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言葉の勉強をしようと思ったら、伝説の大きなしゃもじを手に入れていた話

キャッチコピーを書くセンスが、まるでない。

そう気づいたのは、ありがたいことに雑誌やWEBメディアからいくつかの連載をいただいてからだった。


タイトルがうまくつけられない。

タイトルは、とても大切だ。情報がテキ屋のベビーカステラのごとくボロボロボロボロとあふれ、どんどんどんどん焼かれていくこの世界で、自分が書いた文章に目を止めてもらうには、タイトルしかない。

人の目を引き、しかも、本文をわかりやすく表現する。



えっ……めっちゃ……めっちゃ難しくない……?



そもそも私は、100文字で済むことを、誰にも頼まれてないのに2000文字で書いた上、エキストラホイップ(+50円)する女だ。

目立つようにうまいこと言いつつ、短くするって、めっちゃ難しくない……?

悩んだ末に「村上ファンドのような女になる」というタイトルを送り、編集部からNGをくらったあと、私は悩んだ。このままじゃだめだと。

コピーライター養成講座に通おうと思った。16万円くらいする。本気でプロから強い言葉を学ぼうとすると、それくらいするのだ。

まあ、正直、私と同年代くらいのコピーライターから「あの講座よかったよ!」「こっちの方が良いよ!」と、返信がつくのを期待していた。



バケモノみたいなコピーライターから、返信きちゃった……!



糸井重里さん!?!?!?!!!!?!?

ドラクエでひのきのぼうLv.1持って、スライムでも倒してレベルあげっかと外に出たら、ゾーマがいてつくはどう撃ってきたくらいびっくりした。


ミルドラースもメラゾーマ撃ってきた……。


伝説のコピーライターと、伝説の編集者から「講座はやめて、コピーがうまいと思う人に話を聞きに行け」と、言われたわけなので。

ここで私の、貧相な言葉の力(伏線)が炸裂するのですが、人に話を聞きに行く → 突撃 → 突撃と言えばヨネスケ→ヨネスケと言えばしゃもじという連想で、このように返信をしました。

この、何気なく、書いたしゃもじ。特に深い意味はナッシング。いわば照れ隠しのようなもので、ちょっと笑いのエッセンスを入れようくらい、の。

それで、「ほぼ日」の皆さんの粋な計らいで、浅生鴨さんに突撃することになった。

浅生鴨さんは、「元・@NHK_PRの中の人」だ。伝説のツイッタラーだ。小説も書いて、ドラマ化もしている。

もちろん、お会いしたことは、ない。

そんな鴨さんから、メールがきた。

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お、大きなしゃもじを持ってくる女になってしまった!!!!!!!!

私が適当なことをTwitterに書いたから。口は災いのもとならぬ、口はしゃもじのもとになった。寓話を生み出してしまった。

これは持っていかねば、岸田奈美の名がすたる。変な方向にだけ思い切りが良いことがチャームポイントなので、必死でできるだけ大きなしゃもじを売ってくれる店を探した。

そして、広島・宮島にたどり着いた。しゃもじの名産地らしい。マジか。

由緒正しきしゃもじ屋さんに、全然由緒正しくない発注をした。ふう。

しゃもじ屋さんも「大きなしゃもじですね。ご用途は、展示用ですか?ご結婚式用ですか?……えっ、どちらでもない?……突撃?どういうことですか?」って、驚いてた。


どういうことなんでしょうかね。


4日後、大きなしゃもじが届いた。早すぎてちょっと引いた。

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デデーン!!!!!!!!!!!!!


どうですか、この圧倒的しゃもじ!

文字はなんと、書家の先生が手書き。ちなみに開運の焼印はサービスで押しといてくれたらしい。優しい。焼印ってそんな気軽に押せるんか。


ちなみに、届いた時の見た目はこれ。

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なんか封印されてる!?!!!!?!?!

嬉しくて嬉しくて、アホみたいにしゃもじを持ってくるくる部屋の中を回ったり、しばらく連絡とってなかった友人に自撮りを送りつけたりした。返信はこなかった。

ここで反省点があった。私はしゃもじを持っていくことだけに囚われ、そのあとどうするかを考えていなかった。しゃもじの手段が目的化したというやつだ。なんだその言葉は。

すると、伝説のデザイナー・前田さんが(この短期間でめちゃくちゃ伝説と遭遇するんだけど磁場でも乱れてんのか)すばらしいアイデアをくれた。

なるほど、突撃した証に、お会いした人にサインを書いてもらえば良いのか。

だけど、しゃもじってどうやって文字書けば良いのかな〜〜〜滲んだら嫌だしな〜〜〜まあ適当にペン持ってくか〜〜〜と、カウチスタイルで舐め腐りながらゴロゴロしてたら。


ゼブラ株式会社さんから「弊社にお任せください!」と、連絡があった。


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伝説のペンメーカーまで来ちゃった……!!!!!

実際にお会いすることになったのだけど「私が実際に大きなしゃもじを貴社へ持参いたしますので、日程調整してもよろしいでしょうか」と、おそらく人生で二度と使わないであろうビジネスメールを書いた。

ちなみに当日、地下鉄が遅延しまくって「遅れます」とお詫びの連絡をしたら「全く問題ございません。お気をつけて、しゃもじファーストでお願いいたします」と、人生で二度と受け取らないであろうビジネスメールも届いた。

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紹介します。ゼブラの生川さんです。

わざわざしゃもじを買って、ウェルカムしゃもじを作って待っててくれました。間違いなく、良い人です。

前日、緊張しすぎて「ゼブラ」で検索して表示されたページを片っ端から読んでいたんですが、最終的にシマウマの生態解説にたどり着いて「シマウマはめっちゃ性格悪いから、人を乗せてくれない」というものすごく知りたくなかった情報を仕入れた私ですが。

ゼブラの人は、絶対に性格が良い人です。

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性格が良い生川さんは「ペンのインクを10年間ゴリゴリに研究してたガチの人」なので、ガチで木片をいくつも買って、書き心地やにじみ具合をテストしてくれてました。ゴリゴリすぎる。

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「ああ良かった!この木材なら、弊社のマッキー(油性ペン)で問題なさそうです!マッキーは黒色が良いですか?」

ホッとする性格が良い生川さんに聞かれ、私は元気よく「ハァイ!」と答えた。

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ハイマッキーにかけた「ハァイ!」だったのだが、性格の良い生川さんは気づいたかどうかわからない。

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そんなこんなで、一番しゃもじに字が滲まず、突撃の混乱のさなかでも片手で押すだけでキャップが外れサッとサインをしてもらえる「マッキーノック」を私は選びとった。

性格の良い生川さん、本当にありがとうございました。明治から続く会社なのにノリ良すぎる。

さて、こうして伝説の勇者たちから大喜利のような武器を授けられた岸田は、新たなる伝説へ、突撃しに行くのだった……!

(つづく)

勝手にSpecial Thanks
糸井重里さん佐渡島庸平さんまえだたかしさん、浅生鴨さん、ゼブラの皆さん、杓文字の家の皆さん and YOU!

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28歳の作家。100文字で済むことを2000文字で伝える。車いすユーザーの母、ダウン症の弟、亡くなった父の話など。講談社・小説現代 連載、文藝春秋2020年1月号巻頭随筆 執筆。コルク所属。 連絡先 → namitanien1991@gmail.com

コメント3件

シマウマの習性は最高でしたw
色々な人が慕って来るの凄いです。
[突撃、岸田の文ごはん]楽しみです(^_^)
わざわざ高いお金出して講座に通って誰かと同じようなコピーを作れるようになるより、岸田さん純粋培養のものの方が絶対良いと思います。
ハイマッキー。
素敵な体験❤️岸田さんなの純粋な想いがすごく魅力的。個人的には成長して欲しくない🥰可愛い
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