そんな天気も悪くない
小5三男は理科の授業で天気について勉強している。
ある日、宿題と一緒にペロッと出してきたプリントを見ると、『天気について考えよう。』という内容で、『晴れ』『くもり』『雨』『雪』について、三男なりの説明が書かれていた。
晴れ ⇨ たいようがぴかぴかのとき
くもり ⇨ たいようがみえないとき
雪 ⇨ あめがすごくつめたくなってくもがしろいからそこをとおってゆきになる
なかなかの説明だ。晴れはまだいいとしても、くもりは先生から「夜はどうなのかなぁ?」と突っ込まれていたし、雪においてはドラえもんの見過ぎだと思う。あんな三男、雲は「雨雪こうかんきぃー」じゃないんやで。
書字障害があり、他の子より学習能力も遅れている三男は、こういうプリントではいつも平仮名ばかりだし、小5になった今でも頭の中はファンタジーで溢れている。
しかし底抜けに明るい性格と、分からないことを分からないと言える強さ、そして何より「学校が楽しい!」と弾ける笑顔で登校する姿を見ると、私の胸にチクリと刺さった小さな棘はするりと抜け落ち、この子の成長を悲観せずに楽しもうと思えてくる。
だから雨の説明を読んだ時、私は素直に思った。
あぁ、素敵だなぁと。
雨 ⇨ くもがなみだをだしてる
答えとしてはバツかもしれない。でも私は三男が雨を見て「雲が涙を出してる」と感じたのなら、それはすごく素敵だと思う。
人より幼い三男が、どんな風に世界を見ているのかは分からない。しかしそれはきっと知識を得た私達が忘れてしまった『感性』だ。
太陽がピカピカだったら『晴れ』で、太陽が隠れたら『くもり』、冷たい雨が雲を通ったら『雪』となり、雲が涙を流したら『雨』。
そんな天気も悪くないなと思う。
*
「三男の雨の説明、素敵やろ?」
「うん?」
塾から帰ってきた長男にプリントを見せると、「三男らしいね」と笑った。ふと、長男ならどう答えるのだろうと思って、「晴れの説明してよ」と聞いてみた。
「晴れ?晴れは雲の量が8割以下で…」
「ごめん、もうええ」
知識があり過ぎる長男の説明は、感性のカケラもなかった。
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