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第4章 みんな生きている 22. 家庭訪問

▲発展途上国の家

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▲この家で10人が住んでいる

「配属先の学校の質の向上を図るには何をしたらいいか?」
現役小学校教師である先輩隊員へアドバイスを求めたところ、
「家庭訪問するのが良い」
と返事を得た。日本の学校もアフリカの学校も同じなのかは分からないが、それで何かが得れるかもしれない。早速、私のクラスの生徒のご家族へ挨拶するため、家庭訪問を始めた。

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▲家庭訪問 

 授業後、生徒たちに案内されながら、各家庭を訪問し、ご家族へ挨拶をしていく。
 ここは発展途上国。貧しいながらにも、子供たちを学校に通わせているご両親には敬服する。また、兄弟・親戚・ご近所も分かり、その生徒の生活環境を知ることは、その子への接し方のヒントにもなる。それにしても、実際に、生徒たちが住んでいる家を見て驚愕した。

「こんな斜面に家が建っているのか……(絶句)」
「こんな小さな家に家族10人で住んでいるのか……人口密度が高すぎ」
トイレは「穴」一つだけ。
日中なのに家の中が真っ暗。しかも暑く、体感気温は30℃以上。生徒が家に置いてあるミカン箱くらいの大きさの箱を見せて、
「これは僕の机だ」
って。日本人的な感覚として「家に帰ったら宿題を頑張ってやるんだぞ」という生徒への思いは、完全に消し飛んだ。家に帰って宿題なんてどうやるんだ。

 この生徒は学校の授業でよくプリントやボールペンを盗んでいた。
「盗みはダメなことだぞ。盗んだものはちゃんと返しなさい」
と言う気持ちもあったが、言葉が出なかった。いつしか、その生徒は学校にも来なくなった。理由は分からないが……。

 しかし、アリサビエ市内で、その来なくなった生徒とウチの生徒が会って話をしているのをたまに見かける。しかし、彼の雰囲気は、以前の16歳の若い彼でなく、活気がなく、何年も老け込んだ青年のようにも見えた。
しばらく見ない間に教え子が老け込んでしまったのはここでは珍しくない。
過酷な生活環境が老けさせてしまっているのかもしれない。何があったのか勝手に心配してしまう。食べ物は十分に食べているのか? 病気になっても病院に通えない。平均寿命が50歳くらいという。物が欠乏した日々の中で生きていくと老けてしまうのかもしれない。

 ある生徒の家庭訪問では、先日、会ったばかりの元気なお父さんが亡くなったと。家の中には、私が日本のダイソーで買って学校に飾っていて盗まれた造花があった。もう、造花を盗んだかどうかはどうでもよくなっていた。
家庭訪問で見えたのは、生徒たちとその家族の過酷な現実ばかり。 何かを得るよりも、解決の困難さが重かった。

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▲生徒の家




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