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【読書録】マリアビートル

はじめに

 伊坂幸太郎さんのマリアビートルを読了しました。本作は「殺し屋シリーズ」の第2弾に当たる作品です。東京発の東北新幹線の中で繰り広げられる殺し屋たちのバトルと駆け引きが魅力です。ハリウッド映画化も予定されている本作の感想を思いつくままに書きます。

キャラの個性が立ちまくっている

 まず初めに挙げるべき本作の魅力はキャラの個性が際立っていることです。登場人物たちはほとんどが殺し屋です。殺し屋と聞くとどんなキャラクターをイメージするでしょうか?本作に登場する殺し屋たちは一見そうは見えないけど個性的な人物ばかりです。例えば主人公格の一人である七尾は自分が考えた方向に行動すると必ず悪い方向に行くという確信に似た何かを持つほどのネガティブです。(実際、悪いいことが起きます)一言でいうなら「不幸男」といったところでしょうか。しかし、ひとたびピンチに陥ると頭の回転が速くなり、殺しにも躊躇がなくなります。こういった一癖も二癖もある登場人物たちのたちの一進一退の駆け引きが繰り広げられます。結構ページ数が多い本ですが、読みだすと止まりませんでした。

新幹線という舞台の閉鎖性

 本作でかなり秀逸であると感じた点は舞台設定です。物語は終始、東京発の東北新幹線の中のみで進みます。新幹線という閉鎖空間で殺し屋たちがバトルすれば、すぐに決着が着くと思いきやそうではありません。同じ列車に乗っているのにも関わらず、相手を見失ったり、はたまた拘束したりと目まぐるしく展開していきます。そして新幹線は走っている間は逃げ場が閉鎖空間であり、駅に停まっている間は逃げることもできるというのがこの作品のハラハラ感を倍増させています。常に次の駅に着くまでに決着をつけなければならないという切迫感がたまりませんでした。

悪のコントラストが秀逸

 本作の登場人物はほとんどが殺し屋であるため、基本的に悪人です。しかし一人一人の個性が際立っており、全員を悪人だと思うことは難しかったです。逆に殺し屋ではないキャラクターが一番の悪人と感じるほどです。そういった点では悪のコントラストというものも本作の魅力の一つだと思います。特にラストは「悪が悪を制す」といった感じでしびれました。

さいごに

 本作は著者の「殺し屋シリーズ」の2作目であり、1作目の「グラスホッパー」の登場人物やエピソードが登場するため、先に読んでおくことをお勧めします。(もちろん本作から読んでも十分面白いです)私はシリーズ3作目の「AX」→「グラスホッパー」→「マリアビートル」の順で読みました。同じシリーズではあるものの、内容はかなり違うので順位をつけるのは難しいです。本作を読んで面白いと感じたら他の2冊を読むこともオススメします!


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