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三人官女のひな祭り

物心ついたころから、三姉妹の末っ子の私には納得できないことがいくつかあった。

自転車は姉たちのお古。友達が新しくてピカピカの自転車を乗り回している中、私はさび付いて色落ちた自転車に乗っていた。三角定規にリコーダー…小学校で必要な文房具も6歳離れた姉の物をほとんど使っていた。

特に納得できなかったのは、ひな人形だ。

わたしたち三姉妹には、一人ずつ全く異なるひな人形がある。

一番上の長姉は7段以上あるひな人形で、三人官女に五人囃子、きらびやかな装飾品が並び、台にはオルゴールがついていた。長子には親の注目とお金がそそがれるとはこのことを言うのだろうなというひな人形。

長姉は、まさに長姉らしく優しく真面目、初孫を両親に抱かせたのも、実家の古びた平屋を二世帯住宅に建て替えたのも彼女。これで両親の老後も安泰だと妹たちは自由奔放に転職や転居を繰り返している。

2番目の次姉は、大きめのお雛様とお内裏様に立派な五色の台と金屏風。私は次姉のお雛様がお気に入り、特にお内裏様の大きな剣で遊ぶのが好きだった。ただし、遊び過ぎて剣を折ってしまった…記憶がおぼろげだが、折った犯人は私だ。

そして、3番目の私のひな人形は…お雛様とお内裏様がいない!?

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