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ブログが島なら、noteは夏祭りの屋台だと思う

noteを続けて5ヶ月ちかく。noteを使ったことない友人知人から、「noteとブログって何が違うの?」とぽつぽつ聞かれるようになりました。


まず最初に思うのは、「そもそもそんな質問が出てくること自体がすごいな」ということ。まだnoteのアカウントも持ってない層からも、noteは「ブログの一種」じゃなくて、別のなにものかだと認識されている。

私も確かにnoteをはじめたときは「ブログ始めました」じゃなくて「note始めました」って言ったし、SNSのタイムラインにnote.comドメインの記事が流れてきたりすると、なんとなく親近感を覚えたりもする。

なんなんでしょうね、この感覚。


「noteとブログの機能の違い一覧」みたいな情報は、調べるといろいろ出てきます。私もアカウントを開設する前にそんな記事をいくつか読んでみたりもしました。

でも、5ヶ月ちかくnote内を徘徊したり、記事を書いてみたり、課金してみたり、他のユーザーと交流してみりした実感としては、そういう「機能の差」を列挙するより、もっと「思想の違い」とか「文化の違い」みたいな話から始めた方が、両者の違いをつかめる気がしています。


ちなみにこれは、あくまでもいち初心者の感想です。もっと歴が長い人や、サークル・有料マガジンといった様々な機能を使いこなしている人、それからnote pro(法人向け有料サービス)のユーザーには、また違う景色が見えているかもしれません。

また、私はブログに詳しいわけでもありません。「それはブログだって一緒だよ!」と思われる箇所があれば、どうか笑って見逃してください。

「ブログにしようかな?noteにしようかな?」と迷っている方は、あくまでも、ほんの5ヶ月だけ先を行っているnoteユーザーの話だと思って聞いてもらえれば嬉しいです。

それから、この記事は5900文字あります。そんなに読みたくないからさっさと結論だけ教えてよ、というかたは、以下の目次から「まとめ」にジャンプしてください。


noteは街?

中の人によると、「noteは街」だそうです。今週開催される「クリエイターフェス」でも、「noteが目指す創作の街」というセッションが用意されています。

でも今のところ私の目には、noteは「屋台が立ち並ぶ夏祭り会場」に見えています。


こだわりの「自分だけの島」を作りたいならブログ

ブログってどこか、「自分だけの島を作る」ことに似ていませんか?自分で好きなブログ名をつけて、デザインや構造に細かくこだわれることろとか。

最初は誰も、島の存在に気づいてくれないかもしれない。でも、いざ人が来るようになったら、訪問者にめいっぱい島の中を巡回してもらえる。

どこをどれだけ巡ってもらえるかは、それまでに自分が張り巡らせた橋や道次第。だから、「人気記事」や「関連記事」みたいなプラグインを埋め込んだり、「カテゴリ」区分を工夫したりと、せっせと工事にはげむ人が多いと思います。


「自分のページ」に囲い込むのではなく、プラットフォーム全体で人を循環させるのがnote

一方noteって、そういう「囲い込み」やデザイン面での差別化ができないんですよね。

自分が持てるのは、統一規格のテント。文字の色やフォント、背景色などのカスタマイズはできず、ましてソースコードやHTML、CSSなんて概念は存在しません。周囲に並ぶ他のテントと同じものをパパパっと建てたら、自分の名前(ニックネーム)とアイコン、短いプロフィールを掲げて営業スタートです。

そして、いざ記事を投稿すると、一番下には「他の人の記事」が表示されます。自分自身の記事も表示はされるのですが、その枠は3つほど。

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いっぽう、「こちらもおすすめ」枠で表示される他のクリエイターの記事は、12個もあります。

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これってちょっと、お祭りのテントっぽくないですか?私のテントでじゃがバターを注文した人は、続けて私の焼きモロコシも買ってくれるかもしれないけど、隣のたこ焼き屋さんや向かいの金魚すくいのノボリを見て、そっちに行ってしまうかもしれない。

でもそれは裏をかえせば、別の誰かのページにも、私の記事が表示される可能性があるということ。人の往来が激しいこのお祭り会場においては、ついさっきテントを出したばかりで固定客ゼロの人でも、ふらっと見にきてもらえるチャンスがある。

そうやって初期の段階でも色んな人に訪問してもらえたことが、私自身noteを続ける大きなモチベーションになりました。


もう一つ、関連する話なのですが、ブログでいう「カテゴリ」にあたるものがnoteにはありません。

複数記事をまとめる「マガジン」は存在するのですが、これは「自分の記事を分類する」カテゴリとは少し意味合いが異なります。というのも、他のクリエイターが書いた記事も自分のマガジンに勝手にまとめちゃえるし、逆に自分の記事が誰かのマガジンに追加されてたなんてことも。

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もちろん、自分の記事だけでマガジンを作ることもできます。実際、渾身の記事をまとめて「有料マガジン」として販売している方もたくさんいます。でも、一般ブログサービスと比べると、「自分のページ、自分のコンテンツ」と「他人のコンテンツ」の境界線がすごくゆるい


noteっていうのはあくまで、訪問者をnote内(あるいは、SNSを含めた広域note文化圏内)で循環させる前提でできているんですよね。「自分のシマに来てくれた人はそのままこのシマにとどまってほしい」という人より、「誰かが私の記事をマガジンに追加してくれたぞ!どんなクリエイターさんなんだろう!」って見に行っちゃう人の方が、多分noteに向いてる


クリエイター同士の「交流」を促す機能が充実している

マガジンの話とも関連するのですが、Noteは「他のクリエイターさんとの交流」手段が充実している気がしています。

まず、「フォロー」「コメント」、イイネにあたる「スキ」、コミュニティである「サークル」といった、SNSの標準装備。

「はてブやアメブロだってそんな機能はあるよ?」と思われるかもしれませんが、単純に機能として存在しているかどうかだけの話ではなく。「画面の目立つところに何が置かれているか」って、そのサービスの哲学がもろに反映されているはずですよね。

その点noteは、スクロールしても「スキ」ボタンがついてきたり、「スキ」や「フォロー」をしてくれた人に「リアクション」を返せるようになっていたりと、「SNS的な機能」にかなり力を入れているように見えます。マイページで、「自分の過去記事」と並んで「自分がスキした記事」が表示される(※設定によります)というのもなかなかすごい。

それから、投げ銭である「サポート」。noteの特徴を調べている方なら、「広告モデルではなく、直接課金・コンテンツ販売モデルである」ことをご存知の方が多いと思うのですが、実は記事を無料公開している人にも100円とか500円とか投げ銭ができちゃう。

そうやってサポートをもらった時はもちろん、誰かが私の記事を自分のnote内で紹介してくれたり、マガジンに追加してくれたり、SNSでシェアしてくれたとき*なんかにも通知がくるようになっています。(*SNSアカウントとnoteとの連携が必要)

noteにはさらに「みんなのフォトギャラリー」というものがあり、記事の顔になる「トップ画」に、他のクリエイターさんが提供してくれた写真やイラストを使うこともできちゃう。

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たとえばこの記事で使っているトップ画の下には「Photo by sitarayuu」というリンクがあるかと思います。ここをクリックすると、屋台のイラストを提供してくれた方のページに飛ぶはずです。

ここでもやっぱり「自分のコンテンツ」と「他人のコンテンツ」の境界線がふわっとしてるんですよね。(※もちろん、クリエイターさんが自分の意思でギャラリーに画像を載せた場合に限ります)


冒頭でもちょっと「たまたま見つけた記事がnoteユーザーのものだとわかると、なんとなく親近感がわく」みたいな話をしましたが、多分そのベースとなっているのは、こうしたUI設計やプロダクト思想からにじみでる「交流重視のSNS的な雰囲気」なんじゃないかなーと思います。


 「ランキング」じゃなくて「編集部のおすすめ」

それから、ものすごく象徴的だなと思うのが、「編集部のおすすめ」という制度。

noteでは、数字による「アクセスランキング」のようなものはありません。その代わりに、「編集部」が実際に読んで「良コンテンツ」と判断したものが広く拡散される仕組みになっています。

実際に「おすすめ」に載った記事を読みに行くと、フォロワーも決して多いわけじゃない、つまりは私と同じような「普通の無名人」が書いた記事がかなり多かったりします。「スキ」の数にしても、「おすすめ」にピックアップされた時点で10件前後しかない、なんてこともざらです。

「100件以上スキがついたものだけ抽出して、そこから探す」みたいにした方がオペレーション的には絶対楽なはずなのに、そこであえて手間をかける。


PVさえ稼げればいいという発想の煽りタイトルや釣り記事じゃなくて、読む価値のあるコンテンツを優遇する。検索ボリュームの多い人気トピックでなくても、日の目をみるべきものを主観的に発掘していく。そんな明確な意思を感じます。

一方で、自分で確認できる「ダッシュボード」の中身はとてもシンプルで、「PV数」と「スキ数」のみ(※無料ユーザーの場合)。アクセス解析ツールを貼ることもできないので、読者がどこから来てくれてるのか、どのくらい滞在してくれているのか、知ることはできません。

日ごろ「数字」「アルゴリズム」「効果計測」の世界で仕事をしている私にとって、「主観」や「人力」の存在感が大きいnoteの世界観はかなり新鮮でした。

出版社につとめる友人にそんな話をしたところ、「noteは出版社出身の人が作っているからね」というコメントがかえってきました。

そう、noteのCEOは、「もしドラ」こと『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、それから『スタバではグランデを買え!』などの大ヒット作を手掛けた編集者の方なのです。

noteの世界観の背景にあるものを、「ウェブ文化と出版文化の融合」と説明するとしっくりくる気がしています。


ユーザーによる私設企画

そういった「交流」文化や「良コンテンツ発掘」文化が反映されてのことなのか、ユーザーによる「私設コンテスト」や「私設企画」のようなものもよく見かけます。

おそらく一番有名なのが、岸田奈美さんによる「キナリ杯」。

給付金がきっかけで生まれたこの私設コンテストには4000件以上の応募作があつまり、岸田さんはそれを一人で一つ一つ読んで50作以上の受賞作品を選び出したそうです。

それから、「Twitterでいいねしてくれた人全員のnoteを読みに行きます企画」があったり、

私設コミュニティがあったり、

私は、今日から開催される #noteフェス の「サポーター」をやっているのですが、そのサポーターコミュニティでも私設企画が生まれていたり。

そうやって私設コンテストや私設企画が盛り上がることを、中の人もよしとしている雰囲気がある。改めて、面白い空間だなと思います。


読者を絞り込む手段としての、有料コンテンツ

私はいわゆる「クソリプ」というものをもらったものもなければ炎上したこともない、というかそもそもフォロワー自体少ない、SNSとはいたって平和な距離感を保っている人間なのですが、SNS空間で目立っている人や嫌な思いをしたことがある人たちがこう言っているのを時々目にします。

noteは治安がいい」と。

noteの雰囲気によるものもあるのでしょうが、彼らいわく「コンテンツの有料販売」という仕組みもその「治安の良さ」に一役買っているのだとか。

つまり、「役に立つノウハウ!」みたいな明らかに価値があるコンテンツだけでなく、「プライベートな話」だったり「誤解されるかも知れない話」など、「アンチに見られたくない話」や「大勢の人の目にさらしたくない話」が有料で販売されていたりする。

「稼ぐ」ためというより「コンテンツに部分的に鍵をかける」ために、価格という形で少しだけハードルをあげる。そういう方も一定数いるようなのです。

私はそんな対応が必要なフェーズにはいないのですが、面白い使い方だなと思ったのでご参考までにご紹介しました。


まとめ

ブログ一般を理解するためのキーワードが「数字(特にPVやアクセス解析)」「アルゴリズム」「カスタマイズ性」だとすると、noteをあらわす言葉は「交流」「人(主観)とアルゴリズムのバランス」「文化圏」といったところでしょうか。

その差は収益化モデルの違いにもあらわれていて、ブログが「PVに基づく広告収入」がメインなのに対し、noteは「ファンからの直接課金」。

言い換えると、SEOテクニックに全振りしたコンテンツや、炎上狙いの記事、釣りタイトルなどより、「いい話」や「熱のこもった記事」、「その人らしさがにじみ出ているエッセイ」に注目が集まるように設計されている世界です。


参考までに、最近バズったnote発の記事をいくつか。


もちろん、こういう「いい話」や「深い話」、「熱い語り」が拡散される背景としてはSNSの力が大きく、noteだけの話だと言うつもりはありません。また上記記事が拡散された経緯も詳しくは知らないので、的外れだったらすみません。

でも、どんなキャンプファイヤーでも最初の火付け役が必要なわけで。noteの「おすすめ発掘」文化や「私設企画」文化の存在が、こういった記事が「SNSインフルエンサー」の目に留まるための着火剤として、一役も二役も買っているように感じています。


そんなnoteで「フェス」をやるそうです

私がもともと「お祭り会場」だと思っていたnoteで、さらに「お祭り」をやるそうです。その名も「note CREATOR FESTIVAL」。本日9月2日(水)から、5日(土)まで。

感染対策のため、キャパ200人の会場に、観覧者はわずか10名。

そのためほとんどの視聴者はオンライン参加になるのですが、私は「フェスサポーター」という形で参加させてもらう関係で、会場に招待いただけることになりました。

会場に来られない人の分まで存分に見届けてこようと思っています。参加されるかた、一緒に楽しみましょう。

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