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プロアクティブ・サーチというM&A業界の手法【M&A日記】

※M&A日記は事実をベースにしたフィクションです。地域・数字・業種・固有名詞は全て加工されています。

プロアクティブというのは、先手を打つとか、能動的に、というような意味。
サーチは探すこと。
プロアクティブ・サーチは、能動的に探すこと、探すのは売りたい会社だ。

M&A会社の多くは仲介の立ち位置をとる。私も同じ。

基本的には不動産と同じで、会社を売りたいという人が先にいて、その会社が仲介会社にとっての商品になる。
そして、それを買いたい人を探し、仲介する

プロアクティブ・サーチはこれの逆をやる。
買いたい人からの要望を受けて、要望に合う売りたい会社を探す。
「あなたの家を買いたい人がいます!」みたいなDMがたまに届いたりしないだろうか?これの会社版だ。

実はこのプロアクティブ・サーチ、すごー--く難しい。
あなたの家を売りませんか?と急に言われても、いや売らないし、となるでしょう。M&Aも同じだ。

M&A(買収)によって成長を目指す、というM&A戦略をとる企業がこの手法の対象になるが、当然買収するのはどんな会社でもよいわけはなく、本当に欲しい会社は数えるほどしかない。
その数えるほどしかない会社にアプローチして、会社を譲渡するという一世一代の決断をしてもらうわけなので、そう簡単にはいかない。
やっとのことで、検討可能な会社が出てきても、めちゃくちゃ高い金額を言われてしまっては、結局進まない。
超タイムリーに譲渡の検討が可能な企業が見つかって、かつ条件的にも買主の希望と一致するというのは奇跡的な確率なのだ。

ということは、プロアクティブ・サーチを受ける仲介者はなかなか大変だ。
一から面識のない企業にアプローチして、ようやっと繋がっても譲渡の意思を示さない企業が殆ど。
たまに興味あると出てきても、条件が全く合わないなんていうことになり、蓋を開けてみると、超生産生の低い活動をしてしまいかねない
一方で、逆にもしうまくいけば、そこでM&Aで最も大変なマッチング活動が完結することになるので、超生産性が高い。
ハイリスク・ハイリターンな活動だ。

とある企業よりプロアクティブ・サーチの依頼を受けて動いたことがある。
これができたのは、以下の2点が大きい。

  • その会社との取引実績があって、その会社の考え(買収金額の目線、経営者の好き嫌い)をある程度把握しているため

  • 買収したい企業の経営者と私が既に面識があるから

「〇〇という会社が社長の会社を欲しがっています。
だいたいこれまではこれぐらいの金額で買っています。
買収の目的手としては~で、もし提案を受けられるとすると、会社は~の支援を受けられる可能性があり、そして社長は~を期待されると思います。
金額感とかお伝えするので、財務諸表を出してもらえますか?」

ということをLINEで伝えることができて、すぐに興味ある・なしの回答を得られ、興味ある場合には資料開示をしてもらえる関係性を持っていたから、特段労力を要することなく、活動することができた。

これだけ難しい活動のはずなのに、経営者の元に毎日M&A各社から届くDMには、「あなたの会社を買いたい会社があります」と書いて送られてくる。
M&A各社が皆そんなハイリスクの活動をするだろうか

実態としては、あなたの会社を買いたい会社があるわけではなく、あなたの業種で買いたいという会社がいる、ということだ。
名指しであなたの会社を欲しがっているところがあるわけではない。
でももし譲渡を検討するなら、検討する可能性のある会社があるよ、なくても探すよ、ということ。
これって当たり前のことで、どんな会社でも買収検討してもらえる可能性はある。
不動産仲介者が仲介するための物件を仕入れる活動と同じで、買い手がいるという謳い文句を通じて、譲渡したい人を探しているだけだ。

譲渡相談を受ける経営者の元には、ほぼ例外なくM&A会社からのDMがある。
そのDMをもってきて、これって本当なのかな?と皆さん聞いてくる。

私はこう答える。
「分からないです。もしかしたらあるかもしれないですけど、聞いてみないと分からないですね。但し、もし私が仲介者で、御社のことを名指しで欲しいという会社があった場合には、DMは送らないですね。もっと確実に社長と話をさせてもらえる方法を模索します。」

例えばとある営業にとても力を入れているM&A会社の場合。
プロアクティブサーチの依頼を受けた担当者は、指名されている会社の本社で社長を張って、社長を見つけた途端に、とにかく話を聞いてください!なんていうやり方をしていた。

これが良いか悪いかではなく、私はここまでのやり方はもうできないが(20代ならやってたかも)、とにかく社長と直接話せる方法を模索する。

もしあなたの会社がプロアクティブ・サーチの対象になったかもしれないとき、その買収候補企業は自社のことを指名しているのか?を聞きましょう。
それで、謳い文句として使っているのか、あるいは本当に指名者がいるのかがわかります。

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