さよならが苦手だった。
昔から「さよなら」が苦手だった。
3学期の終業式後に行われる離任式が苦手だった。
「みなさん、今までありがとうございました」
「さよなら」
何度も何度も繰り返される「さよなら」。
教わっていなかった先生でも、あまり見たことのない事務員さんでも、
「さよなら」を言われるたびに、涙が溢れそうになった。
学校では毎日毎日「さよなら」を言っていた。
「起立」
「礼」
「さよなら」
あの「さよなら」が苦にならなかったのは、また明日会えると知っていたからだ。
「さよなら」は「さよなら」じゃなかったからだ。
人には卒業があるから、定年があるから、寿命があるから、
いつか「さよなら」をする日は必ず来るけれど、
それまでは「またね」を言わせてほしい。
「さよなら」はいつまでも苦手なままだ。
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