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ナカさんの読書記録 竹本源大夫 鶴澤藤蔵「文楽の家」

文楽では珍しい、親子四代文楽一家で生まれ育ったお二人の本です。
鶴澤清二郎さん(三味線)が二代鶴澤藤蔵を襲名した時、記念に出版されました(2011年春)。
お父さんは竹本綱大夫改め九代竹本源大夫(太夫)。
お祖父さんが初代鶴澤藤蔵(三味線)、曾祖父が七代目竹本源太夫(太夫)
※文楽は落語よりもよく名前が変わりますので、古くさかのぼると誰が誰やらわからなくなってしまいます。。。

歌舞伎では世襲が多いですが、文楽には世襲制がありません。フツーの家庭で育った方でも、文楽劇場の研修制度で修行して技芸員になる方もたくさんいらっしゃいます。この尾崎家の様に代々文楽の家系というのは珍しいです。

この本はお父さんの源大夫さんと息子の藤蔵さんと文章が交互に構成されています。それぞれの文楽に対する思いや芸に対する情熱、師匠を敬い尊敬する気持ち、文楽を心から愛しているのが伝わってきました。
芸の道はとにかく何遍も妥協することなく繰り返し稽古、稽古しかないという事か!と思いました。私は素人義太夫習い初めて約1年ですが、半年過ぎたころについ「先生、裏門の段の次はなんでしょうか。。」などと口走ってしまったことがとても恥ずべきことだったのでは!?とこの本を読んで胸がドキっとしてしまった。。。まだロクに語れもしないのによくもまぁ次のに進みたいといったものだ、穴があったら入りたい。。。この本を読んで義太夫に対する気持ちがより一層引き締まりました!!

藤蔵さんはお父さんの相三味線をつとめていらっしゃいました。
今では人気実力とも兼ね備えた人気の藤蔵さんですが、若い頃プレッシャーに悩んだことなどが語られていて、芸の道の厳しさを感じました。
文楽の世界も後継者が少なくて、とくに太夫(語り)は少なくて心配です。世襲制ではないので興味を持った若者がいたらぜひ文楽の世界に飛び込んでいってほしいと思います。文楽もっと広く親しまれるといいですね。
本場の大阪では庶民的な芸能かもしれませんが、東京ではあまりなじみがありません。歌舞伎は知っていても文楽は「?」という人もいます。

※同時に読んでいたこちらの本も面白かった。
文楽談義―語る・弾く・遣う 
義太夫研究会 (著) 1993年
四世野澤錦糸さんがお弟子さんの錦弥さん(今の錦糸さん)を「ポカっ」とやられた時のエピソードがとても愛情があってよかったです!

2020.6


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