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女の子の名前以外で【ソルタナ】について知った日

ヨースリー・シャリフ先生のクラスで、アラブ界のレジェンド歌手ウンム・クルスームの【Ansak】を取り上げた時、楽曲のアレンジは楽器のみでの構成でした。

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ヨースリー

ウンム・クルスームの歌がどうして踊るのが難しいか知っているか?

それは【ソルタナ】だからだ。

彼女が歌い出すと、演奏者はリズム(テンポ)に従うのではなく、彼女に従う。

演奏者は、その時の彼女の息遣い、紡がれるフレーズの長さ、存在から放たれる全てに耳をそば立て、目で捉え、感じ、彼女に合わせて演奏する。

このアレンジでは演奏者しかいないが、歌詞の部分が始まると、歌詞の旋律を担当する演奏者(バイオリン)はウンム・クルスームが歌っていた時のように、自分が感じるままに演奏している。

だから、カウントをしないで旋律を感じて踊りなさい。

前奏部分を踊るのは難しくない(一定のテンポなので)。

歌詞の部分に入ると踊るのが難しいのはそういうことだ(歌い手と一体にならなくてはいけないので)。

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ソルタナとはアラビア語で支配者、統率者などの意味ですが、ウンム・クルスームが音楽を引っ張っていくという意味でクルスームのスタイルを【ソルタナ】と言うとヨースリーは教えて下さいました。

ウンム・クルスームが歌う時には、一曲の歌の長さは決まっていませんでした。

彼女は歌を通して聴衆との間に心の通い合いや一体感を築き、歌詞を繰り返し歌うことで聴衆との間のエネルギーを増幅させ、この繰り返しにより引き起こされるエネルギーの交換を大切にしたからです。

彼女の求心力に聴衆も演奏者も引きつけられ、彼女は音楽を通して人々をも統率し、彼女を中心として全てのエネルギーが集まり、その一体感がタラブ(音楽による恍惚感)を引き起こすのだと思いました。

大勢の聴衆に届くエネルギー。

そして聴衆からの全てのエネルギーを1人で受け止める器。

何て凄い方(エネルギー)なのだろうと思います。

人柱という言葉がよぎりました。

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人柱(ひとばしら)とは、人身御供の一種。大規模建造物堤防港湾施設、などなど)が災害自然災害や人災)や襲によって破壊されないことを[* 1]祈願する目的で、建造物やその近傍にこれと定めた人間を生かしたままで土中に埋めたり水中に沈めたりする風習を言い、狭義では古来日本で行われてきたものを指すが、広義では日本古来のそれと類似点の多い世界各地の風習をも同様にいう。

(ウキペディアより抜粋)

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人と神を繋げる架け橋になるという意味で。

そして、人々は、彼女を通して神と繋がり、自分自身が神の子であると思い出す。

彼女は人柱だったのだと感じました。

彼女のこの類まれない吸引力が、芸術家としてだけでなく、レジェンドとまでなった理由の1つと言われています。

そして、彼女の曲がタラブソングと言われる所以です。

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