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海陸風 【2020.02 過去記事】

立春を過ぎたところでようやく冬が来たと思ったのもつかの間、ここ南関東では空気が刺すように尖って本格的に寒かったのは一週間ほど。12日には西~東日本を中心に南~南西風が吹いてグーンと暖かくなり、13日には棘のないふんわりとした空気が感じられました。
クシャミは多少増えましたが。。。

いよいよ花粉と黄砂、PM2.5が気になる季節の到来です。
今シーズンは暖冬からの飛散の開始は早かったものの、昨年の梅雨~夏にかけて日照時間が少なかったこと、降水量が多かったことなどから、飛散量は西日本~東日本を中心に例年に比べ少ない傾向となるようです。
花粉症の症状がつらい時に海に入ると究極の鼻うがいのようで、上がった後は一時的に(半日くらい?!)鼻水鼻づまりがなくなる気がする、というと、たまに共感してくれる人がいますが、、どうでしょうか。
いずれにしても飛散量が少ないということで、花粉症の方には優しい春となりそうです。


春が近づくにつれて昇る太陽は少しずつ東寄りへ、沈む太陽は西寄りへ移り、徐々に日が伸びてきています。
春分の日までまだ一ヶ月と少しありますが、秋から冬にかけ日中は小さかった潮の動きも、少しずつ幅が広がってきました。(潮汐は、春分~秋分(春~夏)は日中の干満差が大きく、夜間は小さい。秋分~春分(秋~冬)はその逆となる。)

さて、今回は春くらいから目立ち始める海陸風(サーファーに関係するのは主に海風)についてです。

波をもたらす風の中には、天気図で見られる大きなスケールの気圧配置によるものだけでなく、比較的小さな地域でも地形や日射によって吹くことがあります。
海岸近くで吹く海陸風は気流が弱い気圧配置の日などに吹きやすく、海と陸の暖まり方の違いによって、吹く方向が変わる風です。

陸と海を比べた場合、陸は暖まりやすく冷えやすい。それに対し、海は暖まりづらく冷めづらい。
ということから、高気圧に覆われて陽の光がさんさんと降り注ぐ晴れた日は、昼と夜では陸上と海上の気温が逆転します。
・昼間の気温→海上<陸上
・夜間の気温→海上>陸上

日中は強い日射を受けて陸の気温がぐんぐん上がり、陸に接した空気は軽くなるため上昇します。ここに補うように海からの空気が流れ込みます。これが海風です。
夜になると今度は陸の温度はぐっと下がり、海の方が暖かくなります。そこで、海上の空気は上昇し、そこへ補う形で陸から空気が流れ出します。これが陸風です。
朝や夕方、陸風と海風が逆転する時には風が弱まり、無風にもなります。

海風は海岸線から数十~50kmくらいまで内陸へ吹き込みます。
昼夜の気温差が大きい低緯度ほど強く、時には10m/sを超える海風が吹いて、風波で遊べることもあります。

たとえば、関東周辺でいうと、1日のなかでも小規模と広域の2パターンの海陸風があります。
お昼前後までは、海と陸の温度差が開き始める頃で、海と陸が接したところの短い距離の局地的な海陸風で、この時には、東京湾内でも多少は吹くわけですが、まだ弱い。

沿岸海陸風の地図

そして、太陽が高くなるお昼を過ぎて夕方までには海と陸の気温差はさらに大きなものとなり、湘南や千葉、茨城の太平洋側の沿岸から内陸奥の上昇気流と結びつき、関東平野全体に向かって大きな流れができるように、風が吹きます。東京湾内の風を目立たなくなり、太平洋沿岸の風速も強まります。

関東平野まで流れ込む海陸風の地図

これはもちろん関東周辺に限った事ではなく、島国日本はどこでも起こりうるわけです。

波がある時には朝夕の風が弱い時間帯が狙いめとなりますが、高気圧の覆われて天気図上は波の素がなくスモールコンディションだと思っていても、風波で意外と遊べる午後となることもあるわけで、今後春から夏へ向けて、そんな日が出てくるでしょう。
さらに、気圧配置によって朝からオンショアが吹いている時には午後にはもっと風が強まり15m/sを超えてくることもあります。そんな日は風をかわせるところや、風が弱まる翌朝に遊べる可能性があります。

1月後半~2月前半はずーっと波が続いた千葉でしたが、やはり春が待ち遠しいです。

少し気が早いですが、主に春から夏にかけてあらわれる風と波のお話でした。

気象予報士
塩田久実