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分かると大切になる

 二月に農泊させていただいた河野功(いさお)さん・和子(かずこ)さんご夫妻のもとに、家族を連れて八月に遊びに行ってきた。とってもすてきなご夫妻に家族を会わせたかったので、念願叶っての訪問だ。


「長旅で疲れたでしょう」

 そういって迎えてくれたのは、和子さん。昼食を作って待っていてくださった。

「ちょうど夏はハチミツを収穫する時期だから、昼食を食べたらみんなでハチミツを採りに行きましょう」

 ハチミツ採りを準備していてくれた功さんと昼食を早々に、巣箱のある森へ車で向かった。

ハチの巣を見せてくれる河野さん

「ミツバチは悪いことをしなければ刺さないから大丈夫ですよ」

 怖がる僕たちをよそ眼に、笑いながら功さんは巣箱をあける準備を進める。

「蜂の一生はどれだけだと思いますか…?  実は一~二カ月しかないんです。その短い一生の中で、最初は内勤で巣の掃除や幼虫の世話、次は門番として外敵から巣を守り、最後は外勤でミツバチとして花蜜や花粉集めと役割が変わっていくんです」

 日本ミツバチは西洋ミツバチと異なり、いろいろな花の蜜を集めてくる習性があるんだそう。そのハチミツを百花密といって、深い味わいがあるんだそう。

 功さんが説明してくださっているうちに、巣箱をあける準備ができた。巣箱をあけてみると、中には七~八個の縦に伸びた巣板にびっしりつまったハチミツが見えた。

ハチの巣の断面!!

「蜂の巣は、上に蜜の貯蔵庫、その下に幼虫がいるんです。だから、ハチの巣を上からあけて、蜜の部分だけを採ります。でも蜜を分けてもらうのはそのうちの半分だけ。残りの蜜は蜂の冬の食糧に残しておくんです。採り過ぎないようにしています」

 採ったハチミツは、重力で蝋と蜜を分けるだけ。絞ったりしないので、余計なものは一切混じらない。

「こんな、美味しいはちみつ食べたことがな~い!!」

 採りたてのハチミツを子供たちは嬉しそうに、食べた。手に着いたはちみつまでなめるところはくまのプーさんのよう。僕も食べてみる。市販されているハチミツと違い粘度が少なく、さらさらしていて、これまで食べたことのない独特の香りと優しい甘さが口いっぱいに広がる。

採れたてのハチミツをいただくノブ

「ハチミツはスプーン一杯が蜂の一生かかって集める量と一緒なんですよ」

 子供たちも、蜂の事を知って蜂から分けてもらったハチミツを理解すると、本当のありがたさやおいしさがわかったんだと思う。ハチミツを採らせてもらって、改めてミツバチをみるとなんともかわいく愛しく見えた。

 続いて、功さんが福来野の滝の滝つぼを、近くの駐車場から案内してくれた。

福来野の滝の滝つぼ


「小学生のころから、ここへはよく遊びに来ていたんです」

 渓流釣りを楽しむ釣人を横目に山道をすすむと、大きな滝が現れた。滝つぼの水は夏でも足がしびれるくらいの冷たさだ。

「ギャー!冷たーい」

 はしゃぐ子供と滝つぼまで泳いでいく。落差65メートルの滝の水は背中を刺すような痛みだった。子供たちが驚いていると功さんが教えてくれた。

「やわらかい水も、こうやって落ちてくると痛いんだよ~。不思議だね」

滝つぼで水遊び!

僕もこんな滝つぼで泳いだことがないから、初めての感覚だった。

 さんざん遊んだ後、滝つぼで冷やしておいてくれたトマトをみんなでいただいた。完熟のトマトはとても甘くて果物のよう。普段トマト嫌いの次男のアツシも喜んで食べていた。

 沢山遊んで家に戻ると、和子さんが夕食の材料を採りに畑を案内してくれた。

「夕食の食材を採りに畑に行きますよー」

 畑では、見たことのない花が黄色や紫など、たくさん咲いていた。

「これは何の花かわかるかな?」

 そういって見せてくれたのは、マメ科の黄色い花で、落花生の花だという。

落花生をカズちゃんに教えてもらう

「花の下が伸びて根っこのように地中に潜り、実が生るから落下生(らっかせい)という名前なんです」

 そう言って、落花生の花から根っこ状のものが地中に下りて行っているのを見せてくれた。子供たちもピーナッツがこうやって育っているなんて知らず、興味津々。

胡麻の花を始めてみて感動!

 その他、野菜の事、虫の事などを教えてもらい、夕食で使う分の野菜を採ったら、家に戻って夕食の準備。妻の沙織と一緒に和子さんから、しい茸料理を教えてもらった。この日は和子さん特性の夏野菜としい茸の南蛮。つけダレが絶品で秘伝の味。甘酸っぱいだけでなく、食欲をそそる優しい味。その秘伝のタレのレシピまで教えてくださった。他には、しい茸の肉詰め。ポイントは、フライパンで焼くのでは無く、片栗粉をまぶして揚げる事。そうすることで、甘辛いソースとのからみが良くなり、美味しく食べられる。ソースを絡める手前で冷凍保存しておけば、急ぎの時にさっと出せる点でも便利なんだそう。

カズちゃんに料理を教えてもらう妻

「さあ、ご飯ができましたよ」

 教えてもらっているうちに、豪華な夕食の準備ができた。

夏野菜としい茸の南蛮

「おいしーい!!」

 そういってしい茸の肉詰めを食べたのは、なんとしい茸ぎらいだったノブ。和ちゃん(滞在中は和子さんの事をそう呼ばせていただいていた)から沢山の事を教えてもらい、嬉しかったんだと思う。ペロッとしい茸の肉詰めを食べてしまった。たくさんの事を教えてもらって、そのことが嬉しかったこともあると思うし、頭の中で食べる事の意味を理解したことで、その価値がわかった瞬間だったのかもしれない。

ノブも大好きなしい茸の肉詰め!

 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。二日間の農泊の時間も帰宅の時間となった。

「親戚みたいなもんだから、またいつでも来てください」

 暖かい言葉でご夫妻は、見送ってくださった。一泊二日の短い時間だったが、その他蜘蛛の巣がスポットライトを浴びている理由や、夜だけアマガエルがガラスにくっ付いている理由などたくさんの事を教えてもらった。知らないとただの景色だけで過ぎてしまう日常も、知ることで大切になるし、美味しく感じた。グーグルで調べれば何でも分かってしまう時代だからこそ、実際の体験をしながらその意味を知る価値がとてもある。

ふくちゃんまたね!

 『分かると大切になる』そういう瞬間を沢山経験させていただいた夏休みになった。


 河野さんご夫妻、本当にありがとうございました!また遊びに行かせてください!

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