SNS仲間と[理想の洗車ワックス]を製品化した話⑦[共創]を通じての気づき-買い手主体のモノの買い方-
今まで6回に渡ってSNS仲間と[理想の洗車ワックス]を製品化した話を語ってきました。下記のような流れです。
仮想現実の自分、リアル世界の自分
お伝えしてきたように、僕は、仮想現実なTwitterでのコミュニティ社会(自分にとっては、そこがメタバースそのものです)では、「洗車太郎」と名乗って、洗車好きに”キャラ変”して楽しんでいました。
一方でリアルの僕は、実のところ、とある小売業の会社の経営陣として転職して以降、毎日のように、「次世代の小売業とは?」を考えながら、仕事をしています。
今回は、ワックスを作るという「共創」体験の総括として、僕がその経験から学んだこと、そして、そうした経験や気づきが、僕の考える「小売の未来」にどのように繫がっていくのか、について述べていきます。
「意味性あるモノの買い方」
僕が一連の経験を通じて感じたのは、こんなことです。
モノがあふれた現在において、購買の中心世代になってきた、20代、30代といったMZ世代。
その世代の人々の多くは、生活必需品ではないが、人生の楽しみのため、意味があって買うモノ(以下、「意味性のモノ」といいます)に関しては、とても慎重に吟味してから買う傾向が強くなってきています。
例えば、一昔前のミレニアム世代全盛の若い世代には、ほとんど売れなかった400万円の国産の新車を例にあげましょう。
「クルマはいらない、カーシェアでいい」、といった価値観を持つ若い世代に、そんな大金払って車を買う人はいませんでしたよね。
ところが、最近は、その車でも、性能が良いモノは、MZ世代によく売れるといいます。
「この車、50代以降に売れているのですよね?」と、ディーラーの方に伺ったら、購買の中心は、なんとMZ世代で、しかも、その世代のクルマを買う人はほとんど、SNSでの評判や、彼らが信頼するYouTuberなどの動画を見て買いに来るそうです。
要は散々自宅でSNSを通じて考え吟味して、「買おう」と決めて、ディーラーに来るらしいのです。
「売り手側」のセールストークは不要
中にはディーラーを前に、商談も質問もまったくしない人もいるようです。
全ての情報はネットにあるし、クルマの性能はSNSで説明されています。情報は十分だし、信頼できるYouTuberの試乗コメントも見ているので、ディーラー、つまり「売り手側」のセールストークは必要ない、実車を見て、見積もりをチェックして、その場ですぐに買う……。
そんな人が、最近のMZ世代には多いそうです。
僕なら、自分自身でも確認しないと気が済まないし、その車を運転した時の自分のドライビング感覚がすべてなので、最低3回は試乗しないと買えません(笑)。
「洗車太郎=情報発信者」は「仲間」
こうしたSNSで信頼できる人の言うことを信じてモノを買う、ということは、僕のやっていた洗車のコミュニティでも、よく起きていました。
初心者や中級者の洗車好きの人は、コミュニティにおける、僕、すなわち「洗車太郎」の発言をたくさん読んでいて、「洗車太郎は僕たちと『同じ側』の人だ。仲間だ」と思っています。
つまり、洗車太郎は、彼らと同じ「買い手側」にいる人で「売り手側」の人ではない、という意味です。
「買い手側」にいる人ゆえ、洗車太郎の言うことなら信頼できる。だから洗車太郎におすすめ商品を聞きたい、となり、洗車用品の質問を頻繁に僕にしてきます。
そこで何かをお勧めすると「買います! ありがとうございました!」と、返信返信を受け取ってから2、3分で「買いました」報告が来ることもよくあって、「本当に僕を信じて速攻買うんだ!」、と驚いたことが何十回とありました。
「買い手の信用経済による購買行動」
このように、最近のモノの買い方として、自分と同じ立場にいる、信頼できる人の意見や情報をもとに、モノを買う傾向があります。
僕はこの現象を「買い手の信用経済による購買行動」と呼んでいます。
今のMZ世代…いや、多分、2022年末から登場した生成系AI出現のため、世の中の動き、人の価値変容がすごいスピードで動き出していますので、こうした、買い手の中での信頼できる人や情報を通じてモノを買うのは、もはやMZ世代だけではないのかもしれません。
売り手の論理で、「XXを製造して売ろう」、「XXを仕入れて売ろう」、という売り手主体のモノ売りがこれまでの常識でした。そのため、マーケティングをして、テレビ、雑誌で宣伝して……。
でも、買い手は、最近急速に、そういった「売り手の論理」に沿った宣伝やマーケティング活動を通じた、おすすめのモノを売り手を信じて買うことがなくなってきているのです。
購入プロセスを創造しないと、モノが売れなくなっていく
僕は、今の小売業の会社に転職してから数年間、「売り手の論理でモノを売るのには限界がきてるので、買い手の論理でモノが買える仕組みを作りませんか?」と言い続けてきました。
「買い手の中に築かれる信用経済に従った、モノの購入プロセスを創造しないと、モノが売れなくなっていくのではないか」、という思いが、そこにありました。
でも、そんなビジネスは未だできていない。
であるならば、自分でそれを実証してみよう、そういう思いもあり、プライベートで、しかも、リアルの自分ではない、仮想社会にいる「洗車太郎」に、その想いを託しました。
そして、洗車太郎は洗車仲間と一緒に、買い手だけで、「共創」により、買い手が本当に欲しいモノを作ることができることを実現したのです。
「洗車太郎」はもう、存在しないけれど
その半年にわたる壮大な?実験、というか半分お遊びですが(笑)の結果は、今までお話ししてきた通り。
さらには、メーカーから「もっと買い手の声を聴きたい。そのためにお金を払ってもいい」という、買い手の声を届けることの価値に気が付くという「おまけ」までついてきました。
この経験を通して、僕は、新しいモノの買い方と売り方、つまり小売りの未来について、1つの理想像を、具体的に考えるに至りました。僕はこのことをみつけるために、もしかしたら、「洗車太郎」になったのかもしれません。
残念ながら、洗車太郎のTwitterのアカウントは乗っ取られたことを機に、廃止したので、Twitter上に洗車太郎はもはや残念ながら存在しません。
でもそれでいのです。僕は、今は再び別人格で、別の名前で、洗車仲間と、SNSを通じて、毎日会話を楽しんでいます。
[小売業の未来]のお話しは、近いうちに
今後、AIの話をしていくことになります。
ただ、この「洗車太郎」としての活動を通じて気が付いた、僕の思う、売り手と買い手の関係、モノの理想的な買い方、小売業の未来について、については、まだまだ語りたいことがあります。
いずれ、思うままに語っていくつもりです。たとえばこんな構成で。
未来のモノの売り方と買い方-小売りの未来-
①買い手にとっての理想的な買い物とは
②売り手側もどうしていいかわからない
③理想とする[小売]とは
④売り手と買い手を紡ぐ[小売の未来]について
SNS仲間と[理想の洗車ワックス]を製品化した話
① 愛せる洗車製品が見つからない理由
② Twitterに仲間が集まってきた
③ 1000人との「共創」開始
④ Web3で「平等な意思決定」
⑤ AI駆使、韓国企業に発注
⑥ まさかの仕事依頼
⑦ [共創]を通じての気づき-買い手主体のモノの買い方-
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?