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賢者のセックス

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小説「賢者のセックス 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと」一覧
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賢者のセックス / 第14章 一等星と六等星 / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

大磯  四月も四週目に入った平日の午後、僕たちは品川駅の一二番ホームで東海道線の熱海行き各駅停車に乗った。大磯駅まで一時間。僕たちは隣り合って座っていたけれど、会話はほとんどなかった。かといって二人ともスマートフォンを見たりすることもなく、音楽も聞かなかった。ただただ、僕たちは無言で隣り合って座っていた。時折触れるソラちゃんの肩から体温が伝わってくるたびに、僕のみぞおち辺りで何かが蠢いた。  大磯駅で降りてタクシーに乗って一〇分後。僕たちは大磯プリンスホテルのロビーにいた

賢者のセックス / 第13章 精液と神社 / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

憑坐  ソラちゃんは小説の構想を思いつくと、食事の時に僕に説明してくれるのが常だ。僕に説明しながら、頭の中を整理しているようでもあった。例えばこんな風に。 「今悩んでるのはね、君と私、もちろん小説の中では別のキャラになるんだけど、私たちそれぞれの位置づけね。正常位でしてる時に出てくる水天宮の御祭神が天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)だったでしょ。水と子供の守り神の。あれが気になってるんだよ」 「どんな風に気になるの?」 「街は私たちの夢を見ている。その夢の中で私たちは

賢者のセックス / 第12章 尊厳と意味論 / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

ベント(性癖、あるいは「変態」)  シャワーを浴びてリビングルームに戻った僕たちは、実験の結果について真剣に話し合った。ソラちゃんの表情はバリキャリ魔女のものに戻っていた。僕はそれが嬉しかった。いつものソラちゃんだ。そのバリキャリ魔女が首をひねって考え込んでいる。 「今回の実験結果は解釈が難しいね。やはり君一人では風景を見ることは出来ない、と言えるんだろうか?」 「少なくとも一人でしている時には難しいと思う」 「じゃあ、私が一緒に自慰をしていた時は? あれは物理的接触は音