六車 奈々

渾身のエッセイ、始めました。

六車 奈々

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  • 六車奈々、会心の一撃!

    タレント・女優の六車奈々によるエッセイ集。子育てをしながら働く、ハプニングと全力投球な日常をエッセイでお伝えします。

最近の記事

星に願いを 〜娘が生まれる前の話〜

ふたご座流星群を見に、稲村ヶ崎へ。 娘せりは、いつもなら寝ている時間に、はりきって家を出た。 今から7年前、私は夫と二人で、ふたご座流星群を見に行った。 あんなに沢山の流れ星を見たのは、人生で初めてだった。 そのとき流れ星にお願いしたことは、 「赤ちゃんが早く戻ってきてくれますように。」 この話は、初めて話すことになる。 私は、赤ちゃんを授かった喜びも束の間、お腹の中で天国へ逝ってしまうという辛く悲しい経験をした。毎日私が悲しんでいる姿を見て、夫はこんな言葉をかけてくれ

    • チズ先生の花

      「女性なら、部屋に花を飾りなさい。生花よ。生きた花を飾るのよ。」 私にそう教えてくださったのは、佐伯チズ先生だ。 チズ先生のあまりにも早すぎる旅立ちに、私はまだ心が整理できていない。 佐伯チズ先生には、本当に沢山のことを教えて頂いた。美容のことだけでなく、生き方、作法、女性らしさ、心の在り方など、今の私に大きく影響していることが山のようにある。 その中の一つが、「花を飾ること」だ。 チズ先生は、カサブランカが大好きだった。 大きくて真っ白な、気高く美しいカサブランカ。

      • カッパ伝説

        主人の誕生日に、家族で食事に出かけた。 少しお洒落な和食店だ。 私たち三人はテーブル席に案内され、主人と四歳の娘はゆったりした奥のソファへ。私はテーブルを挟んだ向かいに腰かけた。 壁側に座っている娘からは、店内全体が見渡せる。 少し照明を落とした店内は、4人がけテーブル席が3つ、カウンター席が6つほどのこじんまりとした空間だ。しかしゆとりを持って配置されているので居心地が良く、リラックスできる。いつも行くような、ガチャガチャとしたファミレスとは全く違う雰囲気に、娘も嬉しそう

        • 本当にあった、不思議な話

          私が子供の頃、母から聞いた不思議な話は、 母が子供の頃、父から聞いた不思議な話だ。 母の父、つまり私にとっておじいちゃんは、名前を『寿政(ひさまさ)』という。 寿政は九人兄弟の五番目、ちょうど真ん中に生まれた。子供の頃に住んでいた家はお屋敷とも言えるほど広いもので、大きな庭には藤棚があった。 その日、寿政は兄たちと三人で、藤棚の下で駆け回って遊んでいた。すると突然、どこからともなく白蛇が姿を見せた。 「うわぁ〜!白蛇だ!」 「捕まえろ!」 男の子たちは、近くにあった『

        星に願いを 〜娘が生まれる前の話〜

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        • 六車奈々、会心の一撃!
          111本

        記事

          働くお母さん

          「お待たせ致しました」 真っ先に注文したスパークリングが運ばれてきた。『こぼれスパークリング』と書かれていたそれは、日本酒でいう『もっきり』さながら、升の中にシャンパングラスが立っている。 今日は、一人きりの外食だ。 娘が生まれてからの4年間、思い返しても一人でゆっくり夕食を満喫した記憶など一度もない。 私は思わず笑みが溢れた。 「それでは失礼します」 店員さんが、グラスにスパークリングを注ぎはじめる。 「ゆっくりね、ゆっくりね!」 スパークリングが泡立ち過ぎないよう心の

          働くお母さん

          武士の心得

          今、戦うべきか、否か。 実は、この選択。 自分が思っている以上に、重要である。 世の中には、理不尽が多い。 どの仕事をしていても同じだと思うが、あまりの理不尽に刀を抜きたくなる瞬間もあるだろう。 しかしだ。 世の中は、自分中心に周っているわけではない。自分が怒れる度に正義の刀を振りかざしていては、側からみると安売りになってしまう。つまり周りの評価は、『いつも怒っている人』ということなってしまうのだ。 感情に任せて刀を抜くと、目の前の『怒り』という感情はスッキリするかも

          武士の心得

          鬼退治

          まもなく15時40分だ。 私は心が落ち着かず、息が苦しくなった。 今日は、節分。 あと数分で、鬼たちが保育園を強襲する。 娘は大泣きするだろう。 怖い思いをするだろう。 そう思うと、胸が苦しくなった。 節分の数週間前から、保育園では準備が始まった。 『節分の日、もしかしたら保育園に本物の鬼が来るかもしれない』 そんな噂を聞いた3歳児クラスの子供たちは、怖くてドキドキした。 森へ柊を探しに行き、鰯と一緒に窓や玄関に飾る。もちろん皆で、豆も買いに行った。 「豆をぶつけて

          表裏一体

          「うちの奥さんは、本当に大雑把で困る。」 私の友人男性、仮に名前をリョウにしよう、はいつものように愚痴をこぼした。 「部屋は汚いし、洗面台はいつも毛詰まり。仏壇のお供えにはカビが生えているし、冷蔵庫の中はタッパーにいつのかわからないおかずが入ってる。これで専業主婦だよ。どう思う?」 うん。話を聞くと、確かに大雑把な奥さんである。 私も掃除好きではないが、汚い方がもっとイヤだ。だから部屋はいつも片付いている状態にしたいし、綺麗にしたい。 しかしリョウの奥さんは、逆なのだ

          表裏一体

          スパゲッティとエロス

          モデルの仕事をしていた20代前半。 かなりの数をさせて頂いたのが、カラオケの仕事だ。 当時はカラオケが大ブーム。各メーカーがこぞって歌詞の後ろで流れる映像を撮った。 夏の暑い日、線路の上をひたすら走らされた撮影もあった。 そう、爆風スランプ『ランナー』だ。後に自分がアミューズに入り、サンプラザ中野さんとお仕事をさせて頂いたときには、このネタが大いに役立った。 「実は私、『ランナー』のカラオケに出てました。ひたすら線路の上を走らされて、ムカつきました(笑)」 この話にサンプラ

          スパゲッティとエロス

          イヤよイヤよも好きのうち?

          20代の頃、関西の旅番組にレギュラー出演していた。女性の一人旅という設定なので、いつもは自分一人での出演だ。 しかし今回は、夏休み企画。同じモデル事務所の仲良し、仮に名前をセイコにしよう、と一緒に出演できることになった。 「やったー!一緒に出られるなんて、めちゃ嬉しいなぁ!」 私たちは、大喜びをした。 ただし、ここには条件があった。 大自然の中でパラグライダーを楽しむシーンを入れたいので、二人にはパラグライダーをやってほしい。一人はインストラクターと飛ぶ映像を、もう一人は

          イヤよイヤよも好きのうち?

          罪と罰

          午後の授業が始まるチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。小学三年生のクラス、担任は『ずるいオトナ https://note.com/nana_rokusha/n/ne99ca9872121 』で記した、唐揚げ先生だ。唐揚げ先生とは、今年赴任してきたばかりの若い女性の先生。ショートカットで目は鋭く、男性のような口調。とにかく気の強い怖い先生である。 「この雑巾、誰や?片づけに来い。」 開口一番、先生は言った。見ると黒板の右下に、無造作に雑巾が置かれていた。明らかに誰かが置き

          二者択一の模範回答

          グリーンチャンネル『M'S TV』の現場に娘を連れて行くことになった。主人が高熱を出したため、保育園のお迎えに行けないからだ。 お気に入りのワンピースを着た娘の手を引き、控え室に入る。 「今日は、よろしくお願いします!」 と照れながらも皆さんにご挨拶し、お絵描きをしながら矢部みほちゃんが来るのを待っていた。 毎週木曜日に放送の『M'S TV』は、せりも一緒にオンエアを見る。今までテレビの中でしか見られなかったみほちゃんに、今日は初めて会えるのだ! みほちゃんのために、お

          二者択一の模範回答

          みにくいアヒルの子

          私には何もない。 いつもそう思ってきた。 いや、無いわけではないのだ。 たとえばモデルの仕事は、15年ほどさせて頂いた。服を着てポーズを取るのも、顔の表情をあれこれ変えるのも朝メシ前だ。 ラジオだって15年以上になる。アシスタントはもちろん、メインパーソナリティとしても一人喋りもさせて頂いたし、テレビ番組だって、司会からゲスト、リポーターまで幅広くさせて頂いている。 しかし、そういうことではない。 私には何もないのだ。 たとえば関西テレビ『サタうま!』にレギュラー出演し

          みにくいアヒルの子

          失言

          その日は、MBSラジオ『それゆけ!メッセンジャー』の生放送終わりで、メッセンジャーの黒田さんとランチに行くことになっていた。 黒田さんとレストランに到着すると、すでに黒田さんのご友人、仕事関係の方などが来られていて、5〜6人での食事会だった。 黒田さんと食事に行くのは、どれくらいぶりだろう。私が上京して以来メッキリ減ってしまったが、大阪に住んでいた時は、しょっちゅう飲みに連れてもらったり、黒田家での鍋パーティーに呼んでもらったり、色々とお誘いを頂いたものだ。 当時、黒田さ

          続・1000万馬券を的中させる方法

          馬券が絶好調だ。 まず、三連複14万6920円をゲットした。総額700円というセコイ馬券で15万馬券ゲットしたのだから、かなり自慢である。 そこから毎週馬券が当たり、このまま一生当たり続けるのではないか?と思っていたところ、ついに先日の予想で外してしまった。 まぁ、奇跡は長く続くものではない。 とはいえ、この日は12月1日。自分の誕生日の前日だっただけに、お誕生日馬券を取りたかったなぁ。残念! こうして日曜日が終わり、翌日私は46歳の誕生日を迎えた。朝、たまたま用事があって

          続・1000万馬券を的中させる方法

          祝!100本達成

          やったー! エッセイ『六車奈々、会心の一撃!』が、ついに100本を達成しました! まずは、これまでのエッセイを読み続けて下さった皆々様、本当にありがとうございます。ファンの方や友人知人から、「会心の一撃、おもしろいわぁ」と言っていただけることが、どれほど励みになったことか。 振り返れば、スタートしたのが2018年1月。 『毎週、必ず一本書く!』と決めて、書き続けてきたエッセイ。 いやぁ、つらかった〜(笑) 一週や二週なら、誰でも書ける。 しかしこれを継続することは大変

          祝!100本達成