見出し画像

2020年読了メモ(随時更新)

1.アラン・ムーア『ウォッチメン』

2019年に『フロム・ヘル』を表紙と雰囲気に惹かれて思い切って購入し(5000円!)、時間をかけて読みはまり、同じくアラン・ムーア『BATMAN killing joke』と『V for the vendetta』とこの『ウォッチメン』をまとめて購入。2冊は年末に読み終わり、ウォッチメンを年を跨いで読了。とにかく編み込み?みたいな緻密で複雑なストーリーテリングがすごい!アメコミヒーローとこの世界をリアルな形で結びつける。フロム・ヘルもそうだったけど再読したくなる。2020年1冊目が素晴らしく良い本だったのでこんな風にメモをつけていくことを思いつく。
(2020年1月2日)

2.ウチヤマユージ『夏の十字架』

Twitterで試し読み?を見かけて気になってた漫画。数ヶ月後、同じくTwitterで電子書籍が出たことを知ってだったかな、購入。短編集。後半は掌編っぽい短めの漫画。やっぱり表題作が好きだな。闇社会みたいなとこの周辺の話。スイスイ読める適度に空白のあるポップな絵と、内容の重さの組み合わせが良い感じ。この作家の長いやつ読んでみたいなあ。
(2020年1月3日)


3.宵町めめ『宇宙よりも遠い場所』

通称よりもい。アニメからのコミカライズなのかな。原作は観てないんだけど漫画家の宵町めめさんを追っていたので購入。書店で、紙本で、揃える、という縛りを自分に課していたのでコンプが遅くなってしまったもののようやく読了。3冊で完結ということもあっておそらくカットされたであろうシーンも感じられるけどアニメ版未鑑賞でもちゃんと読める。ストーリーもそうだけどそれぞれのキャラクターのエピソードが良く、挑戦する者の話となっている。4人のキャラクターに、明るく朗らかで満たされている者はいない。それがこのストーリーを際立たせているのがとても良かった。
(2020年1月4日)

4.有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。シリーズ(3冊)

有名すぎる、定番すぎる、必修すぎる、の3冊をまとめて読んだ。以前。谷中の古書店にて買った本で、3冊分のボリュームを前にしてずっと積んでいたものをようやく読めたので満足。タイトル通りの本で、絵は水木しげるライク。近代文学ほぼすっ飛ばしマンの自分にはありがたい本だったけど、漫画との相性がいい作品とそうでないものがあったかも。個人的に思ったのは、やっぱり乱歩好きだなあと。あとはカタログ的に読んでここから興味を持った作品の小説版を読みに行くのが良さそう。いまさらだけどマザーグース読みたくなった。
(2020年1月5日)

5.小川洋子『物語の役割』

小説が、物語が生まれるまでの曖昧でやわらかい状態のそれを描いた本だった。小川洋子さんの優しく語りかけるような言葉も魅力的(講演会の内容を本にしたということなのでそれはそうなのだけど)。そしてタイトル通り、人にとっての物語とは、ということについて考えさせられる。時間を置いて再読したらまた楽しめそう。
(2020年1月8日)

6.平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』

Twitterをぼんやり眺めてたらどんぶらこどんぶらことTLに流れていた漫画。Kindle版を購入。女友達の遺骨を片手に旅(?)する感じのエモ漫画。もうひとつ外国を舞台にした漫画も併録されていてそちらも面白いけど、やっぱり表題作かなあ。友情と呪い。女友達のお父さんと現妻のその後も読みたかったけどそこは脳内補完。衝動的に買ったけどいい漫画でした。
(2020年1月8日)

7.関川夏央(原作)、谷口ジロー(漫画)『『坊ちゃん』の時代』

以前に高橋源一郎が何かの本のなかで絶賛しているのを覚えており気になっていた本。たまたまどこかの古書店で見つけ購入して積んでいた。まず、僕は夏目漱石の『坊ちゃん』を呼んだことはあるが覚えていない。おそらく、というか間違いなく、読んだ当時まったく興味を抱かなかった。その坊ちゃんのできるまでを描いているのだけど、どこまでが現実でどこまでが虚構かはわからない不思議な造りになっている。ただ、その時代の空気だけはとてもよく伝わってくる。小説版の坊ちゃんも読み直そうかと思ったけど、何年後になるかなあ。
(2020年1月9日)

8.山田しいた『乙女文藝ハッカソン』

Noveljamでその存在を知った山田しいたさん。今回は小説でなく漫画。山の中にある文芸部が盛んな大学に入学した主人公が、Noveljamを下敷きにしたと思われるチーム制の文芸バトルで戦っていくお話。独特の絵柄。あと要所要所にはさまれる台詞とか小ネタがいちいち面白いのが好き。なにより、小説書きあるあるみたいなのがてんこ盛りで、小説書く人なら間違いなく楽しいと思う。全3巻だからすぐに追いつくよ!みんな読んで!
(2020年1月10日)

9.磯部涼『ルポ川崎』

いやー、これは面白かった。まえに読んだラッパーの自伝、D.O『悪党の詩』の流れで読もうと思っていたんだけど少し間が空いて今日読み終わった。川崎という、日本でもかなり特殊な土地についてのルポをラップグループのBADHOPを中心に据えながら様々な人たちに焦点をあてて書いている本。あとがきにもあるように出だしがBADHOPから始まっただけあって音楽やダンス、不良というキーワードが頻出する。人間の性格や人生は環境によって決まる部分が大きい。では自分は、という風に、川崎ってヤベーってことの先に、人間のことを考えることになる本。
(2020年1月13日)

10.岡崎京子『リバーズ・エッジ』

いまさら僕が何か言うまでもない、すでにクラシックみたいな作品。何度読んだかわからないけど上のルポ川崎からの流れで再購入&再読。2020年に読んでももちろん色褪せない面白さ。ヘルタースケルターとかこれとか、そういうの書きたくなるよね。日本のラジオっていう劇団の脚本家、屋代秀樹さんと話す機会があってそのなかで暴力とロマンの関係についての話を聞いたときにこの作品のことを思い出したのも読んだきっかけ(日本のラジオの演劇はめっちゃくちゃ面白いよ。乾いた暴力って感じ)。岡崎京子さんの問答無用の名作なのでもしまだ読んでない人がいたらマストバイ。
(2020年1月17日)

11. 鴇沢哲雄『日本で生きるクルド人』

川口市にあるAntenna Books & Cafeココシバさんで購入した本。単純な興味から購入し読んだ本なんだけど、彼らの現状が赤裸々に書かれた内容に軽い気持ちで手にした自分を恥じてしまう。自分の中にもクルド人に限らず外国の人を、もっと言えば自分と環境の違う(日本人含む)人間を偏見の目で見てしまっていることがいかに多いかを突きつけられる。とりあえず、トルコ語のメルハバ(こんにちは)を覚えておこう。読んでよかった。ココシバさんは店内で色んなイベントを積極的に行なっているので行ってみたいな。
(2020年1月19日)

12.阿部共実『月曜日の友達』

いやあ、まいった、めちゃくちゃいい。なんとなく、えぐる、怖い作家、というイメージがあって、怖いもの読みたくないなあ、という気持ちが手に取るのを邪魔してたんだけど、やっぱり気になるものは読まなきゃ、と、読んだ。ぎゃあ!学生時代、教室のなかで、自分はまわりと違う、特別な意味でもそうでない意味でも、そんな風に考えていた(いる)人たちにずぎゃんと刺さるほんでしたわ。紙で買いなおそうかな。
(2020年1月21日)

13.カネコアツシ『デスコ』

Death+Disco=デスコ!
「ばあっ!デ〜〜ス〜〜コ〜〜」と相手を驚かせる悪趣味でポップでキュートな殺し屋デスコの話。最初はストーリーなんてなく、ただただ謎の組織ギルドとそこに所属する殺し屋(=死神《リーパー》)たちのエピソードが、アメコミ風の独特の絵によって積み重ねられていくんだけど、巻が進むにつれキャラクターが掘り下げられていくのがめちゃ好き。白く野の表紙もめちゃクール!
(2020年1月21日)

14.池辺葵『プリンセスメゾン』

またえらい名作を読んでしまった…年収200万円ちょっとの主人公が家を購入する話、というキャッチなんだけど本質はそこではなく、人間がひとりで快適に、幸せに生きることについて描かれた漫画。他人の評価を気にするのではなく、自分の幸せを自分に問いかける。現代にあまりにマッチした漫画で、何度も「そうそう!」と頷きながら読んだ。価値観の変わり目を鮮やかに、静かに描いた名作。
(2020年2月1日)

15.村上春樹『村上らぢお』

エッセイを書いてみようと思い、さてエッセイってどんな文章だったけと思って読んだ本。小説の村上春樹よりもずいぶんとゆるい文章なんだけど、たまに出てくる比喩とか微妙な視点とかがやっぱり村上春樹だなあってなった。エッセイってこれまで大槻ケンヂとさくらももこと、原田宗典と土屋賢二くらいしか読んだことなかった気がするけど、なんか独特だよね。普段の出来事の、ちょっとした違う見方みたいな?(ちなみに僕が書いたやつはエッセイと私小説の間みたいなものになった)あと上のタイトル、ラヂオの表記が平仮名になってるけどほんとは片仮名で、でも直そうとするとリンク先に飛んじゃうから諦めました。ごめんなさい。お、これなんか。エッセイっぽい文章だな。(2020年2月7日)

16.円山夢久『「物語」の作り方入門 7つのレッスン』

4月から、半年くらいかけて長い小説を書こうと思ってるんだけど、その準備として本を読んだりしながらアイデアを貯めている。で、そろそろ揃ってきたから今度は物語の枠をぼんやりと考えていこうかと思ってこの本を手に取った。3幕構成をベースに、はじめて小説を書く人向けくらいの感じの優しい本で、作者に寄り添いながら一緒に考えてくれるみたいな内容だった。ちょいちょいヒントをもらったよ。2時間半くらいで読み終わるのもいい。
(2020年2月8日)

17.円山夢久『「物語」の組み立て方 5つのテンプレート』

上の本の続編的なやつ。小説を、大きくディザスターもの、ラブコメディ、ヒーローもの、バディもの、サクセスストーリーの5つの型にわけてそれぞれのツボみたいなものを解説していく本。相変わらず読みやすく分かりやすい。随所に生徒(?)による作例と、それに対する評が書かれているのも良い。
(2020年2月9日)

18.村上春樹、佐々木マキ『不思議な図書館』

え、え、どうした?と取り乱してしまった。それというのも僕が勝手にこの本を『子供に向けられた絵本』と勘違いしたまま最後まで読んでしまったからだ。佐々木マキのPOPなイラストもそれを助けた。やさしい語り口なのがまたあれだ。でもところどころで決めてくるいわゆる春樹的な比喩。昔読んだときはなにも思わなかったけど、めちゃ怖かったなあ。でもけっこう好きだった。
(2020年2月9日)

19.クリス・マクナブ『絶対に住めない世界のゴーストタウン』

やー面白かった。世界中のゴーストタウンを、美しい写真と共に紹介する本。かつてあった歴史と、いまある風景。読んでいるだけで想像力をバッシバシに刺激される。やっぱりアジアゴーストタウンがいいよなーと思って読んでたんだけど最後に出てきた南極のゴーストタウンもすごかった。何度も読みなくなるなこれは。少し高いけどその価値ありです。
(2020年2月12日)

20.岡崎隼人『少女は踊る暗い腹の中踊る』

なんだか心がメフィストめいてきていて、それはまあ、いまではなく少し前からで、次に書くものがそれ系を予定しているということもあって読んだ。2度目。やっぱり面白いなあ。善と悪がごっちゃな塊になってる感じ。ていうか9割悪っぽく書かれてるけど。あらいところも確かにあるんだけど、それすらも魅力になってる。写真にはないけど帯分にはこうある。青春ノワールの進化型。これから舞城王太郎と佐藤友哉を読んでいく予定。あ、その前に西尾維新の人間シリーズちょっと読んだしなんならめだかボックスも並行して読んでるんだけど。
(2020年2月28日)

21.岡崎京子『ヘルタースケルター』

やー、これは最強だ。岡崎京子作品の中でダントツ一番好き。リバーズ・エッジにあった青春のゆらぎは消え失せて、損失と喪失と命の物語になっている。メインストーリーは、整形によって美しさを得たりりこの破滅の物語なんだけど、後半、転げ落ちていくりりこと交差するように検事の男の物語が立ち上がってくる。ふたりは前世で、ある神父の帽子に付いていた2つの羽であるという暗示的な挿話が何度も挟み込まれる。風が吹いてひとつは残りひとつは飛ばされた。どちらがどちらかは最後まで明示されない。あとリバーズ・エッジにも出ていた吉川こずえが、りりこと対となる存在として出てくるのも嬉しい。あー、おっそろしい名作だった。
(2020年2月後半?)

22.舞城王太郎『煙か土か食い物』

上の上の暗い腹ですっかりメフィストめいてきた気持ちを鎮めるべく舞城王太郎に。いやー最高すぎる。最高すぎてちょっと打ちひしがれたわ。関係ないけどなぜかずっと土か煙か食い物って覚えてた。どうせ死んだら煙か土か食い物になる。いいタイトルだなあ。どこまでも破滅的で暴力的なピースを散りばめながらもそれを全肯定するような愛、つまり舞城みが凝縮された一冊。ミステリはおまけ的な、家族の愛の物語。あー、奈津川サーガもっと書いて欲しい。とりあえず次作の『暗闇の中で子供』と、過去編?の『世界は密室でできている』ぽちった。や、三作とも既読なんだけどね。やっぱ好きだわ。
(2020年3月2日)

津田雅美『彼氏彼女の事情』全21巻

もう何度、通しで読んだことだろうか。成田美名子『CIPHER』と並ぶ僕のバイブル的な漫画だ(あと楠本まきの『致死量ドーリス』も!)。それにしても、何度読んでも読み飽きるどころか歳を重ねて読むとその素晴らしさが更にわかる漫画だ。今回はついに3回くらい泣いてしまった。人が歳を重ねると涙脆くなるのって、いろいろなことを経験して対象と自分を重ねる幅が広がるからだよね。それにしてもなんという名作!みんな、急いで読むんだ!
(2020年3月4日)



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?