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悪質な広告行為への分析姿勢が必要

消費者に対する「広告」での悪質行為について,景品表示法に基づく違法性の論点からまとめています.

同時に「消費者側も分析姿勢を持って,悪質広告に騙されないでください」という願いも込めています.

本題とおまけの2段構成です.
本題:景品表示法の3分類について説明
おまけ:最近話題の侍エンジニア塾が出した広告


本題

主張点は「変な広告はやめましょう」と「変な広告かどうか見極める分析力を持ちましょう」の2つです.
(広告によっては分析のしようもありませんが……)

理由は皆さんご存知の通りで,広告を出す側は「変な広告を出すと違法」で,広告を見る側は「変な広告を警戒しないと騙される」ことにあります.

どちらも大切だということを,景品表示法違反の3分類[1]から説明します.
詳しくは参考文献を直接ご覧ください.

[1]消費者庁表示対策課,"景品表示法における違反事例集",2016,http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/160225premiums_1.pdf

A.優良誤認表示
B.有利誤認表示
C.誤認されるおそれのある表示

A.優良誤認表示

①合理的な選択の阻害

景品表示法の第5条(第4条第1項)第1号に関する違反条件は,参考文献より次のように記載されています.

事業者が自己の供給する商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示は、優良誤認表示*として禁止されている。

*「良いものですよ」と訴える表示をしているにもかかわらず、実際には表示されているほど良いものではない場合

実例として,参考文献からこちらを紹介します.

平成26年5月20日措置命令【教育サービス】(前記41頁参照)
対象商品又は役務:学校教育の補習教育及び学習指導に係る役務
表示媒体:チラシ

表示内容
あたかも、対象役務に係る学習塾の講師の98パーセントが国公立大学・大学院出身者であるかのように示す表示

実際
対象役務に係る学習塾の講師のうち国公立大学・大学院出身者が占める割合は、約14パーセントにすぎないものであった。

例のチラシには「国公立大出身98%!精鋭講師陣が皆さんを指導!」と記載されていました.

違反事例としては凄くわかりやすい誇大広告です.実際には全体の14%しか雇っていない「国公立大・院出身者」を,あたかも全体の98%であるかのように広告しています.

こういう嘘をつくことで,「国公立大学を出ているような講師が良い」と考えている顧客を引き寄せることができます.

広告を見ている側からすると分析のしようがない(実際に受けるまでわからない?)ので,かなり悪質と言えます.


②裏付けが認められない効果性能

また,景品表示法の第7条(第4条)第2項・第5条(第4条第1項)第1号に関する違反条件は,参考文献より次のように記載されています.

消費者庁長官等は、措置命令に関し、例えばダイエット効果を標ぼうする商品や器具等の効果や性能に関する表示が優良誤認表示に該当するか否かを判断するため必要があるときは、当該表示を行った事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、消費者庁長官等が当該表示について実際のものとは異なるものであること等の具体的な立証を行うまでもなく、当該表示は優良誤認表示とみなされる。

実例として,参考文献よりこちらを紹介します.

平成27年2月17日措置命令【食品】(前記17頁参照)対象商品又は役務:痩身効果を標ぼうする食品
表示媒体:ラジオ放送

■今日はなんと、食べ過ぎたと思ったその場で飲んで、お茶碗およそ3杯分のご飯の炭水化物をカット。余分なカロリーが余分な脂肪になる前にすっきりほとんどなかった事にして、1か月でマイナス10キロ以上を達成した方もいらっしゃるダイエットサプリを御紹介いたします。

■大注目のダイエット成分が、ご飯やパンなどに含まれる炭水化物を、なんと4粒で、1,000キロカロリーもカット。

■1,000キロカロリーを消費しようとすると、ウォーキングならおよそ6.5時間、水泳なら25メートルプールを150回も往復する運動量になるんですよ。

油っこいものもお好きなだけ、どうぞ召し上がってください。様々な機関で食事で摂り過ぎたアブラの吸収を抑えると発表されている成分が、アブラを徹底ガード。さらに、ダイエット素材が、既に体についてしまった余分なアブラもすっきりとさせて、スリムを徹底的にサポートしてくれるんです。

■できるだけ長く、油っこいものも甘いものも気にせず思いっきり食べたい
ですよ。

カロリー制限も激しい運動も無しで、ダイエットが目指せますね。

表示内容
あたかも、対象商品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく容易に著しい痩身効果が得られるかのように示す表示

実際
本法第7条(第4条)第2項の規定に基づき、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出されたが、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった。

ダイエット効果を宣伝するものですが,それらの効果が商品の摂取だけで達成できるかのようなラジオ広告を出していました.

こういう場合は「摂取するだけで効果を得られる根拠」が必要となります.当該企業は要請に従い根拠資料を提出したようですが,合理的な根拠として認められていません.

こちらは消費者側も警戒できる領域です.「なぜそうなるのか?」を示せない主張は基本的に信憑性が低いと判断する姿勢を持ってください.そうすれば騙される確率も下がります.

なぜかと言いますと,もし根拠の有無に関わらず同じ信憑性で扱うならば,例えば「この飴を食べるだけで翌月には10kg痩せます!」なんてことは私にも言えてしまうので,嘘つきに溢れた領域から商品を選択する羽目になります.そんなの博打と変わりませんし,確率が低いと思います.

一方で,合理的な根拠を示せる人だけに領域を狭めると,かなり商品を絞り込めるはずです.「飴を食べると翌月までの間になぜ痩せるの?」「どういう成分がどういうはたらきをするの?」「そもそも痩せたのは本当に飴だけによる効果なの?」などを説明できる商品であるなら,そこで初めて信頼できると言って良いと思います.

※実際には「あたかも合理的に見える根拠」を捏造してきますから,消費者側に知識が求められることでもあります.


B.有利誤認表示

景品表示法の第5条(第4条第1項)第2号に関する違反条件は,参考文献より次のように記載されています.

事業者が自己の供給する商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示は、有利誤認表示*として禁止されている。

*「お得ですよ」と訴える表示をしているにもかかわらず、実際には表示されているほどお得ではない場合

また,有利誤認表示に使われる方法として「二重価格表示」も示されています.

二重価格表示とは、事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(以下「比較対照価格」という。)を併記して表示することである。二重価格表示は、その内容が適正な場合には、一般消費者の適正な商品選択に資する面があるが、比較対照価格の内容について適正な表示が行われていない場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、有利誤認表示に該当する。


事例として,参考文献よりこちらを紹介します.
二重価格表示にあたるかどうかは明記されていませんでしたが,恐らく該当すると思います.

平成26年7月24日措置命令【食品】(前記16頁参照)対象商品又は役務:牛肉、豚肉及び鶏肉
表示媒体:テレビコマーシャル

表示内容
あたかも、特定日の売出しにおいては、対象商品を通常時の販売価格の半額で販売するかのように表示

実際
特定日の売出しにおいて、対象商品の商品パッケージに記載した価格の多くは、通常時の販売価格が一旦引き上げられたものであって、通常時の販売価格の半額ではなかった

当該チラシには「毎月29日は肉の日!!」「牛肉が(当日表示価格より)半額! ※一部商品除く」のような記載がありました.

例えば「いつもは20,000円のところ,なんと今日は半額の10,000円です!」と宣伝して売っている牛肉が,実はいつもは15,000円で売られていたとすると,それは実質的には半額じゃないよねという話です.実質的な半額は7,500円ですよね.


【余談】二重価格表示でない別の例も挙げます.
私が数年前に訪れたスーパーマーケットでは,とある商品の値札に「大特価398円」の紙が貼っつけられていたんですが,紙をペラっとめくってみると通常価格も398円でした.
値段は1円も変わってませんが「今だけ!」という広告によって,比較対象も無いのにあたかもお得であるかのように錯覚させるわけです.


【余談】note有料記事で「今は500円!◯◯日に1000円へ引き上げ!」みたいな将来価格との比較宣伝をする場合は景品表示法違反にご注意ください.消費者庁の見解[2]より,「絶対に将来その価格で販売する」でない場合は不当な二重価格表示を疑われかねません.

[2]消費者庁,"不当な価格表示についての景品表示法上の考え方",2016,http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

イ :将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示

販売当初の段階における需要喚起等を目的に、将来の時点における販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われることがある。

このような二重価格表示については、表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき(実際に販売することのない価格であるときや、ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないときなど)には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。

将来の価格設定は、将来の不確定な需給状況等に応じて変動するものであることから、将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合(需給状況等が変化しても表示価格で販売することとしている場合など)以外において、将来の販売価格を用いた二重価格表示を行うことは、適切でないと考えられる。

詳しくはこちらのほうが詳しいので興味があればどうぞ.


C.誤認される恐れのある表示

景品表示法の第5条(第4条第1項)第3号に関わる違反条件は,参考文献[1]より次のように記載されています.

本法第5条(第4条第1項)第1号又は2号に掲げるもの(優良誤認表示・有利誤認表示)のほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの(指定が告示によることから、「指定告示」と呼ばれる。)も不当な表示として禁止されている。

そのうちの1つが「おとり広告」と呼ばれています.
実例として,参考文献[1]よりこちらを紹介します.

平成26年1月21日措置命令(おとり広告)【食品】(前記15頁参照)対象商品又は役務:愛知県西尾市一色町産のうなぎ及び同うなぎを用いたうなぎ蒲焼
表示媒体:チラシ

表示内容
あたかも、対象商品を販売することができるかのように表示

実際
愛知県西尾市一色町産のうなぎを仕入れておらず、対象商品の全部について取引に応じることができないものであった。

当該チラシには「うなぎ蒲焼店頭実演販売 炭火でじっくり焼き上げます!! 愛知県三河一色産うなぎ蒲焼1本」のような記載がありました.

要するに,愛知県西尾市一色町産のうなぎと書いてあるのに,そんなうなぎは仕入れていないという嘘広告です.実際には別のうなぎを販売していたのでしょうか.

これも消費者側は気をつけようがない領域です.一色産である特別な根拠が示せるなら別ですが,そんなものは無い気がします……


おまけ

侍エンジニア塾というプログラミングスクールでこんな広告が出されていたそうです.

もう広告が無くなってしまったので,10/12時点でのページ情報をスクリーンショットしています(Wayback Machine).

広告の概要は「10/20土曜日までに無料体験レッスンを受けた人だけは,先着20人のみ入塾金が0円ですよ!普段は10万取られる入塾金ですよ!」というものです.

問題は,広告の茶色い部分にある「◯◯日までに~」が頻繁に書き換わっている」ことにあります.

どうも,この値が毎日引き延ばされているようです.

10/12時点でのHTMLには,こういうJavaScriptコードも確認できます.
※インデントはわざと変えています

<p id="appealLabel02">
    <script type="text/javascript">
        addDate(today(),'D', 7);
    </script>
    までに無料体験レッスンを受けた方のみ
</p>

このaddDate関数は,一般のライブラリではないと思いますが,関数名から察するに「今日の日付の一週間後の値」を出すものだと考えられます.

実際,私が10/13にアクセスした際には期限が10/20と表示されました.

こうした広告表示が悪質となるケースは「期限が可変」かつ「長期間繰り返される」場合です.要するに「今週だけ限定!」を毎週やっていたら悪質なのです

本題で述べた中から言うと,この行為は有利誤認表示に該当する恐れがあります.

例えば,良く似た違反例としてキャリアカレッジジャパンの景品表示法違反は挙げられます.

キャリアカレッジジャパンは,とある期間限定割引の宣伝広告として「6/1~6/30まで!」とか「7/1~7/31まで!」といった広告を「平成22年5月25日から平成26年7月31日までのほとんどの期間」において行っていたことから有利誤認表示と認められ,景品表示法違反で措置命令を受けたようです.

今回の侍エンジニア塾の行為はこれと類似するように見受けられます.

これはおまけなので,怪しいですねというだけで話を終わります.

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