1日は3549字

2019.12.28

1時半くらいに荷物詰めが終わった。私の家はみんな早寝なので、どの部屋ももう真っ暗だった。早く寝なきゃと思ったけど、なかなか寝れなくて、2時過ぎまで本を読んでいた記憶はあるが、いつの間にか寝ていたのだろう、目覚ましが鳴って起きた。6時半だ。寒くて眠たかったけど、頑張って起きた。

8時1分の電車に乗って名古屋駅に向かう。
空いていてよかった。席に座って本の続きを読む。12月26日に頂いた『食用花の歴史』(原書房)だ。気になった箇所にぺたぺたと付箋を貼る。松阪あたりまで行くと、窓から入ってくる太陽が明るすぎて、本が読みにくくなった。駅に止まるたびに、ドアから冷たい空気が入ってくる。全然、本に集中出来ない。津駅あたりで人が多くなった。睡眠不足と乗り物酔いで少しだけ気持ちが悪い。

そんなことを思いながら揺られていると、名古屋に着いた。近鉄名古屋駅から名古屋市営東山線に乗り換え「coffee Kajita」へ向かう。1時間前に着いたので、近くの公園に寄る。根元が太く3つに分かれていて、とても登りやすそうな木があった。木の周りをぐるっと一周したら、「 危ないので枝の上には登らないで下さい」という品のない立て札を見つけた。座ったら気持ち良さそうな木だったのに。木を眺めていたらカラスが枝に止まった。カラスからの一瞥をもらい、大人しく隣のベンチに座り本を読む。キャリーバックとリュックサックを背負った女がさびれた公園で本を読んでいる姿は子どもには怖かったのだろうか、飛んできたサッカーボールをなかなか取りに来ない。30分くらいしたら誰もいなくなった。静かだった。寒くなってきたので本を閉じてお店に向かう。お店の前には人が並んでいた。少し待ってお店に入れた。コーヒーのいい匂い。ガラスケースのケーキも上品に照らされ美しかった。ドリップ6個入り×2袋とナッツ、カフェオレベースを買って、来た道を戻り一社駅から東山公園駅へ向かう。

東山公園駅に着くと周りはすっかり東山動物園ムードだった。駅内の壁にはキリンやライオンの絵が描いてあったように思う。複数の家族で来たと思われる集団は実ににぎやかだった。その横をそそくさとすり抜け「ON READING」という書店に向かう。行き道に「美術品の相談室」と書かれたお店があって気になった。「鑑定・評価・買取など、なんでもご相談ください。」と書いてあったので中をチラリとのぞいたが閉まっていた。「ON READING」は建物の2階にあった。中に入ると誰もおらず、奥からゆたゆたと女の人が出てきた。華奢でニットが良く似合う人だった。まずは本棚を観察。よく知っている本もあれば、最近出版された新しい本まで揃えられていて、わくわくした。本の高さがまちまちで、本たちが背比べしているようで可愛かった。
白い壁によくわからない絵が描いてあったり、ヘッドホンがかかっていたりして面白かった。天気が良かったせいかもしれないが、光の多い書店だなと思った。「写真を撮ってもよいですか?」と聞くと「雰囲気程度ならどうぞ」と言われたので、少し撮らせてもらった。阿久津さんの『読書の日記』(NUMABOOKS)も島田さんの『明日から出版社』(晶文社)や『古くてあたらしい仕事』(新潮社)も置いてあって嬉しくなった。ブラウジングしてたら泡坂妻夫さんの『奇術書』(作品社)を見つけたので、それを買って店を出た。

先程の「美術品の相談室」の横を通り過ぎ、東山公園駅へ。名古屋駅に戻る。名古屋駅で次の電車を探していたら、小・中学校が一緒のKから突然LINEが来た。「今、名古屋駅おる?笑」わぁ、やられた。どこだ。見られてたのか。「いるよー。どこー?」とか言いながらなんやかんやで合流して一緒に遅めのお昼ご飯を食べた。元気だったかーとか、最近なにしてるのーとか、他愛もない話を1時間くらいして解散した。Kは伊勢に向かい、私はあま市に向かった。

本日の本命、あま市美和図書館。15時30分ごろ着いた。駅からは2回くらい角を曲がり、後はひたすら歩くだけ。方向音痴の私でも迷わずに行けた。
行ったら千邑先生が出迎えてくれた。先生は「本当に来ちゃうんだね〜びっくりだよ〜!」なんて言いながら終始笑っていた。「coffee Kajita」で買ったコーヒーとナッツを渡す。みんなに挨拶をして事務室にも通してもらった。お茶とお菓子を用意してくださり、恐縮だった。「遠いところからありがとうね」なんて感謝までされて、とんでもないと思った。2019年最後の開館日。4月に先生に出会って「また来てね〜」なんて言われたら、行くっきゃないでしょ。授業終わりに話してくれた、元気な司書さんにもお会いできて嬉しかった。事務室では、原書房の成瀬さんの話や岡野先生の話、手品の話や就職の話なんかをした。なんかあなたは営業の人みたいだねと言われた。最近そんなことをよく言われるせいで自分でもそんな気がしてきた。みんなの想像が私を作っているみたいでおかしかった。全然そんなんじゃないのに。私はただ自分の目で見たいから、ただその人に会いたいからそこへ行くだけ。そして結果としてそれがいい方向に転んでるだけ。今回の訪問も良い方向に転びそうだ。

そういえば最近色々な人の前で手品の話をする。これは自分の中にある曖昧だった手品の輪郭をなぞるような作業だ、と思う。曖昧なものは曖昧な形でしか相手に伝わらない。だから恥を承知で言葉にする。なかなか上手く伝えられない。上手く伝えようとしているからかもしれない。長い時間をかけて曖昧なものを整理しなければいけない。

誰かが手品は絵画に似ていると言った。説明されなければわからないと。きっと芸術は知識がないと本当の意味で楽しめない。でもだからといって全て説明してしまうのばどうなんだろう。私にはわからない。手品をどこまで説明すべきなのか。種明かしをするのも現象の説明をするのも興醒めだ。手品師の生い立ちを話したら面白いのだろうか。努力量を話したら感心するのだろうか。そもそも手品師はそんなことを望んでいるのだろうか。芸術鑑賞は難しいものだ。

話を図書館に戻そう。話が一通り終わると図書館の中を見て回った。和歌、短歌が2棚分あった。自宅にこの本棚が欲しいと思った。好きな作家さんがたくさんいてしばらく眺めた。館内の椅子も机も低くてゆったりしていた。入り口の近くに点字・録音資料コーナーがあり、これは優しいなと思った。また、ティーンズコーナーと書かれたあま市の中学生のコーナーもあった。自分のオススメしたい本を、市の図書館に置いてもらえるのは嬉しいかもしれない。中・高校の手の込んだPOPは勉強になった。辞書コーナーに『書評大全』(三省堂)があったのでぺらぺらと読んだ。大学の図書館にもリクエストしようかな。面白い。うん、高いけれど自分で買ってもいいのかもしれない。迷う。18,150円。うーん、なかなかポチれない。結局欲しいものリストに追加だけだった。そんなこんなであっという間に時間が過ぎ、閉館10前の音楽が。みんなぞろぞろと図書館から出て行く。私もお礼を言い外に出る。館内を囲むようなイルミネーションが綺麗だった。中・高校生のカップルと犬の散歩をしている人が多かった。

細い三日月を背に、木田駅に向かう。次に行くのは土橋駅。須ヶ口で乗り換えて知立駅へ。知立駅の電車に乗ってびっくりしたのは車内に百合の匂いがしたことだ。思わず見渡したけど、誰も百合なんて持っていなかった。不思議だ。しばらくすると鼻が慣れたのかしなくなった。左斜め前に4人組の女子高生。1人が私の方をじっと見ている。なんなんだ...と思いながら、私も見たら笑いながら突然手を振ってきた。慌てて笑顔を作り手を振り返す。周りの子がこちらを見ながら「だれー?知り合い?」と尋ねている。「ううんー、知らないー。」「えーw」「なんで手を振ったの!?」「いやだってー、何回も目が合ったんだもんー。」またその子と目が合う。笑うしかない。いったいなんなんだ。不思議な子だ。わけのわからない出来があってからゆらゆら15分くらい揺られ土橋に到着。

友達から電話がかかってきた。「着いたよ!」迎えにきてくれたのだ。ありがたい。そして幼なじみ3人が住んでいるシェアハウスへお邪魔した。夜は盛り上がった。パテシエの子と料理人だった子が今日の疲れを飛ばしてくれるような手料理を振る舞ってくれた。幸せだった。順番にお風呂に入って、力尽きるまで話した。トヨタに勤めている子とパテシエの子2人が寝てしまったので、料理人の子とスマブラをした。4時くらいまで戦っていたけど、2人とも力尽きて適当に床で寝た。楽しい1日だった。


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