ハイエナに会いに行く。~中国・広州~#3


「朝花夕拾」

夫婦で経営している広州のはずれにあるゲストハウスでこんな言葉を見つけた。
この言葉がゲストハウスの名前になっているのか、オーナーがこの言葉が好きなのかわからないが、壁やエントランスに書かれていて気になって調べたところ魯迅の小説のタイトルだそうだ。

さて広州初日に泊まったホテルは都心にある三ツ星ホテルで、中国の洗礼(行けばわかる)を受け、仕方なく身分不相応のホテルに泊まることになった。やはり三ツ星ホテルともなれば快適に眠ることができ、あらゆる面で充実した一晩を過ごすことができた。
しかしこのまま三ツ星ホテルに泊まることなどできるはずもないので広州を出発するまでの三日間安宿に泊まることにした。
それが冒頭のゲストハウスだ。

そこは市橋駅という都心から少し離れた場所にあり、さらに市橋駅から20分のところにあるゲストハウスで、夫婦と子供三人に猫が一匹というアットホームなゲストハウスだ。

このゲストハウスの周りには観光客が訪れて楽しめるようなものは何もない。ただ商店街や公園、駅ビルなどはあってそこそこ人が集まる場所なのだろう。しかし春節前のこの時期は個人経営の店はどこも閉まっていて、ローカルな食べ物を期待してこの場所を選んだ僕はかなりがっかりした。

三日間何をして過ごせばいいのかわからなかった。
一日目は近くの観光地らしきところに行ったり、宿の周りを散策したりで時間は過ぎていった。しかし二日目以降は本当に何もすることが無くなって、猫と戯れたり、エントランスで流れている中国語の映画を眺めたり、本を読んだり、そうやって時間をやり過ごした。

いよいよやることが無くなって、エントランスのソファーでくつろいでいると額に飾られた「朝花夕拾」という書が気になった。調べてみると魯迅の半生をつづった散文集のタイトルだという。意味は「朝落ちた花を夕方拾う」という意味でこの散文集から派生して「過去を思い返す」という意味らしい。

僕も過去を振りかえってみようと思い、目をつむり頭の中で回想を始めた。しかし五分と続かなかった。柄にもないことはやっても続かないのだ。
思えば昔から落ち着きがないと通信簿に書かれるようなじっとしていられない性格だったことを思い出した。


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