第2章 自動車整備科存続の危機 14-1.アフリカ新米教師デビュー
ここジブチでは、木・金曜日が休日。日中の12時~15時はあまりに暑い時間帯なので、社会全体がお休み時間になる。学校・お店・病院等の公共機関も閉まる。
社会機能が毎日一定時間停止する。日本ではありえないシステムだ。それがジブチである。
アリサビエ職業訓練学校への初登校からの帰り道、
「自分にどれだけのことができるのか」
一人歩きながら考えていた。これから始まる授業はどうなるのか、生徒達はどんな子達で私をどんな感じで迎えてくれるのか。期待の中にも不安が混在していた。
昼食を宿舎近くのレストランで済ませ、宿舎へ戻った。授業は15時からである。教科書を確認し、私は再び学校へ向かった。
ジブチの学校では、教科書は先生達だけが、長い年月使い続けたボロボロの教科書や資料を保持している。各先生は校長室にあるコピー機で授業資料を必要枚数印刷し、それを使って授業を行う。私も授業の準備で、教科書をコピーしに、再び校長室を訪れた。先に、教頭先生が、教科書をコピーしていたので、ちょっと話しかけてみた。
私 「生徒それぞれに教科書を渡さないの?」
教頭先生「そんなことしたら、次の日には教科書が全部無くなるぞ」
私 「日本では、小中学校の生徒はみんなタダでもらえるよ」
教頭先生「日本はすごいな。でも、それ(教科書)使い終わったら弟妹にあげるんだろ」
私 「弟妹たちも自分の教科書をもらうけど」
教頭先生「えぇっ」
教科書が一人一人に配布されるのが、教頭先生にとっては衝撃だったようだ。今まで当たり前のように教科書をコピーしてきたからか、教科書が生徒全員に渡されるのがありえなかったのもしれないけど、教科書ひとつで、話が生まれる。
あらためて、日本は豊かなんだと感じる。
「無い」ことを体験して初めて、普段当たり前にあった小さなことに感謝できるようになるのは、少々寂しい気もするが、今、私は、この学校で1冊の貴重な教科書を持たされている。それはとても大変な事なのだと伝ってくるのを感じている。
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