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公務員の経験を活かして、民間企業へ転職、会社の変化を楽しむ/クリアウォーターOSAKA 村崎愛さん

超氷河期時代と呼ばれていた頃に、就職活動をされていた村崎さん。周りの人も含めて、就活にはとても苦労されていて、最終的には公務員試験に合格しました。その後、長年勤められた市役所から民間企業へ転職して、現在は会社の成長、変化を面白いと感じながら、仕事をされています。就職活動、市役所での仕事、転職の経緯と転職後の環境を中心に、詳しくお話を伺いました。

村崎 愛(バイオサイエンス研究科 博士前期課程2002.3修了)
奈良先端科学技術大学院大学では、脳や神経系が形成される初期に顕著に発現する遺伝子の機能解析取り組む。博士前期課程修了後、大阪市の下水道事業を実施する都市環境局(現建設局)へ入庁。公務員として技術職で多数の経験を経て、下水道施設を維持管理するクリアウォーターOSAKA株式会社へ転職、現在は主に国際規格(マネジメントシステム)取得を目指した業務を担当している。 

超氷河期時代の就職活動

私たちの頃は超氷河期と言われていて、研究を始めて間もない修士1年から就職活動を始めていました。早く出さないといけないということで、食品やバイオ系の色々な分野の会社へ、エントリーシートを100社ほど出していました。その内、面接に行けるのが10社ほど。周りは内定が決まり始め、「どうしよう…」となり、私は最後まで決まりませんでした。正社員の募集がなく、100倍、200倍の採用倍率の会社も多く、なかなか厳しい時代でしたね。周りは、ドクターに進学したり、技術系の派遣会社に就職したりしていました。

「民間は難しいな」というところが正直あって、公務員も視野に入れてみてはどうかと思い、結局1年間、浪人して公務員になりました。修士2年の夏明けた頃では、募集はなさそうだったので、そこから翌年の6月頃にある公務員試験の方に目標を切り替えて、勉強し始め、その結果、合格しました。

公務員として、大阪市の下水道事業へ

はじめは、大阪市の下水道事業を実施する都市環境局に入って、技術職員として下水処理場の水質管理や処理にかかる調査研究の部署で仕事をしていました。

最初は水質試験所に配属されて、下水の水質分析や処理方法の開発に関する調査研究に携わっていました。その次からは実際に処理場の維持管理をする部署に行き、その後の部署では調査研究をスケールアップした、実際の下水処理場フィールドを活用した技術開発に取り組み、メーカーと共同で新しいシステムを入れたり、下水の技術を海外に持って行ったり、そのような仕事に携わっていました。

今までは仕事のピンポイント的なところを見ていましたが、最後の部署は業界全体が見えてきたので、「この中で私はこんな仕事をしていたんだな」と分かりましたね。

この頃、大阪市において「民間でできることは民間で」という話が出て、上下分離(下水道施設を作り、所有する方と維持管理する方で分けること)の取組が進み、下水道施設を大阪市で所有しつつ、維持管理は民間の新しい会社がすることとなりました。現在私が務めているのが、その維持管理側・民間の新会社、クリアウォーターOSAKAです。

水道事業は大きくお金が動きます。その一方で、技術者が減ってきて、今までの仕事が回せなくなってきています。行政も同じで、これからはどんどん民間活用していかないといけない時に、私たちクリアウォーターOSAKAのような会社が行政の代わりもしながら、下水道事業を進めていくことがこれからの主流になると感じ取って転職したこともあるので、業界全体が見えてきた最後の部署が一番面白く、色々なことが分かったかなと思います。

転職の経緯と転職後の業務内容

クリアウォーターOSAKAが設立時にいた方は、元々大阪市の職員だった人でした。民間になってイキイキと働く感じに外から見えたので、「役所は堅苦しいところがあるけれど、民間はもっと自由にできる」と思っていました。また、立ち上がったばかりの会社なので、「どう転ぶか分からないけど、面白くて、変化があるのかな」と思い、転職しました。

転職して1年ほど経ちますが、仕事の自由度は割と広がった気がします。公務員時代は異動があるので仕事のスパンが短く、2~3年で部署内のメンバーがパンパンパンッと異動しますが、クリアウォーターOSAKAの業務は維持管理を中心に腰を据えて取り組んでいます。また、人も少ない中で新規業務にも取り組んで、様々なプロジェクトが立ち上がり、まさに会社が成長しているのを感じられ、色々なことを経験させてもらっています。

現在の仕事は、国際認証のISO 55001に取り組んでいます。これは資産の管理を対象とする国際規格、人と物とお金という限りある資源を有効に活用して持続可能な形で運営していこうとするマネジメントシステムを認証するもので、その認証取得に向けて組織をどうアレンジしていこうか、今ある仕事をどう効率化していこうかと考えています。

クリアウォーターOSAKAは現在大阪市の下水道の維持管理業務を中心として取り組んでいますが、民間ならではの工夫により、効率よく維持管理した結果、生み出された資金や人材といった資源を活用して、他都市の支援等の新しい業務を実施し、更にそこから収益を得て、そして下水道事業全体の課題に取り組んでいる、というとても面白い会社だと思います。

また、子供が二人(あ、そういえば夫も)いるのですが、会社の制度的にも風土的にも仕事と家庭の両立はできていて、働きやすい会社でもありますね。

働く上で一番のモチベーション

一番言われて嬉しいことが「私とやりたい」と言ってもらえることです。上司から言われるためには、まずはしっかりと仕事のアウトプットを出すことだと思います。後輩から「一緒に働きたい」と言われることが、実は一番ありがたくて、そう言ってもらえるために、経験や達成感、感動などは一緒に共有したい、成功体験(失敗体験?)もしっかりと作っていきたいと思っています。「一緒に働きたい」と言ってもらえる、「一緒のチームに行きたい」と言ってもらえることが一番のモチベーションですね。そう言われたいがために色々と下心を出しつつ…日々精進しています。

これからやっていきたいことと、実現するための課題

今、ISO認証取得の取り組みで人、物、金をしっかりと最適化したいと思っています。最適化するために、自分が経験してきた水質管理や運転維持管理のノウハウなどを数値化、見える化して残したいです。現場目線で品質を管理する手法として、会社の標準型を作りたいと思っています。

そのために、やはり一番は人の問題があります。「こういうことをしたいです」と言った時に、どれだけ共感が得られるか、支援してもらえるか、実際にお金を任そうと思うと、根拠やデータ、投資回収見込みが必要だと考えます。ちょうどISOを取ろうというマネジメントの武器を持っていますが、このISOの枠組みを使って「こんな品質管理をすると、効率が良くなるのではないか」と提案して、具現化していかないといけません。ただ、その中は課題だらけで、人の問題と、お金の問題と、老朽化施設などの社会課題の問題…これら課題も一定共存することを踏まえて、これらの中でバランスを取りながら、「一番まともな道は何だろうか」の答えを出していくことが、本当に役立つ、実際に使える品質管理です。しっかり総合的に妥当だと示せられるような管理水準をしっかり現場を見て考え抜いていければ良いと考えています。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

毎日大変だと思いますが、やっぱり学生であるこの瞬間はとても大事で、後になればなるほど、すごく貴重だったと思います。本当に1秒1秒を楽しんでほしい、苦しんでほしい、今日と明日で、例え、1ミリでも成長していたら、それは10年後、すごいことになっています。私も戻れるのなら、もっと友達と色々なことをして、もっとしっかり研究したと思います。今の時間と昔の時間では、感情の振れ幅も違うし、特に奈良先端大は勉強に関して、とても良い環境で、求めれば全部与えられる感じなので、思いっきり今を満喫してほしいです。学生時代の経験は本当に大事です。

ただ、未来を悩んで、今をなかなか楽しめない時もあるのは、私もそうだったから、分かります。とはいえ、就職氷河期でも、こんな感じで何とかなっていますので、未来は未来で何とかなると思います。今やっていること、今の少し先の明日の自分のために、今日できることを少しだけ頑張る、ずっと続けることがとても大事です。寝食共にしている友達も大事にしてください。趣味があるなら、それも途切れず、今やっていることに集中してほしいです。就職活動中は、毎日「10年後は何しているんだろうな」と思っていましたが、今思い返せばその時間は無駄だったと思っています。当時の自分に「そんなことを考えてないで、もっとマラソンしとき。心配せんでも未来のあんたは本当にすごく良い環境にいるんだよ」って伝えたいですね。

奈良先端大生活の中で培った、仕事で役に立っていること

仮説を立てて、それに向かってやることは、仕事でも通じることだと思います。研究は何でもうまくいくわけではないので、思った結果でなくても、2週間に1回くらいは報告しないといけない。その時に、何で失敗したのか」「次どうすれば良いのか」を考えて、「どうするか」まで言わないと、突っ込まれる環境でした。「これをここまでにこうして。こういう見通しを立てて、こう報告しないといけないね。でも、できなかった時にどうしようか?次はどうやって挽回しようか?」というように報告する、今でも仕事でそれがとても活きています。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

研究に関しては非常に良い場所だと思いますし、先生方のサポートや先輩のサポートもすごく良く、やりたい研究も自由度が高くできたので、まだやりたい研究が決まっていない人であっても、絶対やりたいことが見つかると思います。大学院大学なので、志を持った人が来ていて刺激も多いです。色々なところから集まってきて、もう一度刺激がもらえることは奈良先端大の魅力なので、迷っていらっしゃるのであれば、一度足を運んでキャンパスを覗いてほしいですね。

研究室の雰囲気と印象に残っているエピソード

私の研究室は女性がほとんどで、和気あいあいと、談話室にあるキッチンで料理したり、お誕生日会をしたり、していました。今となっては良い思い出ですね。おととし、教授の退官パーティーがあって、その時に久しぶりに会った時は、「遊んでいたね」という話で学生に戻った気分でした。月日が経っていてみんなお母さんになって、仕事や子供の話題もあって、懐かしかったですね。

私たちが学生時代にマラソン大会が始まりましたが、私たちは飛び入り参加したので、運動靴ではなくて、ヒールで走っている子もいて、そんな中、ガチで走って、入賞したことも面白かったですね。他に、ソフトボール大会にも参加しましたが、良い思い出です。

また、私の研究室は留学生の方がとても多く、国際色が豊かなラボだったので、お祈りの時間になると、抜けられたり、海外の面白い食べ物を持ってきてくれたり…。すももを差しあげたら、「なんて美味しい食べ物だ」と喜んでくれたり…。英語を喋る機会にもなって、すごく面白かったですね。コミュニケーションは苦労しました。絵を描いて、手や身振りで、片言の単語で通じ合って、一緒に何とか研究をしていました。充実した二年間で、良い友人にも恵まれました。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。