批判が絶えません。
 この選挙では、届け出の締め切りから3週間後、約7300人が失格になったと報じられました。全体の6割です。
 これに対し、「水色」系の候補者ばかりが失格になったと大きな批判が巻き起こりました。審査をしている機関は、「黄色」陣営に考えが近いことが知られています。
 すったもんだのあげく、約3週間の再審査を経て、追加で1500人が合格することが決まりました。
 「イランでは、法的に認められている権利でも、その行使に制約が課される場合があります。だからこそ、そのような制約のない立候補、または投票する権利を『行使したい』と考える人が多いのかもしれません」と坂梨さんは指摘します。
 イランは大統領制の国ですが、三権の分立がきちんと機能し、大統領はあくまで行政府の長。国会は立法府として確固たる権限を持っています。政権の方針や政局に影響を与えることも多く、むしろ日本よりも国会の権威は高いくらいです。
 この選挙の投票率は62%でした。
 投票所から出てくる人たちが、どこか晴れ晴れとした、満足げな表情を浮かべていたことが印象に残っています。
以上 2017年10月(朝日新聞国際報道部・神田大介 より 抜粋)

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