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それでも息子は毎日ピアノを弾く

中3の長男はピアノを弾く。学校から帰ってくると必ず弾く。休日は朝から弾いている。たまに夜中でも弾いている。毎日、少なくとも1時間以上は弾いている。

1年前まではそんなに弾かなかった。レッスンがある日に「やばい、練習してねぇわ」と言いながら、10分くらいダーと弾いてピアノ教室まで走って行っていた。

それが去年、部活を引退してからというものの、毎日弾くようになった。

8月から受験が終わるまで、ピアノ教室にはお休みをもらっている。だからクラッシックを弾くことはなくなったけど、自分の好きな曲や流行りの曲をアレンジしながら弾いている。

1曲を納得するまで弾き続けることもあるし、ここはストリートピアノか!ってくらい色んな曲をメドレーで弾きまくっている時もある。

それは受験という現実から逃げているんだろうと思っていた。実際、夜になって「勉強しないとやばいわー」と言うこともよくある。

私からすれば、やばいのならピアノを弾いてる時間、勉強すればいいんじゃないのと思うのだが、長男からするとソレとコレは別物らしい。

「ピアノはピアノ、勉強は勉強」と言う。

そんなに好きならと「音楽科のある高校に行かないの?」と聞いたこともある。すると、こいつは何を言ってるんだと言う顔で、

「えっ?勉強したら、ピアノ嫌いになるじゃん」と返された。

そんな長男の思考回路は理解し難いのだけど、どうも弾こうと思って弾いている訳ではなく、ピアノを弾くことは自分のルーティーンであって、学ぶものではないらしい。

だから、「さっき、弾いていた曲は何?」と聞いても、「覚えてない」と答えることもよくあるし、よっぽど意識しないと同じアレンジは二度と弾けない。


そんな長男も、受験が押し迫った今日、さすがに危機感を感じ始めた。受験日まであと何日だと言いながら、やるべき勉強計画を立てて壁に貼り、その計画表を見ながら、できたところは線を引いて消していく。そうやって自分自身にプレッシャーをかけるようになった。

それでも、相変わらずピアノは毎日弾いている。

最後の模試の日、少し早く起きた長男が朝からピアノを弾いていた。2階から流れてくるメロディーを聴きながら、夫と二人で「どうしようもないね」と呆れながらも、心の中で『天晴れ!』と思った。

どんなに切羽詰まっても「ピアノはピアノ、勉強は勉強」と言い切る長男は、ここまでくるとむしろ清々しい。好きとか嫌いとか、現実逃避とかプレッシャーとか関係なく、毎日ピアノを弾くことだけはブレない長男に、私はエールを送る。

受験まであと1ヶ月と少し。

頑張れ。



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