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第3章 発展途上国の壁  16.ジブチェンヌの夢

▲写真:体験クラスのジブチェンヌたち

 自動車の整備の仕事はジブチェンヌにも人気なようだ。

 アリサビエ職業訓練学校にも自動車整備科への入学希望の女子学生たちがくる。年度学期の初めに体験授業があって、その後に学科を決定していく。このシステムは日本も同じだ。今年度も、何人かの女子学生たちが、自動車整備科を希望し、体験授業の講師を担った。私の教え子として、将来、ジブチで頼れる女性メカニックになってほしい。体験クラスの生徒たちは記念に写真を撮るほど、夢を描き、希望に胸を膨らませていた。

 ところが、彼女たちは、一人も自動車整備科には来ることはなかった。学校が彼女たちへ別の学科へいくように指導したのである。彼女たちの夢は、初めから閉ざされていたのである。

 私は、校長に、彼女たちを自動車整備科へ入学させなかった理由を追及した。

「女の子は自動車整備をするものではない」
 と、校長は答えた。

 女の子は自動車整備をしてはいけないのか。宗教的な考え方も影響していると思うが、まさに男性優遇の世界(社会)なのか、自動車整備は男がするものだという職業上の男女差別を目の当たりにして、発展途上国における女性の社会進出の壁や社会的地位の現実を感じた。

 女性が自動車整備の勉強を禁じられる。なぜ?
 女性は運動会に参加させてもらえない。なぜ?
 女性はレストランでも家でも男性と隔離された所で食事をとる。なぜ?
 学校の先生は女性が一人しかいない。男ばかり。なぜ?
 レストランのスタッフは男ばっかり。なぜ?
 病院の看護師も男ばかり。なぜ?
 なぜなぜなぜ……?

 日本も仕事の世界では男社会だと感じるが、その非ではない。この男女差別、女性の地位の低さは、発展途上国がそこから抜け出せない原因の一つかもしれない。

 このままでは、ジブチェンヌの夢が、夢で終わってしまう。

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