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「マットレス」を知らずに23年間生きてきたとある男の回想記

「一人暮らし 必要なもの」

去年の2月に一人暮らしを始めたとき、一体何を買えばいいのか分からなかった僕はGoogle先生の力を頼った。ありきたりなワードで調べると出てくる、当たり障りのないサイトたち。3,4個読めば必要なものが大体分かる。

「歯ブラシ、タオル、カーテン......」

おっと、カーテンも必要なのか。買い忘れたら外から丸見えだ。危ない危ない。

「電子レンジ、冷蔵庫、テレビ......」

電子レンジ誰かくれないかなあ。テレビは見ないしいらないなあ......

「枕、ベッドフレーム......マットレス

マ、マットレス!?マットレスって、なんだ!?

これが僕とマットレスの出会いだった。23歳の2月、僕は初めてマットレスの存在を知ったのだ。

無論、マットレスという言葉を知らなかったわけではない。マットレスというものがこの世に存在し、マットレスというモノが地球のどこかで誰かの役に立っているであろうことは何となく知っていた。しかし、マットレスがどこでどのように誰の役に立っているか、23歳になるまで全く知らなかったのだ。

マットレスを普段から使っている人はいま、こう思っているだろう。

「こいつはアホなのか」と。

みなさんご存知の通り、マットレスとは”ベッドの上や敷き布団の下などに用いる寝具”のことである。この巨大なハンペンみたいなのがマットレスだ。

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このマットレスの上に布団を敷いたり、もしくはそのまま直接寝る。何も変わったことはない。これがマットレスの使い方だ。

しかし、僕は生まれてこの方、23年間。マットレスを使ったことがなかったのだ。

はるか14年前、しまじろうを見れば笑いトーマスがあれば無限に遊んでいた9歳の頃。僕は親から一人部屋を与えられた。それまでは弟と二人部屋で、床に敷布団を引いて寝ていた。僕が与えられた一人部屋にはニトリで買ったベッドフレームが置かれていた。

「おお。これがベッドってやつなのか。」

幼いながらも今まで床で寝ていたところから数十センチほど高いところで寝るようになったことで、ちょっぴり大人になったような気持ちになった。ベッドに寝て、天井を見ると、近い。床で寝ていたときよりも、ベッドフレームの高さ分天井が近いのだ。

しかし、今思い返せばせっかくのベッドフレームの上には敷布団しか敷かれていなかった。つまり床で寝ていたときに使っていた敷布団を、そのままベッドフレームの上に載っけて使っていたのだ。

これが僕とマットレスの命運を分けた。鳥の雛が生まれて初めて見た生き物を親鳥と勘違いするように、生まれて初めて寝たベッドを中島少年はこの世のベッドの標準だと思い込んでしまったのだ。

ベッド=ベッドフレームの上に敷布団を敷いたもの

この数式が出来上がってしまったのだ。ベッドと敷布団の間に白くてデカいハンペンが挟まれるなんてなんて露知らず。

もちろんホテルに泊まると、普段の実家のベッドとは違うふっかふかさに毎回驚いていた。何だこれは。一体何が挟まれているんだ、と。しかし見れば分かる。ホテルのベッドはびっくりするくらい分厚い。きっと一般庶民では買えない特別な何かが挟み込まれているに違いない。そう言って自分を納得させていた。

そして時は流れ、僕は23歳になった。ここで遂にマットレスの正体を知ることになる。

「マットレス......!?ベッドフレームの上に置いて、その上に敷布団を敷いて使う......だと!?」

ゴチーン!と頭を殴れたような衝撃が走った。なんてこった。こんなものを敷いてみんなは寝ていたのか、と。みんなマットレスを敷いて寝ているのに、俺はずっと薄っぺらい敷布団で寝ていたのか。しかもベッドフレームの上に敷いて。

そしてどうやらマットレスの中にはコイルやら高反発の生地が入っていて、寝心地が良いらしい。

何だよそれ、寝てみたい。

マットレスという概念に初めて出会った僕は、無我夢中でマットレスを調べた。ニトリ、アイリスオーヤマ、etc......その結果分かったことがある。マットレスは高い、という事実だ。ちょっと高性能なものだと平気で5万円を超えてくる。ちょっと待ってくれ、マットレスってそんなに高いのか。

当時の僕は大学生で、予算がそんなになかった。一人暮らしするにあたり親から一円も援助を受けていないので、引越し費用も家賃も家具も全て僕の負担だ。そこにマットレス5万円はあまりにデカすぎる。

無論、人間は一生の3分の1をベッドで過ごすと言われているくらいだから、睡眠にお金をかけるのは合理的な投資だ。しかし僕はベッドフレームの上に敷布団を敷いた環境で10数年間眠ってきた男だ。多少性能が悪くても気になって眠れないなんてことはないはずだ。

と、いうわけで安さ重視でマットレスを調べまくり、楽天でどうにか発掘した1万円ちょいのものを買った。

マットレスが届く当日。何もない新居でベッドフレームを組み立てていた。そういえばマットレス、あの巨大なハンペンはものすごく大きい。一体どうやって運んでくるのだろう。狭いドアから運び込めるのだろうか。マットレス童貞の僕は全く想像がつかなかった。

すぐ答えは明らかになった。何と大の大人が二人寝れるセミダブルサイズのマットレスが、空気を抜かれ、海苔巻きのように巻かれた状態で届いたのだ。おお、これがあのマットレスか。

真空パックのように空気を抜かれた袋をハサミで破くと、「プシュー」という音と共にマットレスに空気が入り、ブワッと広がった。さっきまで圧縮されていたマットレスが見る見る膨らんでいく。そしてあっという間に写真見たハンペンの形になった。

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用意したベッドカバーをつけて寝てみると......跳ねる。いいホテルのベッドで寝たときに感じる、あの弾力だ。おお、マットレスよ。君はこんなに快適な寝心地を提供してくれるのか。

1万円のマットレスだったが、想像以上に快適だった。もちろんこのマットレスは今も使っていて、心地よい睡眠を提供してくれている。


世の中には自分の知らない世界がまだまだたくさんある。なんて大それた教訓をマットレスとの出会いから学んだ......気がする。思い返せば小学校3年生まで僕は納豆に砂糖をかけて食べるのが当たり前だと思っていた。これを話すと気持ち悪がられるんだけど、母親が東北出身で、一部の地域では納豆に砂糖をかけて食べるのが慣習なのだ。僕はこれがすっかり当たり前になってしまったから、逆に醤油とかネギだけじゃ食べることができない。このように自分にとっての常識が他人の非常識なことが多々あるのだ。

そんなことを考えながら、今日もマットレスの上で僕は寝る。おやすみ世界。23歳でマットレスを知ることができてよかった。ありがとう、マットレス。ありがとう、当たり障りのないまとめサイト......

それでは素敵な1日を。

ちなみに一人暮らし始めて買ってよかったものなどはこちらの記事でガッツリ紹介してるのでぜひ参考にしてみてください。そしてツイートも!


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