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ボランティアのお値段

収穫時期の隙間時間にSNSを眺めていると、欧州になくて日本にあるものをよく見かけます。ボランティアとして収穫や仕込みにご参加いただく方を募集する呼びかけです。

欧州では日本的なボランティアは基本的に労働搾取として取り締まりの対象になるためSNSなどで見かけることはありませんし、収穫時期にいくら人手が欲しくてもワイナリー側がそうした人員を募集することもありません。一方で日本では収穫時期のワイナリーに限らず、ボランティアというものを積極的に活用しようとするのをよく見かけます。私的企業や団体に限った話ではなく、過日の東京オリンピックの際にやりがい搾取として話題にもなりましたが、国や地方自治体もまた例外とは言えません。

規模が小さく資金力に乏しい場合などは特に、ボランティアをお願いして業務を遂行していく手法は魅力的です。手元資金を消費することなく手の数を増やすことが出来るとなれば、それは振り切りがたい甘美な誘惑になります。

ところでこのボランティア、高いのか安いのか、一歩踏み込んで考えたことはあるでしょうか。

結論から言えば、私個人の見解としてはボランティアは高い、と思っています。タダより高いものはない、とも言いますが、まさにその通りです。

ボランティアは確かに表面的には金銭の授受が発生しないため安い労働力のように感じられます。しかし実際には相手に対して支払う直接的な金銭が発生していないだけで、本質的にはとてつもないコストを支払う必要があるのがボランティアだと考えています。

ここではワイナリーを例にボランティアという存在にどれだけのコストが発生しているのかを考えていきたいと思います。

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