かんけいじんこうがなんだ

かんけいじんこうがなんだ〜人口500名。 氷点下の限界集落で挙げた日本一あたたかい結婚式〜


2019年2月9日。挙式当日。雨男雨女の私たちの不安をよそに、雲の切れ間から太陽が顔を覗かせてくれた。

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こんにちは、福岡県出身のなかたくです。

私たちは、今年の2月に富山県南砺市利賀村(なんとしとがむら)にて結婚式を挙げたのですが、このたびその結婚式が(恐縮ながら…)「第8回ふるさとウエディングコンクール(主催:全日本ブライダル協会/ブライダル産業新聞社・後援:総務省/観光庁)」にて「総務大臣賞」(最高賞!)を受賞いたしました。

コンクールのテーマは「ふるさとウェディング/地域の魅力を活かした挙式スタイル」。公式サイトには、

古くから伝わる伝統を再現したものではなく、新しいアイデア・感覚で作り出したものを評価します
ふるさとウエディングコンクール公式サイト

と書いてあり、小生の結婚式を高く評価いただいたことを嬉しく思います。
ということで、本noteでは

・地縁血縁の無い地域でどんな式を挙げたのか
・関係人口について思うこと

についてまとめてみました。(なんで地縁・血縁のない利賀村で結婚式を挙げるのかについては下記noteに書いてます〜)

あ、そもそも「利賀村ってどこやねん」と思われた方へ。衛星写真でみるとわかりやすいかも(動画:約10秒)。

富山県は北西部。日本のど真ん中ですね。

そして、「どんな式やったん?文章より映像で見たいわ」という方はこの動画をご覧ください(動画:約4分15秒)。

撮影/編集:明石幸一郎
1982年生まれ。武蔵工業大学(現:東京 都市大学)大学院卒業。​専攻は建築環境学。 テクニカルライターとして印刷系企業に入 社後、パタゴニア日本支社に入社。2019 年、フリーランスのビデオグラファーとし て活動開始。利賀村の風景やそこに住む人 に魅了され、利賀村で行われる多くのイベ ントの撮影を行う。

新郎が大学在学時代に通った村。新婦に見せたくて。

もう少し利賀村を紹介するとこんなところ。利賀村は岐阜県境に位置する標高の高い山々に囲まれた地域。冬は数メートルの雪が降り積もる豪雪地帯。

そんな地域でありながらも、世界的に有名な劇団「SCOT」の拠点があったり、大規模なお祭りやイベントが毎年行われたり、多くの観光客が訪れる地域であります。

かつては「地域活性のモデル地域」とも呼ばれたほどで、多くの全国の自治体が視察に訪れていたと聞きます。すぎょい。

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そんな利賀村の最盛期の人口は1945年の約4000名。しかしそれから約70年後の2017年の人口は約500名。高齢化率も約50%となっており、いわゆる「限界集落」と呼ばれています。最盛期の人口の1/9って凄まじい…。

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「村のギフト」作りました。

「そんな村でなぜ結婚式を?」については冒頭のnoteに書いてあるのですが、ざっくりお伝えすると、私が大学時代に所属した研究室の活動の一環として訪れたのがきっかけとなります。

そこで学んでいたのは利賀村の産業の盛衰と伝統文化。その活動の1つとして村の食文化を村内外に伝える「カタログギフト」を作ったり、村の方へのインタビューを動画にまとめyoutubeに公開したりもしました。

はじめは「お勉強」として村に通っていたんですが、気づいたら村に行くのが楽しくなっちゃって、村の人と飲むのが楽しくなっちゃって…。気づいたら大学を卒業した後も村を訪れていた…という風になっていったんですよね。

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そして、村の方が村への想い、村での思い出を語る動画一覧はこちらから。ぜひお時間ある際にご覧くださいね。


「なんで利賀村?」そんな言葉を押し切って。

そんな学生時代、大変にお世話になった利賀村。気づいたらプライベートでも通うようになってしまった利賀村。ある日私は、そんな村の一大イベント「南砺利賀そば祭り」で結婚式を挙げようと思いつきます。雪の中での屋外結婚式。スノーウエディングです。素敵でしょ。挙げたいと思った理由は2つ。

(1)村の方々に感謝の気持ちを伝えたかったから
(2)利賀村の魅力を発信するよい機会だと思ったから

ということで、早速村の方にお願いすると即快諾(ありがたい…)。すぐに準備が始まりました。

…ただ一つ忘れていたこと、それは、

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でした。(というかこれを最初にすべきだったのですが。)

ということで、結婚式まで残り3ヶ月と迫るとある日。おそるおそる妻へ「利賀村結婚式プロジェクト」について説明してみました…。

…が即答。

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ええ、ええ。確かにそうですよね。利賀村は妻にとって見ず知らずの地域。急に「知らない村で結婚式を!(キラリン)」 なんぞ言われたのですから、妻の気持ちも分からなくもありません。

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うんうん、そうですよね。ちゃんと説明すべきでした。すいませんすいません。ということで「利賀村結婚式プロジェクト」は初っ端から暗礁に乗り上げ…かけたのですが、事態は良い方向に変わっていきます。

「どうせなら、皆さんに喜んでもらえる挙式をやりたい」

妻がそう言い出したのは、2018年の師走のこと。利賀村での結婚式まで2ヶ月を 切っていました。彼女は、頑固な私が利賀村での挙式を断念することは「ない」と悟ったのでしょう(賢明な判断)。「とことん全力」がモットーの彼女は、「どうせなら、参加した皆さんに喜んでもらえる式にしたい」と私に話したのでした(やたー)。

私は、妻の気持ちが動かぬうちに話を進めようと心に誓ったのでした。そんな2人が決めた結婚式のコンセプトは

(1)村の魅力をより多くの 方に伝えること
(2)参列した皆さんもか楽しめる式を行うこと

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具体的に前者については「村の特色を知ってもらえる式を作り上げること」、そして参加できなかった友人・親戚にも村のことを知っていただ けるように「参列できない人にも魅力を伝える工夫を行うこと」に留意しました。 

後者については「お祭りに参加している方に主体的に結婚式に参加いただくこと」、そして「ユーモアあるの式を挙げること」に留意し企画を練りました。

利賀村の魅力を知ってもらうために。

利賀村は村の約98%が森林という非常に緑豊かな村。 そんな村の特色を活かした式を挙げるため、私たちは式中の愛を誓い合う儀式として「木の儀式」を採用しました。

これは利賀村の若木に新郎新婦共同で水やりをする儀式で、初の共同作業となります。ちなみに最終的には水やりを行なった木の植林も行ない、利賀村の森林保全に役立てました。

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そして、残念ながら当日は仕事で参加することができなかった友人や、体調が優れず遠出できなかった祖父のために、挙式の一部始終をムービーに撮りアーカイブするということも行いました。(動画URLは記事冒頭に記載)

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ドローンによる空撮も実施いただきました。最&高…。そして、登場はなんと人力車。村の方々に先導いただきました。

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参加者がニヤッとしてくれれば...。

利賀村の魅力を参加者に伝えるだけでなく、いかに参加者に主体的に参加していた だくかという点についても趣向を凝らしました。

具体的には式当日、お祭り会場内に「ウエディングドロップス」と呼ばれるメッセージを記入いただくボードを展示し、お祝いのメッセージを書いていただきました。

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その結果、ウエディングドロッ プスには100名近くの方々からコメントをいただくことができ、本「ウエディング ドロップス」を結婚証明書とさせていただきました。

そして「ユーモアある式を」ということで、誓いの言葉もちょっとユーモア溢れるものに。どんなことを誓ったのかは恥ずかしいので動画をご覧ください。。。

披露宴は利賀村の魅力を「食」で。

スノーウエディングの後は、お世話になった村の方や、研究室の同期や後輩約40名にお越しいただき、フランクな形で披露宴を開催しました。会場はかつて小学校として使われていた建物。今は研修施設兼宿泊施設として利用されています。

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そんな披露宴では利賀村の食材がたくさん振舞われました。こちらの食材を使って豪華なお料理を作ってくださったのは、村の山菜採り名人でお料理上手の上田さん。上田さんにも学生時代大変にお世話になりました。村の山菜を使った伝統料理の数々、 寒締めほうれん草と五箇山豆腐の揚げ物は美味だった…。

…ということで、村の方々の多大なるご協力があり、素敵なスノーウエディングを挙げることができたのでした。

関係人口がなんだ

ところで「関係人口」っていう言葉最近よく聞きませんか?
総務省によると以下のように定義されています。

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。
総務省「関係人口」ポータルサイトより)

図式化するとこんな感じ。

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「観光客に地域に来てもらうだけでは一過性の経済効果を生むだけ。かといって定住人口を増やすのはなかなかハードル高いわ。じゃあ、観光でも定住でもない、その間があってもいいんじゃん?それが関係人口。YES、関係人口。」

っていう感じです。最近総務省も「関係人口じゃー」と声高に叫んでいますが、「関係人口」って「関係人口」という言葉ができる前からあったと思うんですよね。

例えば、文中で紹介した大学の研究室の活動。これもある意味関係人口創出の取り組みと言えるのかなぁと(意図してというよりは結果としてだけど)。

この研究室での活動は10年ほど続いており、毎年所属する学生が利賀村に通っています。そんな継続的な取り組みが認められ、平成30年には内閣官房及び農林水産省が、農山漁村の有するポテンシャルを引き出すことにより地域の活性化、所得向上に取り組んでいる優良事例を選定する「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」の取り組み事例の1つとして選出されました。

そして、そんな取り組みを通して利賀村に通い続けているOBOGもたくさんいます。私もその一人ですし、実は一昨年も同研究室のOBが利賀村で結婚式を挙げ同じふるさとウエディングコンクールの総務大臣賞を受賞していたりします。

観光でも定住でもない人の行き来。まさに「関係人口」ですよね。

”地域活性”と銘打った単発の、かつ短期的な施策は世に多くありますが、これほどまでに⻑期にわたり継続的な活動を行う取り組みは数少ないのではないかと。そしてこの長きにわたる活動があったからこそ(ここ大事)村の方の理解を得ることができているのだろうなと。

例えばですが、ひょこひょこと村に来た、よそ者の学生が「村で結婚式あげさせてください〜」なんていっても実現しなかったのだろうな〜と。

そこで思ったわけです。関係人口というのは、これまでの考え方をうまく概念化した言葉にすぎず(それがきっかけで多くの人に浸透したわけで、そこは言葉のすごさ)、あくまで関係人口はその地域の土壌と、その地域を訪れる人との長期的な関係性が生み出した産物なのですよと。

加えて、個人的には「関係人口」を「移住する前の段階」と捉えることは間違いで、いかにして「移住させるか」という議論に執着して考えてしまうと「関係人口は関係人口で無くなる」と思っています。

私が最たる例で、「利賀村のことが大好きだし、村のお祭りには参加したい、村の力になりたい」と思う一方で、(少なくとも今は、そしておそらくこれからも)「移住したい」と思ったことはありません。だから例えば「移住のために補助金出すわよ〜」なんて言われても何も響かない。

関係人口の創出を行う総務省の取り組みは評価に値すると考えますが、

・関係人口は継続的な取り組みの上に成り立つこと
・関係人口は必ずしも定住人口への前段階では無いこと

を忘れずに施策を打つべきなのだろうなあと思ったのでありました。ちゃんちゃん。

ちなみに、今回結婚式を挙げた南砺市では「南砺市応援市民」を市外から募集中です。応募資格は「市外に住みながらも南砺市を愛し、南砺市のために応援(行動)いただける方」。

応援市民になると登録者証と名刺が送られてきます。もちろん私も「南砺市応援市民」。ということでこれからも南砺市のために頑張るぞー!えいえいおー。
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利賀村の存在が少しでも伝わるといいな〜長々読んでくださりありがとうございました。

この記事を読んで「利賀村が気になった!」と思っていただけたらハートマークを押したりフォローしたりしてもらえると応援市民として嬉しく思います(完)



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