【綿町ダイアリー】#555 一杯の深煎りと今村夏子
朝のお客様の波が一気に引いた。
ようやくひと段落し自分の一杯を淹れる。
ブラジル産のシティロースト。
いつもより豆を粗めに挽き、
香りと苦みが沸き立つ感じで深煎りを淹れる。
そして珈琲のお供に
本棚から今村夏子を手に取った。
太宰治賞と三島由紀夫賞をダブル受賞した
「こちらあみ子」今村夏子のデビュー作だ。
この人は、なるほど太宰である。
ついつい読み返したくなる再読用の一冊だ。
クセになるというか、妙な中毒性があるんだ。
「むらさきのスカートの女」で芥川賞を受賞した時の会見で、喋る今村夏子を初めて観たのだけど、あまりに普通なことに少しがっかりした記憶がある。
太宰治のような破天荒さを望んでしまったのだ。
そう思うくらい、
今村夏子は、太宰なのである。
次のお客様が来るまで
深煎りの香りとこの人の世界に浸っていよう。
僕は「ピクニック」が大好きなんだ。
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