コモドドラゴン

ジークフリートのごとく不死身にならずとも【読み出し無料】~「「竜の血」に治癒効果 コモドドラゴンの血液成分から強い抗菌作用発見」(産経新聞)~

1.はじめに~『Fate/Apocrypha』を起点に~

最近、タイプムーンのFateシリーズのアニメや、映画を見ている仲見です。Fateシリーズの各作品は、何年~何十年かに一度、この世に現われ、「どんな願いでも叶える」という願望機・聖杯をめぐって、主に7人の魔術師たちが各々、サーバントと呼ばれる使い魔を召喚し、戦う通称「聖杯戦争」を描いた物語です。サーバントは、神話や聖典、歴史や伝承に名を残す武将や英雄、登場人物たちが召喚され、その逸話に因む固有の能力や「宝具」を武器に、召喚主のマスターを守護しながら、サーバント自身が聖杯に願いをかけて、勝利を目指します。また、魔術協会という存在が監督役を務める聖杯戦争がありますが、その協会内でも暗躍する魔術師が存在する、といった部分が、各作品に深みを与えています。

Fateシリーズ作品の中でも、今年の夏からアニメが放送され、気になっているのが小説『Fate/Apocrypha』です(*1)。粗筋は、第三次聖杯戦争でナチスと結託して聖杯を奪い、ルーマニアを拠点とし、魔術協会に反旗を翻したユグドミレ二ア一族の黒陣営7人魔術師とそのサーヴァント7騎と、協会側の赤陣営の魔術師とそのサーヴァント7騎とで、ルーマニアのトリファスを舞台に、両陣営で蠢く思惑も絡んで「聖杯大戦」が展開されるというものでした。

この『Fate/Apocrypha』と、本記事タイトルのコモドドラゴンの血液成分に関する新発見がどう繋がっているのでしょうか。実は、『Fate/Apocrypha』の黒の陣営の剣士のサーヴァントとして召喚され、前半のストーリー展開に深く絡んでくる人物に、ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に登場し、竜殺しで不死身となった勇士(一説にネーデルラント王国の王子)・ジークフリートがいるのです。

ジークフリートの竜殺しのエピソードは、後に詳しく紹介するとして、古今東西を問わず、伝説や伝承の中には、竜の角や血液が薬に、肉を焼いて食べれば獣の言葉が分かるようになる、といった用途や効果が語られてきました。実は、今回のコモドドラゴンの血液成分に関するニュースは、それらの「語られてきた用途や効果」を現実世界で近い形で実現すると解釈できる、文理総合系博士の私としては、非常に興味深いものでした:

 「竜の血」に治癒効果 コモドドラゴンの血液成分から強い抗菌作用発見 新薬開発へ期待(産経新聞、2017.10.19 11:20)

どのようなところが興味深いと感じたのか。まずは、産経新聞のニュースを読むところから始めたいと思います。

*1アニメ版の公式サイトはこちら:http://fate-apocrypha.com/





2.コモドドラゴンと「「竜の血」に治癒効果 コモドドラゴンの血液成分から強い抗菌作用発見 新薬開発へ期待」(産経新聞)

そもそも、コモドドラゴンって、どんな生物なの?何で「ドラゴン」と呼ばれているの?と感じていらっしゃる読者の方もおられると思います。さっそく、そのあたりから解説されている産経新聞のニュースの冒頭を読んでいきましょう。

”2017.10.19 11:20 
「竜の血」に治癒効果 コモドドラゴンの血液成分から強い抗菌作用発見 新薬開発へ期待

 ドラゴンの血が傷を癒やす-。伝説のような研究成果が4月、発表された。インドネシアのコモド島などに生息する世界最大級のトカゲ、コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)の血液成分を参考に作った物質から、強い抗菌作用と、傷の治癒を早める効果が見つかった。近年では抗生物質が効かない耐性菌が増えており、新薬の開発に期待がかかる。
(「「竜の血」に治癒効果 コモドドラゴンの血液成分から強い抗菌作用発見 新薬開発へ期待」(産経新聞))

コモドドラゴンとは、報道によると、インドネシアのコモド島等にいる「世界最大級のトカゲ」であり、別名「コモドオオトカゲ」とも呼ばれているそうです。ちなみに、私が地元の図書館で出会った、竜に関する博物学的な本:

●『龍のファンタジー』(カール・シューカー著/別宮貞徳監訳、東洋書林、1999)

によりますと、その様子は、

”時に最大3メートルを超すものもいる。驚いたことに、この巨大な動物は、つい1912年まで学問上は未発見だった。が、地元住民はその存在も、人を殺す能力もよく知っていた。龍のような外見をさらに強調しているのがあざやかな黄色の舌で、それを口からちらちらと出すところなど、その名のもとになった伝説上の火を吹く龍にそっくりである。 (カール・シューカー著/別宮貞徳監訳『龍のファンタジー』東洋書林、1999)”

というものでした。日本人の男女合わせた成人平均身長を160センチ強として、コモドドラゴンは最大でその2倍。Wikipediaによると、人や家畜が襲われて、食べられたこともあるという、肉食のオオトカゲと書かれています(*2)。古くからコモドドラゴンのいる島に住んでいた地元の人たちにとっては、日本人にとっての熊レベルの「遭遇すると高確率で命を失いかねない」脅威でもあったと、私は邪推しました。

その「現実にいるドラゴン」のからだから、「血液成分を参考に作った物質から、強い抗菌作用と、傷の治癒を早める効果が見つかった」ことにより、「近年では抗生物質が効かない耐性菌が増えており、新薬の開発に期待がかか」っているということです。

例えば、こういう人たちには助かりそうな発見だと思います。日常生活を送るだけで、何かしらのストレスを貯めてしまい、身体の治癒力が低下しがちな現代日本の働きマンの方々にとっては、ちょっとした切り傷や擦り傷が治りにくい時があるでしょう。それこそ、化膿してしまい、膿が指先を圧迫したり、手足の腫れが引いたりしいない時は、とても苦しいと思います。そんな時、コモドドラゴンの血液成分から開発された新薬が、ドラッグストアなどで買えるようになっていれば有り難いなぁ、と私は考えました。

脅威だったものが、人間の傷の治癒力を高める薬の開発に役立つかもしれないとは、先の『龍のファンタジー』に出てくる竜の伝承の一部を彷彿とさせます。さて、その新発見と新薬開発について、続きを読んでいきましょう。

” 米ジョージ・メイソン大の研究者らのチームが専門誌(電子版)に発表した論文によると、チームはコモドドラゴンが自身の唾液に含まれる細菌に感染しない点に着目。コモドドラゴンの血液中の抗菌ペプチド(アミノ酸化合物)を参考に別のペプチド「DRGN-1」を人工的に作製し、多くの抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌として知られる緑膿菌や黄色ブドウ球菌に使用すると、菌の活動を抑える抗菌活性が現れるほか、細菌が自身を守る膜「バイオフィルム」を壊して増殖を強く抑制した。 
 さらに、これらの菌を感染させたマウスの傷口に塗布すると、傷の治りを早める効果もあったとしている。(共同)
(「「竜の血」に治癒効果 コモドドラゴンの血液成分から強い抗菌作用発見 新薬開発へ期待」(産経新聞))

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