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田楽と田植え唄の再現 播州田植唄 Nami Adachi Stage and Music Catalog-2 

2010年から2020年の10年間、神戸市にある東経135度線が頂上を通過する神出神社の麓の稽古場で、郷の音を探求したあと、2021年から2024年まで、同じ東経135度線が通過する淡路島のスタジオにて海の音を追い、みずから農に取り組んだことで人間のカラダのリズムから天体のリズムにも辿りつくことができました。
いよいよ本年2025年からは、山の音のフィールドワークに挑みます。

昨年、一般教室生の皆さんの教室とは別に足立七海カンパニーが立ち上がり、大衆芸能の次の段階の芸能を目指して、新しい作品制作を行ってまいります。

このnoteでは、これまでの日本文化の探求、フィールドワークの道のり、その中から創ってきた舞台や音楽作品をご紹介しながら、探求の足跡を綴っていきます。

お楽しみいただけましたら幸いです。

播州田植唄 BansyuTaueuta

男性により創り上げられてきた組太鼓文化に女性の打法を織り込んだ作品。

組太鼓(くみだいこ)の創始者、古式打法の創始者、多くの和太鼓グループのリーダーは、ほとんどが男性です。

もともとは祭りでも太鼓は男性が打つもので女性が参加できなかったり、能楽など伝統芸能の分野でも男性が中心に舞台に立ち、女性はどんなに研鑽しても舞台には立てないという文化もありました。

ですので、日本で唯一、日本中を歩いて組太鼓のルーツを探し当て、創始者のもとに辿り着いた私を迎えた時、お師匠さんはひっくり返るほど驚かれ、
「最初に来たのは女の子だったか!」と感嘆されました。

「播州田植唄」は、女性が、平太鼓を2台吊るした特殊な太鼓台の横に立ち、着物を着て太鼓を打ち鳴らし、その背後には、男性が、据え置きにした太鼓を力強く打ち込んでいますが、この女性の打法は、足立七海の創作したスタイルです。


組太鼓の演奏家のほとんどは、和太鼓グループに所属して太鼓を続ける方が大半ですが、足立七海は、民謡、詩吟、浄瑠璃、雅楽、囃子、沖縄音楽、アイヌ音楽、各地の太鼓芸能、郷土芸能、韓国芸能、アラブの芸能、民舞、韓舞、バレエと、あらゆる音楽や舞踊を学びました。

さらに日本中を歩いて1週間から1ヶ月間、その地に住み込み、保存会の方々の中に入って勉強させて頂くというのを、2010年から、毎年14年に渡って続けています。

この打法は、それらを総合して、日本民謡、沖縄民謡、組太鼓の概念の3つを統合して生み出したものです。


「播州田植唄」は、兵庫県赤穂市で採取された田植唄の一節を早乙女である女性が1人で歌うところから曲がスタートします。

その唄をきっかけに早乙女たちが田植えを模した打法で太鼓を打ち始めます。途中から男性が組太鼓打法で参加します。



この作品は、田んぼでの田植えの様子を描いているので、後ろの男性陣は、早乙女たちに苗を投げる男性を描いています。

途中で何度も繰り返される田植唄は、唄ではなく、呪文のような形に変化します。これは、日本人が昔から行っていた予祝を表現しています。

曲は徐々に高揚し、賑やかに華やかに打ち鳴らされます。
むかし、田植えは女性たちが晴れ着を着て参加する特別な行事だったそうです。



本作は、手植えで米を作る若者たちが、本当に田植えの工程の中で採用してくださったり、本作を真似て笠をかぶって着物を着て田植えをする人が現れ、地元の人たちから「着物を着て田植えに来た若い人がいて大変だった!」と苦情が出るほど、このスタイルが広まりました。

日本の多くの芸能は稲作と結びついています。

以下に、田んぼにまつわる芸能をご紹介しましょう!

●田植踊り
田遊びを女性たちの華やかな踊りに仕立てたものです。東北地方の小正月の行事などにも 見られます。良く知られている青森県八戸のえんぶりも、この変形だと言われています。

●囃子田(はやしだ)
実際の田植の場を華やかに飾りたて、田の神を喜ばせて豊作を祈ることが、本来の趣旨。平安時代には、貴族が見物した記述もあり、ショー的な要素もあります。 田主(サンバイ)と、早乙女の唄の掛け合いで田植え作業が進む傍らで、たくさんの太鼓や 笛がはやされます。田植神事、太鼓田、花田植とも呼ばれ、今では中国地方の一部に残って いるだけですが、かつてはより広範囲で行われていたと言われています。

●田楽躍り(でんがくおどり/狭義の田楽) 渡来芸能である散楽(さんがく)の影響をうけて、田楽法師という専業芸能者が、曲芸とともに演じた芸能がもととなっています。平安末期には、きらびやかな衣装で大勢がパレード する風流田楽が流行しました。


本作は、足立七海が和太鼓や日本文化を探求し、現在、各地で見る郷土芸能(民俗芸能)から、伝統芸能までの多くに「稲作」が関わっている、ということに辿り着いた柱ともなる作品。

イギリスでは、本作をもとにワークショップをさせていただき、芸術学校の約100人の子どもたちがチャレンジしてくれました。

さらに、日本各地の皆さんと、アフリカの皆さんが本作に挑んでくださった時の様子を記録したビデオをご紹介します。

ちなみに、ビデオに写っているアフリカの皆さんは、実はアフリカ13州の州レベルの医療機関従事者。つまりアフリカの州の医療をつかさどる非常に優秀なお医者さん方です。もともと独立心旺盛な皆さん、さらに国も異なるので、お互いに協力することが最初は難しい状態でした。

さらに、アフリカの学校教育には、当時、情操教育がないとのことで、音楽、太鼓、準備体操、アフリカ出身のタイコのジェンベを含めて、すべて「初めて見た!」という方々ばかり。さらに、「田植え」「田んぼ」「稲」「苗」、すべてが初めてで、田植唄の意味自体を伝えられない、という状態になりました。

絵を描いたりしながら伝えていきましたが、最終的には、「あなたの家に行って、その稲や田んぼとやらを見てみよう!」という話にまでなりました。

そんな大騒ぎの中、稽古2日目には、集団の中にリーダー的な存在が現れ、お互いに教え合う、というムードが生まれ、発表時には、一致団結。終了後は、全員でアフリカ全土で田植唄ツアーをやろう!というほどに盛り上がりました。

注目部分は、最初から淡路→神戸→アフリカと兵庫県の数カ所のいろいろな年齢の人々とアフリカの人が同じ曲を打っているところ。

同じリズムが、日本の方だとどっしりと重く二拍子、アフリカの方だと軽くて三拍子が聴こえてきます・

このビデオの最後には、昔から雨に大変苦労し、水にまつわる伝説や芸能がたくさん残っている土地の子どもたちが、パンデミックの時に、大人たちを応援しようと、秋祭りの感謝のまつりを段ボールで作った神輿を担いで行っている様子が映っています。



Nami Adachi Stage and Music Catalog

足立七海カンパニー Nami Adachi Company

演奏家・パフォーマーの足立七海を中心に、舞台作品、映像作品の制作・上演を行っています。郷土芸能の研究・調査・復活、一般教室の運営を行う「さとおと太鼓研究所」とは別に、プロフェッショナルの演奏家・舞台人、芸能人、劇団、アスリート、映画での演技指導・時代考証などもご依頼いただいています。

【Nami Adachi Official Website】
https://nami.satooto.com

●和太鼓の研究所「さとおと太鼓研究所」
足立七海監修の和太鼓研究所。日本文化は足もとから、というコンセプトで、3歳から90歳まで全世代の一般教室、学校や施設、ホールの教室まで幅広く担当させて頂いています。

【SatoOto Taiko School Official Website】

https://satooto.com

【Satooto Taiko school Official note】
https://note.com/gentle_zinnia292

フィールドワークの記録・取材・執筆


【Contact ご依頼・取材・お問い合わせ】
以下のコンタクトフォームまたはメールアドレスからご連絡頂きますようお願いいたします。通常3日以内にはお返事を差し上げております。

Namy Production
namyproduction@gmail.com


TAIKO Player and Minyo Singer
足立七海 Nami Adachi

10代から日本中を歩いて師匠を探し、組太鼓、古式打法、太鼓唄など多くの打法の創始者を探し内弟子として10年に渡って住み込み、職人教育を受ける。
公演メンバーとして映画、メディアなどの出演をはじめ世界各国、国内を巡演。

世界中の音楽家や映画監督、研究者などの中で演奏家としての第一歩を踏み出し、
独立後は、民謡、三味線、笛、尺八、琵琶、筝、中国琵琶、二胡などプロ女性演奏家らと音楽活動を行う。日本音楽専門誌の日本音楽全般、和太鼓、津軽三味線の専門誌の企画から取材、編集、執筆も担当。

取材中に、全国的に過疎化で消滅の危機にある郷土芸能の姿を知り、郷土芸能の中の楽器や奏法、継承方法などを調べて記録していく「日本のふるさと音めぐり」を企画。民俗音楽学者、日本音楽専門誌編集長ら専門家の支援のもと芸能調査にあたるなか自らの故郷の郷土芸能も廃れていることを知り2010年末に全ての仕事を引退して帰郷。

郷土芸能の継承者を探して自ら芸能を学び記録しながら、むかし、郷土芸能が持っていた世代間交流を復活させるための場「さとおと太鼓教室・関西」を創設し、子どもたちを地域で育てていくことを目標に多くの地域リーダーを育成。
また単身で自治体、企業、学校、国際事業のプロデュース、コーディネート、演奏、指導を手掛け、年間3000人を超える講座を担当。

現存する伝統芸能、民俗芸能に加え時代を遡り楽器や編成を古文書や屏風絵などから再現し、現代に描き出すことを続け、2010年から、農・漁・林など日本の大自然と向き合う人間の姿を舞台に描き出すことに挑み、2019年、「作曲家と演奏家による組太鼓新作公演」で、米づくりの1年間を描き出した作品「みずほの国の米のうた」を発表。

同作で、作曲家に委嘱した新作「風の太鼓〜インドラの網(宮沢賢治作)によせて」、組太鼓の創始者による「阿修羅」と共に上演。
手掛けたおもな事業としては、2010年9月、文化庁「子どものための優れた舞台芸術体験事業」、2011年1月、世代間交流学会「世代間交流活動」(世代間交流学会・兵庫教育大学)、2011年10月、兵庫県乳幼児子育て応援事業(兵庫県姫路市)、2014年8月「JICA アフリカ地域 地域保健担当官のための保健行政B(仏語圏)」コースの研修でアフリカ人医師13人の指導を担当。2015年には単身でイギリスでのコンサートや芸術学校でのワークショップを行う。2021年より淡路島にて舞台制作会社の主催教室の立ち上げに尽力。


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