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《2021.12.19 知財系 Advent Calendar 2021》 薬機法×知的財産法の境界線 〜医薬品業界からみた商標〜

こんにちは!

「知財系 Advent Calendar 2021」に、すでに初雪が観測された、東北は岩手県よりお邪魔いたします!

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岩手県といえば、今年、あるお笑い芸人さんが、こちらのローカル番組のMCオファーを受け、ご家族も一緒に移住してきたことで、少し話題になりました。

そんな地域からお届けします。

*なお、本テーマは、2021.11.27にオンライン開催された「淡路町知財研究会」(淡路町ゼミ)、2021.12.20 19:30からライブ配信される知財実務オンライン「第4回ライブライトニングトーク」に持参したテーマと同様のものです。

*淡路町知財研究会のときは目線が少々フラフラしたまま話してしまったこと、知財実務オンライン(ライトニングトーク)は5分間という時間制限があるため、こちらの記事に全体像を書き、リベンジすることにしました。

*上述の通り、本企画を筆者はひそかに楽しみにしていたため、ほどほどにして良いはずの気合いを入れすぎてしまい、かなりの超大作になりました。目次はつけて、各項目に飛べるようにしたので、小説をセクションごとに区切って読むようなノリで、複数回にわけて読むことをおすすめします。大変申し訳ございません。

1.はじめに

昨年、SNS経由でこの企画の存在を知り、首都圏から遠く離れた岩手県で一人「来年は絶対参加するぞ!」と心に決めていたので、こうして発信側でお邪魔できることを、大変嬉しく思っております。

そんな感じで時は流れ、先月上旬。

「知財系 Advent Calendar 2021」の投稿枠の予約が始まったことをTwitterで知り、早速予約しようと思い、ページを開きました。

まだ予約が始まったばかりのようで、枠はガラガラ。

「よーし!」と思い、まだ前後の枠にどなたも入っていなかった本日の枠を確保したのですよ。

その後もTwitterで、参加予定の方が枠を予約した旨のTweetがたくさん流れてきまして…。

気づいたら、最初にサイトが開いた「知財系 Advent Calandar 2021」の投稿枠は満杯に。

前後にどなたが入ったかみてみました。

…大変恐れ多い枠を取っていたことが発覚しました。

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「週刊少年ジャンプ×商標」のように、独自の世界を切り開くのが好きなしろ先生からバトンをもらい、「ムゲンチザイ」のような知財系のイベントを企画することが好きなちざたまご先生に繋ぐ。

そして、この投稿の翌日(2021.12.20)に同様のテーマを引っ提げて知財実務オンラインにお邪魔するわけですが、そのまた翌日(2021.12.21)が加島先生。。

どうしよう。。

このお三方のレベルに肩を並べられるような記事を書くのは、私にとって難易度が高い。。

…はい、つべこべ言わず、さっさと書きます。

(意訳)この記事は、半分ビビって書いてました。

2.自己紹介

現在、岩手県在住で、これまでも大都市圏と言われるようなところで生活できる機会がなかった(就活で大都市圏の企業もたくさん受けたが、入れるチャンスを得ることができなかった)こともあり、最近はオンラインのコミュニティに積極的に参加していますが、たぶんほとんどの方にとっては直接の面識がない人間だと思います。

せっかくなので、自己紹介をします。

1988年(昭和63年) 岩手県生まれ

苗字が珍しいので、よく出身地を尋ねた後に「岩手県に多い苗字なのですね。」と言う方がいるのですが、全然違いまして。。

もともと同姓の約半数は愛知県にいて、実は父も出身はそっちの方なのです。岩手県にはほとんどいない苗字です。誤解のないようにお願いします。

・高校まで岩手県、大学は北海道、大学院(+大学院研究生1年間)は宮城県

留年や浪人なしのストレート進学です。同い年ならわかると思いますが、高校卒業年(大学受験時)に「世界史未履修問題」、学部卒業時に「東日本大震災」が起こった学年です。

本人の責めによらないことがいろいろ起こり「影響のないようにする」と言われたけれども、結局のところ人間なので、影響を受けまくった学年です。

特に「世界史未履修問題」が発覚したときの私は、全国ニュースで一番最初に報道された高校に在学していました。たくさんの報道記者が学校に上がり込んで校長室に押しかけていましたね。とある国立大のAO入試直前だったので、勘弁して、と思ったものです。

・現職については、聞かれない限り話さないことにしました。

これまで嫌な思いをたくさんしてきました。週刊誌の記者のような人間にもたくさん遭遇し、私と直接喋ったことすらない(同じ研究室にいただけ)のに「私はあの人の指導係でした」と明らかな嘘を言いふらしたり、他にも身の危険を感じる出来事が多々あったためです。(こういう人が真の「疫病神」ですね。。本人は私をいじって遊んでいるだけかもしれませんが、こちらがその言動由来で食らった影響の大きさを加味すると、生きていて恥ずかしくないのかな、と心の底から思いますね。)

そういうことがあったので、直接コミュニケーションを取る方にしか現在の立ち位置はお話ししないことにしました。

ただ、お世話になっている方・ご迷惑をおかけした方・ご心配をおかけした方はそれなりにいるので、そういう方には「個人的に連絡したい」と考えております。

タイミングを見計らってこちらからお話ししますので、お待ちいただければと思います。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

・もともと医薬品業界の職歴が長い

宮城県を逃げるように飛び出して、最初の就職先は富山県の某製薬会社でした。スタートアップ企業など立ち上げて間もない会社ではなく、創業年数がかなり長い企業です。全国的に有名になることを狙っている割には、東日本(少なくとも北海道・東北エリア)では無名の中小企業です。西日本だと知名度があるようですが、偏りが生じている理由が私にはよくわかりません。

以降に記す通り、私は転職経験がありますが、不幸中の幸いなのか、入社前の時点で薬事の知識があったこともあり、なんだかんだで医薬品業界にお世話になっていました。

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これだけ話せば大丈夫だと思います。。たぶん。

3.テーマ設定の経緯

大元をたどるとオモチ先生のこのブログ記事のリンクがTwitterにアップされたときに、オモチ先生、パグ先生、私の3人で、Twitterで表立ってやりとりしていたのが最初のきっかけでした。

*私のいう「パグ先生」=「おっさん特許技術者さん」です。他の方を「おっさん」が入った形で呼ぶのは失礼ですし、加えてパグ先生と私は(同い年ではないですが)そこまで年齢が変わらないので、なんか少し心にグサリと刺さるものがあり、私はパグ先生と呼んでいます。

その数か月後、今度はパグ先生が、Twitterにこんな絵をアップしていたのですよ。

「この絵、良い意味でもっと充実できないかな?」と思い、眺めていたら、赤い丸で囲んだところに目がいった自分がいて、「そういえば…」と、あることを思い出したわけです。

(パグ先生、勝手に絵を使ってごめんなさい。。)

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知財クラに限らず言えるのですが、医薬品分野ってどうしても「難しい」というイメージがあるみたいで、私自身も周りから疑問をもちかけられたときに回答すると「よく話が展開できるね。。」と言われることも多々ありました。

ただ、難しいからって他の人は全然目を向けないか、と言われると実はそうでもないことがわかり、単純に「チケット持っているのに入り口を覗いて帰っていく」ような状況であることに気づきました。

そして、こういう方たちのもつ「難しい」というイメージを少しでも払拭できたら、もっと知財も医薬も業界が活発になったり、抱えている問題が解決できるのかな、と。

それに「『医薬×商標』がテーマのセミナーってあまり聞いたことがないぞ?」と気づいたわけです。

そんな感じで、今回の記事の執筆に至ります。

なお「医薬×特許」については、偉くてすごくて有名な先生方がときどき、どこかしらでご講演されていますし、本企画に絞って言えば「知財系 もっと Advent Calendar 2021」(今年は12/21の枠)に投稿されているFubuki先生の記事を読むと勉強になると感じています。

4.本記事における注意点

ここから先、本題に入るにあたり、勘違いを起こさないためにも大前提を書き出したいと思います。

1)私は弁理士でもないですし、薬剤師でもないです。

ときどき、内容に突っ込んで持論をいろいろ展開すると、錯覚を起こすのか「なみざき先生」と言い出す方がいるのですが、私、「先生」と敬称のつくような資格なんて一つももっていないですよ。。

そのときの状況にもよるので一概には言えないですが「どうやったらそういう敬称がつくの?」と感じたことは多々あります。

あと「貫禄があるから声がかけづらい」と言われたこともありました。真面目さが生み出しているようですが、私の真面目さは、幼少期にいじめにあい、周りに勝てるものがないか探した結果、自ら作り出してしまった「後天的なもの」なので、真面目と受け取られるのは良いのですが、話しかけづらいのであれば、自分の意に少々反する部分がありますね。

ただ「相手目線(相手の理解できる語彙レベル)で話す」ことだけは心がけています。

2)みなさんのご意見や考え方、ものの見方が知りたいです。

後述しますが、私がこのような中身のある発信にチャレンジする理由の一つに「良い意味でお世話になっている(=Takeしている)方には私からもGiveすべき」ということが大前提としてあります。

でも私には、実力を裏打ちするような知財に関する実績や成績なんて一つもないし、無資格者。

それに、現時点で東京または大阪在住ではなく、ほとんどのみなさんと直接の面識がない。

でもなんか、自分を前向きにさせてくれたこの業界に対して、良い意味で何か貢献したい。

そう考えたときに「私は法文を医薬品実務と紐づけたら覚えられる人間で、逆に他の方は医薬品業界ってどんなところ?と感じているわけだから、自分自身の紐付けた思考回路をわざと文字に起こして置いてみよう!」と思いついたわけです。

あわよくばさまざまな方向から十人十色の意見も飛んでくるかな、とも思いました。

突っ込みがあったら応じるという受け身の姿勢であってはいけないことくらいわかっていますが、知財クラの片隅でこうやって少しやってみようと思ったわけです。

…「早く中身に入れ!」って?

…はい、ここからは内容に入ります。ごめんなさい。。

5.「薬機法」とはなんぞや?

最初に、以前、私がなんとなく書いてみたnoteの記事と、薬機法(@e-gov法令検索)の詳細ページをリンクとして置いておきます。

「薬機法」の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。

具体的な中身がわからなくても、医薬品や医療機器に関する法律であることは、想像がつくと思います。その通りでございます。

ただ、一つ注意が必要なことがあります。

特許法や商標法のような知的財産に関する法律は「奨励すべき制度を交通整理する」意味合いがあると思います。

薬機法に関していえば、薬は大量に摂取すると毒と化するものでもありますから「医薬品があるから不幸になる、という人が極力出ないように(悪巧みも含めた)人間の思考回路を逆手に取って規制する」意味合いのある法律ともいえます。

性質の異なる2つの法律の掛け算領域が、今回のこの記事のテーマともいえます。

そうそう。

法律の正式名称が長いからって、厚生労働省などに提出する公的な書類に「薬機法」と書いてはいけないらしいです。

私は1社目の時点で上司や先輩に釘を刺されてから業務に就いたので、やらかしたことはないですが、やらかしたら国からお叱りを受ける、と教えられてきました。

厚生労働省が認めている略称は「医薬品医療機器等法」。

「薬機法」は、元を正すと改正した「薬事法」です。

「薬機法」は薬事法の有名度合いにあやかって報道機関がつけた名称、と私は教わって生きてきました。

今回は、みなさんに興味をもっていただけたら、ということで書いているので、わざとフランクに「薬機法」という表現を使っています。

今回のテーマは「医薬×商標」、すなわち「薬機法×商標法」というわけですが、私としては、注意しなければならないポイントが4つあると考えています。

この中から今回は、1)と4)に焦点をあてて、医薬×商標あるあるを私なりの視点でお話ししてみようと思います。

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6.「広告規制×商標」

「薬機法×商標法」を考える上で外せないのが薬機法 第66条の「誇大広告等の禁止」です。

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なんでこんな条文があるのでしょうか?

一旦、医薬品から離れて、「機械」について考えてみましょう。

一言で「機械」と言っても、世の中には多種多様な「機械」が存在します。

よくよく考えてみましょう。

もし仮にその「機械」で事故の発生が想像できるとします。でもその機械には、危険を察知して停止する機能を開発段階でつけることも可能だと思います。

では、医薬品の場合はどうでしょうか?

ビンに詰まっているだけ、PTPシートに充填されているだけ、スティックに入っているだけ、…、すなわち、開発の段階で服用時の事故の発生が想像できても、実際の製品として流れた後の危険回避のコントロールは、服用する個人個人の脳みそ以外にないわけです。

そのため、国全体として明文化したルールを作った、というわけです。

ここで注意してほしいことが一つ。次の画像の赤い字にご注目を。

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条文の冒頭に「何人も」という言葉があります。

「広告規制」と表現すると「製薬会社が新商品の広告を打つ際に守らなければならないルール」と思う方が出てきそうなのであえて書きますが、この条文の規制対象は、製薬各社が打つ広告だけではありません。

実は書いた人間が製薬会社勤務か否かを問わず、SNSなどネット上に書き込まれた情報も、規制の対象になります。

また最近は、ネット通販のシステムで購入可能になった医薬品があったり、Uber Eatsが医薬品をデリバリー(?)しているエリアもあると聞いています。

地域によって異なるのかも知れませんが、病院の診療時間外に具合が悪くなった場合、特に症状がひどい場合なんかだと、対応してくれる当番医のいる病院に行くと思います。

その場合、みなさんの住んでいる地域では、診察代の仕組みってどうなっていますか?(書いてから気づきましたが、地域ではなく、病院によるのですかね?)

私はこれまで4つの県に住んだことがあるのですが、地域によっては「今、この場で5000円払ってください。後日、病院の開いている時間帯に来ていただくときまでに正しい診察代を計算しておきます。来院したときに多くいただいた分をお返しするか不足分を徴収します」という病院もありました。

でも、そんな急に「5000円払ってください」って言われたって、困りますよね。だから、きつすぎた制度を部分的に緩くして、このように、比較的容易に医薬品が入手できるようになったわけです。

人間は脳みそのある、考える生き物ですから、制度を緩くするということは、抜け穴を作ってしまい、一部の人が考える悪巧みを表に出してしまう可能性も十分に考えられます。

そのような背景もあり、こんな条文があるわけです。

ちなみにこの条文、違反すると課徴金(反則金みたいなもの)が課される場合があることを申し添えます。

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この薬機法の条文を、商標法と照らし合わせて考えてみます。

条文をダイレクトに照らし合わせてもなかなかピンとこないと思うので、実際にどんな表現が薬機法 第66条違反の疑いで審議にかけられたのか、実際の例をみてみましょう。

クイズです。薬機法違反の疑いで審議になった実際の例を5つ示します。勘で大丈夫ですので、次の表の空欄を埋めてみましょう。

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一番上なんて、場合によっては商標登録ができる可能性もありそうですし、上から3番目は、特許公報が公開されたらなんとなく使って良さそうな気もします。

…実はこれらの表現、疑いがかけられて審議になったときに、全て「違反」と判断されました。

どんな品目がどのような理由で違反と判断されたのか、表にまとめました。

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安全性の監督が必要なこともあり、医薬品や医療機器などを製造販売する際は一定の条件を満たした上で、業許可と製造販売の許可を取る必要があるのでそのルールが大前提として守られていない一番下は論外な気もしますが、あとの4つは、見方によってムズムズする方がいらっしゃると思います。

全部黒字で書くと頭が混乱するので、ポイントと思われるところを赤字表記にしてみました。

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特に上から3番目の「世界初・特許公開」については、医療機器を扱う方から見ると「え?なんで?」と感じる方が多いみたいです。

この判断がなぜ下りたのか、私なりの思考回路を少し書いてみようと思います。

まず大前提として、この判断は「化粧品」の品目の広告表現に関して下りた判断で、疑問に思う方は「医療機器」を扱う方が多いみたいです。

また、医療機器、特に医療用メスなんかだと権利化された部分があることを広告として表現している場合があるようです。

これに対して私は、「医療用メス」だからそのような表現が認められるのかな?と考えました。

医療用メス、一般の方はどう考えても購入しないと思います。病院や大学の医学部が購入するのが一般的だと思います。

自分勝手で変なことを考える、悪いお医者さんがそのメスを握ったら、最悪の場合、凶器になることも十分に考えられますが、包丁が凶器として扱われるケースと比較して考えると、購入する母体数も凶器と化した事件数も医療用メスの方が圧倒的に少ないから?と考えました。

おそらく、一般の方も購入するケースが十分に考えられるような医療機器となると、「特許公開」や「特許権取得」といったような表現は違反になる判断が下りやすくなるのでは?と考えています。

逆に、例として示した「化粧品」に「特許公開」という表現を使用して違反と判断された理由ですが、化粧品の使用量は、個々の状況で微妙に変わってくることに由来するものだと思います。

乾燥肌の人が保湿等の目的で薬用化粧水を少し多めに使用するケースもありますし、肌のシミなどを隠したい目的で少し厚化粧をする方もいらっしゃると思います。

昔、芸能人で、厚化粧をする形で(?)肌を思いっきり白くした人がいました。仮に、地肌が色黒でそれをコンプレックスに感じている人がその芸能人を見たら、どう感じるでしょうか?

たぶん「同じことをすれば、きっと自分の肌も色白に近づくはず!」と考えて、同じ化粧品を揃えることから始めると思います。

…よく考えてみましょう。

その芸能人だからあの肌の白さを、肌トラブルを起こすことなく化粧品を使う形で表現できても、同じことを別の人が行うと、肌トラブルや皮膚の病気を引き起こす可能性が考えられます。

だから「なんか凄そう!」といかにも感じさせる、顧客誘引効果のありそうな「特許公開」という表現は、化粧品でアウトの例があっても、医療機器ではセーフの場合があるのかな?と考えています。

ちなみに、医療用メスは皮膚に対して直接用いる刃物です。

皮膚に対して直接用いる刃物の一つに(医療機器には分類されませんが)「カミソリ」があります。

カミソリには、肌がカミソリ負けしないように作られているものがありますが、医療用メスもそんな感じで、開発時点で安全対策のような機能を物理的に付与可能な場合もあるから?という気もしています。

7.薬機法における「広告規制」の「広告」に学術論文は含まれない?

6.を執筆する過程で、ちょっと注目したい最高裁の判例をみつけました。
広告表現の審議から出された判例ではないのですが、判決文に「薬機法 第66条における『広告規制』の『広告』に学術論文は含まれない」という旨の見解が含まれた裁判です。

平成30(あ)1846「薬事法違反被告事件」です。最高裁判所の判例検索のリンクを張っておきます。

リンクの判決文を読む限り、薬機法の規制対象となる「広告」は、顧客誘引性、つまり宣伝要素のある媒体が対象になると解釈され、単純に、学術論文にデータを出して不特定多数の目に触れたからといって、必ずしも学術論文に宣伝要素があるとは言えない、ということなんですかね。。

たしかに、学術論文は製品の宣伝要素がある媒体であるとは言えないと思います。ただ、科学的な発見があるから学術論文が出るわけじゃないですか。。

…奥が深くて、わからない世界です。(=研究し甲斐がありそうです。)

薬機法の法解釈が大きく動いた判決の一つであると言えるような気がします。

8.謎の商標に出会ったことから事業戦略を推察してみた

オモチ先生のブログに始まり、パグ先生の絵からこのネタで話題提供をしてみようかな、と思いつき、流れで「広告規制」の話をTwitterで時々ぶつぶつ呟いていたら、知財塾でお世話になっている森田先生(大野総合法律事務所)から、このようなリプライをいただいたことがありました。

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「わたしの温度」という、体温計のようにみえる製品だけど医療機器の許認可からは逃れて商標権を取得した例がある?

おもしろい!と思って、完全に興味本位で調べてみました。

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該当するものがあったので、詳細をみてみたら…

…ちょっと待て!?

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「医療機器の指定を逃れるため」にこのような商標権を取ったのに、指定商品に体温計が入っている!?

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これ、商標法 第50条、すなわち「不使用取消審判」と照らし合わせると、不思議な話ですよね?

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いずれ取り消しになることが目に見えるのに、使用しない指定商品を入れるか?

なんかモヤモヤして少し悔しかったので、薬事と商標の双方向から、個人的な結論が出るまで考えてみました。

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医療機器の指定をいずれ取るのなら画像に赤字で書いたコースが考えられます。もしそうなのであれば、個々の企業のそのときの状況にもよるので一概には言えませんが、もう許認可が下りてもおかしくないくらい整備されている状況なら最速で、社内で責任者資格を誰かが取って、資格者証の登録番号を添えた上で業許可申請をして許可が下りるまでを3年以内に収めることは可能です。

ここで、先ほど載せた、実際の製品の画像を見て考えてみました。

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アプリはインストール先のデバイスに、薬事申請の審査項目である正確性や信頼性などが左右されるからおそらく医療機器指定は取れず、デバイスの正確性や数値の信頼性に関しては、製造の段階で確認できるから医療機器指定が取れる?という結論になりました。

こうであれば、計測機器と医療機器の区分が、どちらも不使用取消審判の対象にならずに済みます。

ただし、こんな器用な戦略が薬事申請の面からみて大丈夫なの?と聞かれたら、個人的に確固たる答えは出せないです。

9.ブランディングができない医薬品の分類がある?

よく「バカは風邪をひかない」と言いますが、人間なら誰だって風邪くらいひくと思います。

また、冷たいものと温かいものを同時に食べてしまい、それが引き金となって、お腹をこわすことだってあるわけです。

例えば、そんな感じで具合を悪くして病院に行ったとします。

処方せんに書かれている薬の名前をみると、カタカナが並んだ名前が多いと思います。

「もう少しわかりやすい名前の方がいい」と感じたことがある方もいらっしゃるかも知れません。

なんであんなに難しそうな名前なのでしょうか?

…実は、厚生労働省から統一ルールに則って製品の名称を付与してほしい旨のお達しが来ているために、カタカナが多くて長い名称になっている場合があります。

どんなお達しかといいますと…

製薬会社(特にジェネリック医薬品に携わっている企業)勤務の方はわかると思いますが「薬食審査発 第0922001号『医療用後発医薬品の承認申請にあたっての販売名の命名に関する留意事項について』」です。

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じゃあ、医療用後発医薬品の名称全体をまるっと商標登録できそうにないなら、会社によって異なる「会社名を表す屋号」のみなら商標権を取得できる?

製薬各社がどのような屋号を使用しているか、調べてみました。

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例を挙げると、このような感じです。

ここで、ジェネリック医薬品の取り扱いが多い企業の一つである「日医工株式会社」の屋号「日医工」を例に挙げて、実際に商標登録されているか調べてみました。

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こんな感じで商標登録されていました。

医療用後発医薬品の名称に関しては、製品名全体をまるっと商標登録できないとしても、こうやって部分的に商標登録できる要素はあるということがわかります。

10.「医薬×立体商標」ってあるの?

みなさん、こんな経験ありませんか?

例えば、何らかの理由(高血圧で…とか、歯医者で親知らずを抜き時間が経つにつれて痛みが増して…でも良いです。)で薬を飲んでいたとします。
その薬の服用期間中に咳が出てきて、病院に行ったとします。

診察を受けて原因がわかり、お医者さんが薬を処方しようとすると、その前に必ず、このように聞いてくると思います。

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「何か他にお薬飲んでいますか?」

飲み合わせによっては本来の薬の効き目が必要以上に増強、あるいは減弱するのは想像できると思います。

そのため、お医者さんは必ず、ほかの薬を服用しているか聞いてきます。

でもみなさん、普段から「おくすり手帳」なんて常に持ち歩いています?

もともと持病があったりして定期的に薬を飲む習慣がある方なら、ひょっとすると持ち歩いているかも知れませんが、腹痛なんかで一時的に薬を服用しているときにお薬手帳なんて持ち歩いてないことが多いと思います。

医薬品の名前って、カタカナ多いですよね。。

漢方薬でも処方されない限り、大抵はカタカナ多めで長いですよね。。

…自分の服用している薬の名称なんて、覚えていないことが多いと思います。

それでも、お医者さんの前ですし、相互作用が症状として悪影響を及ぼすと怖いので、必死こいて伝えようとするのですよ。。

それで、こうなるわけです。

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わかる情報を全て話して「ここまで言えばわかるだろう」と思っていても、実は意外と特定するのが難しいです。

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さすがに1万種類くらいまで絞れたからって、患者さんに対して一つ一つ薬のデータベースなどで写真を示してどれのことを指すか聞く、なんてことはしないと思います。(そんなことしたら、該当する医薬品の情報にたどり着くまで、何時間かかるんだ?ということになりますね。)

そこで、次の画像の赤い丸で囲んだ部分に注目した製薬会社さんがいます。

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カタカナ多めで長い名称よりも、視覚情報の方が印象に残りやすく、覚えやすい?

ただ、着色料を使用するような形で色をつけた場合、色の「濃い」・「薄い」は個人個人で感覚が異なるため、錠剤の形状を変えることで特徴の一つにしようと決めて、実際に製品化に結びつけた例があります。

錠剤の断面は「円形」または「楕円形」というこの一般的な感覚、実は徐々に例外が出てきています。

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そもそも錠剤は、どのような原理で製造されているのでしょうか?

これについては、日本薬局方の「製剤総則」に書かれています。

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基本的に錠剤は、臼と杵を用いた餅つきのような原理で製造されています。

異形錠の場合、臼と杵の形状を変えることで、製品である錠剤の形状を変えることができます。

…「ということは、立体商標または意匠として権利化されている部分がある?」と感じたわけです。

前出の例について調べてみたら、錠剤を製造する打錠機の杵について、製剤に触れる部分が、部分意匠として登録されていました。

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まだ調べていませんが、他の製品についても調べたら、おそらく立体商標として権利化されている部分がある例も出てくると考えています。

11.まとめ:一体何が言いたかったのか?

気づいたらこの記事、ものすごい超大作になっていました。。

この超大作記事で、私は一体何が言いたかったかといいますと、次に示す通りでございます。

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言葉足らずの部分もあったと思いますが、特に普段、医薬をあまり扱わない方にも「なんかおもしろそう!」と感じていただけた部分がある記事であったことを、筆者としては願っております。

12.最後に:私が中身のある情報発信にチャレンジする裏側

地方在住で、知財の仕事から4年くらいはなれてしまった私にとって、みなさんとの接点って、SNSが多いのかな?という気がしています。

Twitterに関しては公開アカウントにしていますが、みなさんには、私がどう映っていますかね…?

みなさんには、みなさんなりの「ものの見方」があると思います。私にはそれを否定する権利なんてありません。一方で、私には私なりのものの見方があって、よほどのことがない限り、それは誰からも否定されてはいけないと思います。

私が中身のある情報発信にチャレンジする裏側には、大前提として、前述の通り「Give & Takeの考え方を大事にしたい」という思いがあります。

その思いを大前提にして、この項目を書きます。

これまで、さまざまな立場の先生に、その先生なりの言葉をかけていただきました。私がこの記事の執筆に至った考え方に一番近いのは、このお二人の先生の、この言葉です。

このお二人の先生のように、発する言葉に対して裏打ちされる実績や成績がある先生の言葉は、(仮に実績や成績が表立ってなくて見えにくかったとしても)実力があるから説得力がありますし、高みを目指したいと素直に思うなら、こういう先生を目指すべきだよな、と心から感じました。

このお二人の先生に限らず、自ら仕事を探しに行く以外にも、クライアントさんがいろいろなご縁で依頼してくださる先生なんかは、そう言える先生だと思います。

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植物に水をかけるとき、土にかけずに葉だけにかけたら、いずれ水分過多で腐ったり枯れたりするのは容易に想像できると思います。

また、ダイレクトに吸収できる水分が、葉から滴る水分だけになってしまう根は、水分不足で土があまり湿らず、カラカラになってしまった土が風で飛んでいく可能性も十分に考えられると思います。

会社の構造も同じようなことが言えるのでは?と考えています。

「人を雇う会社」っていう大前提の部分が時代変化や法改正に対応せず、本来必置義務があるはずのものをお金がないからってことで置かないで、誰かから突かれたら(陰で)「法律が悪い」と言い張るのであれば、いくら表向きは薬事的なことがセーフだからって「製薬会社です」とアピールしても単純に犠牲者を増やすだけで、(私が該当するかは別として)実力のある人はどんどん転職すると思います。

今まで会社が長く続いたのはただの運であって、犠牲になる人間が出る形でしか会社が「最低限の当たり前」の方向に向けないのであれば、崩れるのが目に見えて迫っているのでは?という気がしていますね。

…私が最初に入った富山県の某製薬会社が、実はそんな感じでした。

何があったかは多すぎて世間の常識から外れているものがほとんどなので、詳細は伏せますが、その被害を食らった形です。

そんな形で岩手県に戻され、加えて紆余曲折を経る羽目になり、現在に至ります。

でも今、この立ち位置に立って、すごく思うことがあるのですよ。

「会社です。従業員なんだから、言うこと聞きなさい。」と権力だけ振りかざす形で言われても「会社を経営する上での当たり前に大前提として不備がある」会社って、説得力がないから、そのうち悪い実績が付いて回り、世間からの信用がいずれなくなるのが目に見える、と。

もし私がこの先、自分をもち直して別の場所で頑張り、いつかそれが見つかって助けを求められたとしても、私は応じるつもりはありません。(そもそも、私が犠牲になり、仕事の都合で衛生管理者の資格をもっていた父につつかれる形で、法定必置義務のあるはずのものがないという社会的な不備が次々と明らかになったにも関わらず、謝罪すらなかったのですから。)

そういう人たちには良い顔なんてせず「残念でした」と言い放てば良いのです。

今まで「どんな人にも嫌な顔せず優しくしなさい」と教えられてきましたが、そんな必要はカケラもなくて、真に助けを求める人たちだけ助ければ良いのだと。

人の良さに漬け込み、自分のことしか考えないで、自分の思い通りにならないと暴れるような大人は助ける必要なんてありません。

そんなメンタル面の強さも、ここ1年強で知財クラのみなさんから学び、得ましたね。

知財に関する知識だけでなく、メンタル面も含めた「もっと視野を広くもちなさい、居場所は必ずあるから。」ということを、そんなみなさんから教わった気がします。

「自分が助けてもらった(=Takeした)のだから、何か自分も良い意味で知財関係の話題を持ち込んで良い流れを作りたい(=Giveしたい)」という思いが、淡路町ゼミや知財実務オンライン、そして、今回のこの記事の執筆です。

13.リンク

(1)YouTube:2021.12.20 知財実務オンライン「第4回ライブライトニングトーク」

(2−1)知財系 Advent Calendar 2021

(2−2)知財系 もっと Advent Calendar 2021

(2−3)知財系 もっともっと Advent Calendar 2021

今回の記事は以上になります。

最後まで読んでくださったみなさま、こんな自由奔放な超大作にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

明日(2021.12.20)はちざたまご先生!

今回はどんな世界観の記事で私たちを楽しませてくださるのでしょうか?

ちざたまご先生、岩手県からバトン繋ぎます!よろしくお願いいたします!



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