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チズ先生の花

「女性なら、部屋に花を飾りなさい。生花よ。生きた花を飾るのよ。」

私にそう教えてくださったのは、佐伯チズ先生だ。


チズ先生のあまりにも早すぎる旅立ちに、私はまだ心が整理できていない。


佐伯チズ先生には、本当に沢山のことを教えて頂いた。美容のことだけでなく、生き方、作法、女性らしさ、心の在り方など、今の私に大きく影響していることが山のようにある。


その中の一つが、「花を飾ること」だ。
チズ先生は、カサブランカが大好きだった。
大きくて真っ白な、気高く美しいカサブランカ。チズ先生は、ご自宅にもサロンにも、いつもカサブランカを飾っていらした。


「女性ならね、部屋に花を飾りなさい。生花よ。生きた花を飾るのよ。」


チズ先生にそう言われて、私も部屋に花を飾ることにした。

もともと花は好きな方だ。
花束を頂くと、心がウキウキする。頂いた花束を部屋に飾り、それが目に入るたびに心が和む。
しかし自分で花を買って部屋に飾ったことは、ほとんどなかった。そんな私が、チズ先生に言われて花を買いに行くことにしたのは、もう10年以上も前の話だ。

「どのお花にしようかな~。」

花を選ぶようになって気づいたことだが、私はゴージャスな花をたくさん飾るよりも、小さな花を一輪だけ飾る方が好きだ。


その時の気分によって、ガーベラやチューリップ、カーネーションなど、一輪だけ買って家に帰る。梅雨にはアジサイ、夏にはヒマワリなど、季節の花も楽しんだ。
花束用の大きな花瓶は家にあったが、一輪挿しは無かったので、100円ショップで買った。


狭い一人暮らしの部屋に飾られた、一輪の花。
しかしその花があるだけで、部屋全体が明るくなることに驚いた。そして花が目に入るだけで心が癒され、優しい気持ちになった。

部屋に花を飾ることが日常になってきた。
気が付けば、私の心にも変化が生まれていた。

「今日は、どんなお花にしようかな~。」

気分に合わせて選んだ花は、その時の自分にとって、
必要な色だったり、
必要な形だったり、
必要な香りだったりしているのだろう。
部屋に飾られたその花を見ると、心が明るく晴れやかになった。

最初はテーブルの上だけ飾っていた花だったが、少しずつ増えていった。
電子ピアノの上や廊下など、狭い家ながらも、数か所に花を飾るようになった。


花を飾ることが日常になってくると、今度は花瓶にも凝り始めた。
花一輪を飾れるような、小さくて可愛い花瓶を見つけては購入。民芸品屋さんや100円ショップ、雑貨屋さんなど、花瓶を探すこと自体が楽しみになった。


「この花には、あの花瓶が合うな。」
「あの花瓶に合わせて、今度はこの花にしよう。」


買ってきた花と花瓶がバッチリ合うと、一人で自慢した。そして、その見事なコーディネートに心がウキウキした。


しかし、、、。何かが足りない気がする。

そうだ!
ドイリー(花瓶敷き)だ!


今度は、ドイリーを探し始めた。
レースのものや、ステンドグラスのようなもの、タイルなど、花瓶に合いそうなものをチョイスし、花瓶に敷いた。これでカンペキだ!


一輪の花を飾ったことがきっかけで、私の楽しみがどんどん広がった。


花を選ぶワクワク感、
花瓶を選び、花を挿す楽しさ。
飾った花を目で楽しんだり、香りを楽しむ、豊かな心の動き。


チズ先生が、

「生花よ。生きた花を飾るのよ。」

と言ってた意味が、今の私にはよくわかる。

生花は、いつか枯れる。
だから1日でも元気に咲き続けてくれるように、
毎日水を変えてやり、
枯れ始めた葉を摘んでやり、
愛情を込めて世話をする。


そして健気に咲き続ける花に元気をもらい、
飾られた花を見て、心が癒される。
花を飾ることによって、以前より心が豊かになったような気がした。


今、私は娘と一緒に、
楽しみながら花を飾っている。

娘も、花が大好きだ。
保育園帰りに、娘が1本、花を選ぶ。
その花を一緒に買って帰り、花瓶を選び、飾るのだ。
時々、娘が摘んできた花を飾ることもあるが、それはまた、格別に心が温まる。



「女性なら、部屋に花を飾りなさい。生きた花を飾るのよ。」


チズ先生に教えて頂いた、はじめの一歩。
その一歩は、大きな幸せの花となって、私の中に咲き続けている。

私も、世の中の女性たちに伝えていきたいなぁと思った。

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