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苦労を乗り越えた先に味わえるもの/日本総合研究所 鈴木友紀奈さん

「本当に濃い二年間だった」とお話しされていた鈴木さん。奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)では、「修行」と言うほどの研究生活を過ごされていて、社会人になってからも、会社で一つ一つ困難に向き合っており、それを乗り越えていくことにやりがいを感じ、強い責任感も持って仕事をされている印象を受けました。その頑張れる理由を聞くことは、これから就職を目指す学生にとって、大変刺激になると思います。そして、産休・育休の経験、仕事と育児の両立についても、併せて詳しくお話を伺いました。

鈴木 友紀奈(情報科学研究科 博士前期課程2014.3修了)
奈良先端科学技術大学院大学では、 ATR(国際電気通信基礎技術研究所)にて、脳情報デコーディングに関する研究に取り組む。株式会社日本総合研究所へ入社後、銀行系のシステム開発を担当。産休・育休・時短勤務を経て、現在はフルタイム勤務でプロジェクトマネージャーとしても従事。

就職活動における2つの軸

就職を意識し始めたのは修士1年の秋頃ですね。エンドユーザーに近い仕事がしたい、世の中に広く影響を与えられるような仕事がしたい、この二つが就職活動の軸でした。エンドユーザーに近い、つまり自分もユーザーになれるような商品やサービスを扱う方が、そのユーザーが抱えている課題を身近に感じながら、解決に取り組むことができ、より面白いのではないかなと思いました。このような軸だったので、業界は絞らず、メーカー系や広告系、SIerなど、幅広く就職活動を行いました。そして最終的には、SIerの「企画・要件定義といった上流工程から保守運用までの全工程に携われるところ」、「その中で幅広いスキルを習得し、自身の成長が期待できるところ」に魅力を感じ、業界を絞りました。

社会人になって8年間のキャリア変遷

日本総研は、シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションの3つの機能を有するSMBCグループの総合情報サービス企業です。私は入社して以降8年間、 ITソリューション分野にて銀行系のシステム開発に携わっています。入社1~2年目は、実際に自分で手を動かしてコーディングやテストをし、要件定義からリリースまでのウォーターフォール開発の一連の流れを経験しました。案件規模は大きくても数名の社員がかかわる程度の規模でしたね。その後、3年目になったタイミングで、延べ数百名がかかわる規模のプロジェクトのサブプロジェクトマネージャーにアサインされて、そこで初めてプロジェクトとは何か、どのように進めていくものなのかを学びました。そして新卒採用リクルーターなど経験した後は、産休・育休で約2年間開発から離れましたが、約2年前に復帰してからは延べ千名を超える規模のプロジェクトにサブプロジェクトマネージャーやプロジェクトマネージャーとして従事しています。

仕事を取り組むにあたって、大切にしている2つのこと

一つ目は自分の仕事の守備範囲を決めないということです。自分の担当範囲はもちろんありますが、その中で仕事を閉じてしまうと、周囲との連携が十分でないために意図せず重要な観点を漏らしてしまったり、自分の成長する機会を失ってしまったりすることにもなると思っています。自分の担当範囲や責任範疇にこだわらずに、一歩踏み込んで意欲的に学びながら、チームメンバーなど周りの人と協力して良いものを作っていくことを意識しています。

もう一つは、プロジェクトマネジメントする上で、バッドシナリオを常に考えておくということです。プロジェクトでは何もかも順調に行くことはまずないので、どんなことが起きる可能性が考えられるか、起きた時にどう対処すれば良いか、対処するにあたってリスクはないか等、次の一手を見据えて行動するようにしています。

仕事でどんなやりがいや面白みを感じているか

困難を乗り越えた時に味わう達成感は、他では味わえないものだと思っています。作ったシステムを無事リリースした時は勿論ですが、プロジェクトを推進する過程で生まれる様々な課題の一つ一つを乗り越えた時にも、大きな達成感を味わうことができ、またそれをチームメンバーと共有できるのが嬉しいです。

今進めているプロジェクトは、昔からあるシステムで保有している機能を今回新しく構築したシステムに移植するというものなのですが、昔からのシステムということもあり仕様の一部がブラックボックス化しています。そのために、テスト工程で想定外の不具合が多発し、そこで初めて仕様が明らかになっていきました。これは、テスト工程で仕様を明確化して不具合を取り除くことができたポジティブな事象である一方で、テストすればするほど不具合が出てしまって、頭を抱えてしまうくらい厳しい状況でもありました。そういう状況の中で、一つ一つの不具合の原因調査を IT ベンダーに任せっきりにするのではなく、自分も手を動かして解析や調査をし、ITベンダーやチームメンバーと一緒にどう対処していくかを毎日議論して、一つずつ解決していきました。

不具合解消を限られた期間の中でやり遂げなければならないことも大変でしたし、テストを再スタートした時に同じように不具合を発生させることは許されないというプレッシャーもありました。テストを再スタートし、状況が一変してうまく進み始めた時は本当に嬉しかったですし、達成感も大きかったです。このように困難を乗り越えて味わう達成感、そしてその達成感をチームメンバーと共有できる喜びが原動力になっています。

産休・育休後、職場復帰する時に不安になったこと

育休明けは時短勤務にして徐々に慣れていこうと事前に決めていました。ただ、どのくらいの時短勤務にするのが良いか、仕事と家庭の割合をどのくらいにするのが良いかは、想像がつかなかったので、とても不安でした。また、今後、自分がどういう働き方をしていけるのだろうか、という不安もありました。そんな時に、近くの部署にいる先輩ママさん達から「どのくらいの期間で生活に慣れたか」「フルタイムに戻してみてどうか」など「私の場合はこうだったよ、こうしたよ」と色々なケースのお話を聞いて、とても参考になりました。

日本総研には働くママさんがたくさんいます。管理職に就いてバリバリ働いている人もいれば、時短勤務を最大限に活用している人もいます。仕事と家庭の割合をどの程度にするかという点では選択肢が幅広くあって、個人の考えや生活に合わせた選択ができる環境があります。実際に色々な選択肢を取っている先輩ママさん達がいるので、非常に安心感がありますね。今後、子供が成長していくにつれて、私の考え方が変わることもあるかもしれませんが、色々な選択肢を取れることが分かっているので、子育てをしながらでも働いていけると感じさせてくれる会社ですね。

仕事の面で、母親として、今後チャレンジしたいこと

仕事の面では、更に大規模なプロジェクトのマネジメントにチャレンジしたいと思っています。課題解決をする力や専門的な知識にどんどん磨きをかけて、社内からも社外からも信頼され、頼られる存在になっていきたいと思っています。また、プロジェクトマネージャーは社内外のたくさんのメンバーを先導していかなければならない立場になりますので、メンバーの心に寄り添いながら、士気を高められるような存在にもなっていきたいと思っています。

母親としては、イキイキと働く姿を子供には見せ続けたいなと思っています。働くことに対して、子供に前向きなイメージ持ってもらいたいと思っていますので、まずは自分がイキイキと働けるように、仕事においても、家事・育児においても無理をしない工夫をしながら、仕事と育児のバランスを取っていきたいです。また、日本総研は女性が働きやすい環境にはありますが、もっと情報共有ができる場があっても良いかなと思っています。働くママさんやこれから働くママになる人が抱える悩みを共有して、アドバイスし合える場を作っていけるような機会があれば、ぜひチャレンジしたいです。

今、課題に感じていること

私個人としては、プロジェクトマネージャーとしての説得力が課題であり、もっと強化したいと思っています。プロジェクトを推進する中で、相手にとってはあまり好都合でない話を呑んでもらわなければならない場面がたくさんあります。プロジェクトマネージャーは相手を納得させなければならない立場ですので、説得力に磨きをかけて、意思決定をスムーズに進められるようになりたいです。

過去にプロジェクトマネージャーとして交渉に臨んだものの、一発OKがもらえず、必要な情報を改めて収集し直してから再挑戦せざるを得なかった経験があり、とても悔しい思いをしました。その時の私は、相手がどんな立ち位置の人物で、どんなポイントを気にするのかを自分なりに想像して事前にしっかりと準備することができていませんでした。自分が相手の立場だったら、どういうところが気になるかを常に考えながら、ストーリーを組み立てていかなければいけないと思っています。あとは「こちらもここまでだったら譲れるよ」と妥協できる水準を示すことも交渉をスムーズに進めるためには必要だと考えています。いずれも事前準備の時間が十分にあれば、できることかもしれませんが、タイトなスケジュールの中で実行していくためには、これらの思考を習慣化する必要があると思ってますので、日々鍛錬だと思って取り組んでいるところです。

ストレス発散とリフレッシュの仕方

今は子育てのフェーズに入っているので、あまり息抜く暇がないですね。平日は子供ともっと遊びたいという思いが私のストレスになっているところもあるので、土日は家族みんなでたくさん遊び、子どもを楽しませることでストレスを発散しています。とは言え、一人の時間も欲しいので、そこは今まさに模索しているところです。最近は朝5時に起きて30分でも1時間でも自分の好きなことをする時間を持つと意外と満足感があってリフレッシュできているなと感じています。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

社会人になってからも、奈良先端大の学生は本当に優秀で面白い人達が集まっていたんだな、ということを改めて感じることがよくあります。働く場所が違っていて卒業以来1度も会っていない同期の活躍をSNSで目にしては、「私も頑張らないと」と刺激をもらっています。山奥の小さくも充実した環境でみんなで2年間を乗り越えたからこそ、離れていても切磋琢磨できる関係性が培えたのだと思っていますので、あっと言う間の2年間ですが、ぜひ同期との繋がりを大切にして欲しいです。

また、私がそうだったように、なかなか研究が思うように進まなかったり、日々やらなければいけないことに追われて苦しい時期があると思いますが、ぜひ同期や先輩と意見交換をしたり、助けを求めながら、乗り越えていただきたいです。その苦しい時期を乗り越えた経験は必ず今後の社会人生活、その先の人生にも必ず活きてきますし、後から振り返ると人生の中でも忘れられない特別な2年間になると思います。

奈良先端大で身に付いた、現在の仕事で役に立っていること

研究でPDCAサイクルを回した経験は仕事の色々な局面で役立っていますが、奈良先端大だったからこそ身に付いたもの、という点でお話します。奈良先端大には学生の裁量に任せて「自由に」研究に打ち込める環境があります。研究と言っても、実験や解析するだけではなく、自発的に論文を探して読んで勉強したり、研究発表に向けて期限管理をしながらプレゼン資料を作ったり、論文を書いたり、時には勉強会のマネジメントをしたりします。「自由に」研究できる充実した環境だからこそ、また奈良先端大生の意識・向上心の高さがあるからこそ、みんな自然とこれらを行う雰囲気ができていると思います。このようにまるで社会人のように多くのタスクとスケジュールを管理するので、自己管理力が求められます。学生だった当時はあまり意識していませんでしたが、タスク管理やスケジュール管理など、社会人として必要な基礎力であり何年目になっても重要なスキルが奈良先端大で自然と身に付きました。

奈良先端大を目指している受験生へのメッセージ

奈良先端大は大学院に特化していますので、「これに興味がある!」「これを研究したい!」という強い思いを持って来ている人がたくさんいます。自分の研究分野以外のコアな話を聞くことができるのも、とても面白いです。そして何より、優秀で面白い人達がたくさん集まっていますので、在学中も刺激を受けますし、その先の人生に役立つ貴重な繋がりも構築できますので、ぜひ希望を持って、楽しみに目指していただきたいです。

奈良先端大で一番大変だったこと

私は奈良先端大の研究室に籍を置いてATR(国際電気通信基礎技術研究所)で、博士課程の先輩や社会人研究者の方達と一緒に研究をしていました。ATRでの研究生活は、必ず成果を出さなければならないプレッシャーもありましたし、何より私のバックグラウンドがATRでの研究内容とは全く違っていて新しく勉強することばかりだったので「少しでも周りに追い付かなければ」と毎日必死でした。人の脳についても知識を持っていなかったですし、脳情報の解析に必要なプログラミングもほとんど経験したことがなかったです。それに国際色豊かな環境ということもあり、研究生活を送る上で英語も必要で、とにかく自分に足りないものばかりで食らい付いていくところが大変でした。こんな私を最後まで丁寧に指導してくださった研究室の方々には今でも本当に感謝しています。

本当に今までで一番寝る時間が少なかった2年間だったかなと思います。寝ずに次の日を迎えることもよくありました。今思い返しても、私の人生の中で修行と言えるぐらい大変な2年間でしたが、同時に充実した忘れられない2年間にもなりました。

2年間の研究生活で頑張れた源

一つ目は、まさに「乗りかかった船」で、最後までやりきりたい、という強い思いです。本当に挫折しそうで、逃げ出したいと思った時もありましたが、「ここまでやってきたのだから」「長い人生からするとたった2年だし」という思いで、最後まで頑張りました。

二つ目は、自分が辛い時に一緒に頑張ってくれる同期がいたことですね。これは本当に大きいです。ATRで研究を終えてから奈良先端大の校舎に戻って、全く違う研究をしている仲間とプレゼンテーションの練習をしてアドバイスをもらったり、肩を並べて論文を読んだりしました。一人だと挫けそうなことも一緒に頑張る仲間がいたからこそ乗り越えられたと思います。2年間の奈良先端大の生活の中でも、こんな風に切磋琢磨したことが一番記憶に残っていますね。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。