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化粧品の研究者を卒業、デザインで起業、教育支援家として生きる/アクアベリーズ 奥泰之さん

奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)では、高分子化学の研究をされており、洗剤や化粧品メーカーで研究開発に携わっていた奥さん。現在は全く畑違いと思われるデザイン関係で起業して、教育ビジネスの会社を経営されています。大学院時代の経験が社会人になってからも、事業を行う上でも、役に立っているそうですが、そのあたりのお話を含めて、起業までの経緯、就職や転職についても、併せてお話を伺いました。

奥 泰之(物質創成科学研究科 博士前期課程2006.3修了)
奈良先端科学技術大学院大学では、公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)にて、二酸化炭素削減のための高分子膜を用いた技術開発に取り組む。 NSファーファ・ジャパン株式会社へ入社後、洗剤や化粧品の分析および商品開発を担当。化粧品OEMメーカーへの転職を経て起業。現在は合同会社アクアベリーズの代表として、教育業界の企業や大学などの教育機関へのWEBマーケティング支援・WEBデザイン制作、国内外の教育支援やソーシャルビジネスに注力している。

就職活動の状況と会社選びの基準

新卒の時の就職活動は研究に忙しくて、あまり積極的に進めていなかったような気がします。どちらかと言えば、その後の転職活動の方が時間をかけて企業を探していましたので。また、奈良先端大の連携講座に所属していて、学外の研究施設で研究していたため、大学には授業の時など、時々しか来なかったので、友達と頻繁に情報交換をすることもなかったです。後々になって、みんなは学内で顔を合わす機会があるので、情報交換していたことを知って、羨ましく感じましたね。

業界としては、化学系だったので、化学メーカーや食品メーカーを中心に選んでいました。特に最初はこだわりはなかったのですが、何か商品開発がしたいと思うようになり、BtoCの企業を中心に、「店頭で自分が開発した商品を見たい」という気持ちが徐々に芽生えていきました。結局、希望通りの業界・仕事内容だった、洗剤・柔軟剤・石鹸・シャンプーなどの日用品を開発している NSファーファ・ジャパン株式会社入社することができました。

入社からのキャリアや業務内容

入社した当初は洗剤や化粧品の分析、分析手法の開発などの基礎研究に携わりながら、医薬部外品の申請業務を担当していました。そこで、基本を学んだ後、少し慣れてきてからは自分がやりたい仕事を貪欲に自分から取りに行くようになっていましたね。運に恵まれていたことが多々あったおかげで、退社するまで、本当に部署の垣根を超えて、様々な経験をさせていただきました。有り難いことに、入社2年目にも関わらず、化粧品業界の専門書に共著で執筆させていただいたり、2年目から毎年、新入社員研修係を退社するまで担当させていただいたりして、その後の自分のスキルの糧になりました。
 
それらに加えて、与えられた仕事でしっかり成果を出した上で、自分がやりたい仕事、新商品の提案や開発を進めていったり、今の仕事にも役立っていますが、マーケティングの勉強をしたり、営業の部署の方々と仲良くさせていただいたり…。本当に凝縮した5年間を過ごしました。

転職〜起業するまでの経緯

関西から関東へ研究所が移転することになり、関西に残りたいこともあって、そのタイミングで退社、転職しましたが、その2〜3年前から転職活動は始めていました。時々、良さそうな企業があれば、応募して、面接を受けてみて…を実はコソコソ行っていました。結果的に、基礎研究から応用研究まで、携わっていた経験と、幅広く視野を持っていることに評価をいただいているようで、業界問わず、商品開発系の職種は何社か内定をいただけました。新卒の時と違って、活動のポイントとしては、最終面接での社長や役員の方と話した時に、ピンと来るか、自分の直感を大切にしていましたね。
 
その時は、すでに沸々と起業欲が顔を出し始めていましたが、もう少し化粧品の開発がしたいと思い、その後、化粧品OEMメーカーに転職し、自分の中でここまでというラインに到達、研究職に満足したので、大学からの研究人生に一区切りを付けました。

現在の仕事のやりがいと社会起業家としての挑戦

元々、趣味の延長線上からデザインの副業に取り組んでいて、それを中心に起業したのですが、自分の武器として、起業当初から研究で培った理論的思考が非常に役に立っています。結果を分析して、次に活かすサイクルによって、クライアントさんの要望に応えることができています。お陰様で、デザイン関連の仕事はほとんど紹介のみで成り立っていることは、本当に有り難く、ご縁があって奈良先端大ともお仕事させていただいているので、少しでも母校に貢献できていることは嬉しい限りです。
 
現在は起業当初のデザイン制作中心の仕事から、ずっと取り組みたかった「教育支援」に軸足をシフトしています。会社員時代の新入社員研修係の経験もそうですし、塾講師のアルバイト経験からも、すべては「教育」次第で人の成長度合いは変わると考えています。そこで、思うように教育を受けられない子供たちがいること、環境によって教育格差が生じることに対して、それらの問題を解決するため、教育支援団体へのWEBサポートと共に、自社のプロダクト開発に取り組んでいます。
 
その他に、以前、クラウドファンディングを使って、ベトナムで学校に通えない子供たちのための小学校建設をチームで支援しましたが、国内外問わず、そのような活動を今後も継続していきます。(奨学金で通っていましたが)改めて、大学院まで研究生活を送れた、その機会に恵まれたことに感謝しています。自分のやりたいことができる、学びたいことが学べることは当たり前ではありません。だからこそ、その環境の有り難みも分かります。
 
最近は色々なご縁も多く、奈良先端大の所在地であり、生まれ育った地元でもある、生駒市の起業家支援プログラムに、応募・プレゼンをして採択され、応援していただいています。他にも、市役所から依頼を受け、講演させていただくことにもなりました(2022年7月予定)。「奈良先端大と共に、一緒にビジネスや社会貢献もできれば良いな」と思いながらも、教育支援家として、社会起業家として、次のステージへ進むため、新しい仕事にチャレンジしています。

働く上で大切にしていること

「仕事は楽しいもの」と考えています。楽しくなければ、楽しさを見つければ良いだけです。「ワクワクしているか?」その基準で、迷ったら選ぶ方が良いと思います。そうすれば、しんどくても、辛くても、自分が選んだことには後悔は抱かないです。また、失敗は無駄ではなく、次につなげるためのもの。成功するまで続けている人が成功する人だから、諦めない、粘り強くコツコツと続けることも大事ですね。会社員時代も、起業後の今も、ずっとそういうマインドでいますが、そのメンタルのすべては奈良先端大の研究生活で鍛えられたと言っても過言ではないです。

これから叶える未来のこと

今後は子供も大人も、教育格差をなくすための活動にもっと力を注いでいき、世界中の教育に新しい選択肢を作っていきます。ベースは感覚人間なのですが、理系の道に進み、会社員の経験を経て、事業を立ち上げ、一応、学校の勉強もそれなりに頑張ってきた上で、学校の勉強はした方がいい部分と勉強しなくてもいい部分も見えて…。今までそんな両極端の経験を意図的にしてきました。だから、ジャンルにこだわらず、様々な経験ができるなら、ずっと新しい経験をして、刺激を得て、それらを世の中のために活かし続けていきたいですね。

奈良先端大生活の中で役に立っていること

とにかく大学院の2年間が、後にも先にも一番、自分の限界以上に頑張っていたと思います。大学ではなく、学外の研究施設で社会人の方々(しかも、日本や海外のトップ大学出身の方ばかり)と一緒に研究できたおかげで、更に、先に社会人として仕事を経験させていただいたような感じでしたので、いざ社会に出てからは「大学院時代の方がよっぽどしんどかった」と思うことが多々ありました(ある意味、感覚が麻痺していた?)。本当にあの時、鍛えられたおかげで、社会人になり、ブレない軸を持って成長できるための礎がしっかりと作られていました。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

修士の方であれば、2年間は驚くほど、あっという間に過ぎ去ります。本当にたった2年間なので、とにかく自分なりの全力を出してください。研究でも、就活でも、その他?でも良いので、時間を無駄にせず、何かに一生懸命トライしてみてください。どんな結果になろうとも、その後の自分の人生にとって、必ず役に立つはずです。時には目の前のことに全力で、時には視野を広げて俯瞰して心に余裕を持ち、多様に視点を変えれるようになるために、新しい経験や新しい出会いを目一杯してください。そうすることで、自分の選択肢は自分で作れるようになります!

奈良先端大を目指している受験生へのメッセージ

奈良先端大は大学院からの入学のため、「今いる環境を変えたい」、「設備の整った環境で研究したい」、そういう考えを持った方はぜひ、オープンキャンパスに来てみてください。きっと興味を惹かれる研究テーマが見つかるはずです。都心に住んでいる方は、少し田舎に感じるかもしれませんが、自然のある、とても環境の良い場所でもあるので、一度訪れてみて考えると良いですよ。また、今は起業部という活動もあるみたいですので、研究も起業にも興味のある人は二つ同時にチャレンジできますね。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。