ネコと話せる日が来たら

ネコも本を読むのだ、とその人は教えてくれた。
哲学書とか小説とか、ニャアニャアと言って味わうのだという。
人間の言葉で書かれているはずのその本を、ネコさんはどんな気持ちで読むのだろう。

例えば、「吾輩は猫である」という小説。
これ、ネコ的にはどう受け止められるのか。
私ならまず「名前つけてあげてよ」と言いたいところなんだけれど、その辺どうだろう。

名前。それは、「替えの利かない大切な存在」ということを示す重要なもの。
私も、外を歩くときの相棒・白杖には「ジョージ」と名前をつけている。
名前をつけることでより親近感がわく。うっかりトイレに忘れる、なんてこともなくなる。
だから「吾輩は猫である」の「吾輩」にも名前をつけてあげてほしいのだ。

それができないというなら、私が勝手に名前をつけてあげる。何がいいかなあ。
そういえば以前友人が言っていた。「イヌにはワンちゃんって名前をつけるといいんじゃない?そうしたらたくさんの人に名前を呼んでもらえるでしょ?」って。
なるほど。確かにそうかもしれない。
たまたま会った通りすがりの人だって、「あ、ワンちゃんだー」「ワンちゃんかわいい!」なんて言ってくれる。いきなり名前を呼んでくれるのだ!
よし、「吾輩」の名前は「ネコ」にすればいい。どうだろう。気に入ってもらえるかなあ…。

それにしても、「ワンちゃん」とは言うけど「ニャーちゃん」とか「ニャンちゃん」とは言わないのはなぜだろう。
「ネコちゃん」とは言うけど「イヌちゃん」とはあまり言わないのはなぜだろう。
不思議。

「ネコも本を読む」と教えてくれたその人は、ネコと話すことができるらしい。私もそんな力がほしいと言ったらその方法を伝授してくれた。
ネコと話せる日。私にも来るだろうか。
もしそれが実現したら、本のことや名前のことなんかについて深く語り合ってみたい。
…とは思うものの、人と話すことにも難儀している私なのだ。ネコと話すなんて相当レベルの高い行為のような気がする。
だって、まずネコに会ったら「ニャー」と真剣に挨拶してみることから始めなければならないというのだから!
うん、たぶん、無理だ。

…って、こういうことを考えていたら何時間でもぼーっとしていられそう。
そして、そんな贅沢な時間はあっという間に過ぎていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?