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古本屋で考えるあれこれ

仕事帰り、ふらりとブックオフに寄る。


休日はコロナの影響で、外出は出来ないし何冊か本を買っておこうと思う。


昔から図書館で借りる事も多くあったが、本棚に本が並んでいる状態が好きでつい衝動的に買ってしまう癖がある。


そのせいもあって、自分の部屋の小さな本棚には入りきらず、父の部屋に置かせてもらっている。


いつか壁一面、本で囲まれた自分の書斎を持つのが夢だ。

余談だが、石田ゆり子さんの「Lily」というエッセイ本の中で、ご自宅の書斎を紹介されているページがあった。

私はその書斎にとても心を打たれた。こんなに素敵な空間に住めたらどんなに幸せだろう...と何度も思った。

私も本に囲まれた部屋で読書をする日を夢見て、日々頑張らねばと自分を震い立たせる。

本屋に足を運ぶと、気持ちが高ぶる一方でホッとしている自分もいる。


幼い頃から本屋は私にとって特別な場所だった。

母が定期的に好きな本を1冊、買い与えてくれたのだが、その1冊を選ぶために何時間も同じ空間をぐるぐると歩き回り、悩んだものだ。

沢山の知性や思考が詰まった、慣れ親しんだこの場所に私はいつ足を運んでも魅了される。


「何の本を読もう」


陳列された本たちを眺めていると、ふとある一冊に目が留まる。


それは益田ミリさんの「今日の人生」という、私が最も好きな本だった。

ブックオフでこの本を見つけた事に私は率直に、何とも言えない気持ちになった。


「どうしてこの本を手放そうと思ったんだろう...」


ブックオフに売っているという事は、以前の持ち主にとって必要ではなくなったからだと思う。


私にとってお気に入りの一冊は誰かにとっては、そうでもない事が少し虚しくもあった。


でも考えてみれば当然の事だ。

自分にとって大切な物が、他の人にとっては大切だとは限らない。

その逆も然りで、自分にとって大切ではないものが、他の人にとっては大切だったりもする。


「だからこそ世の中ってうまく回るのだろうな...」としみじみと思う。


そう考えているうちに私は猛烈に知りたくなった。以前の持ち主にとって大切な一冊を。


この人が何があっても手放したくない一冊はどんな本だろう。


例え手放したとしても、一度でも私が好きな本を手に取っている人だから、私と趣味嗜好が似ている人なのかもしれない。


そして、その人は手放したといえども処分したわけではない。


またこの本に巡り合うべき誰かの元に渡る事を望んでいたのではないかと考える。

本の向こう側の人に私は勝手に親近感を覚える。

「大変な世の中だけど、その人が健康で読書の時間を楽しんでいますように...」


仕事で気持ちがささぐれていたが、素直にそう思える心が自分にまだあって良かったと思うのだった。笑

結局、田辺聖子さんの「孤独な夜のココア」とよしもとばななさんの「人生の旅をゆく」を手に取る。

私はタイトルで本を選ぶ事が多い。だからほとんど直観なのだ。

私の感性は、生まれ持った物ももちろんあるけれど、私のこれまでの経験、出会いから構成されていると思っている。


だからこそ、沢山ある本の中からこの2冊に出会えた事に不思議な縁を感じる。

この本を通して、自分は何を感じるのだろうとワクワクする。


だから読書は辞められない。


今日手に取った本たちが私にとって大切な一冊になりますように、そう願いながらレジに向かうのだった。

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