久々、スコットランド警察小説を読む(2007/11/12)

記事の初公開日:2007年 11月 12日

ハヤカワポケミスを読んでいる。
文庫本やハードカバーよりポケミスは海外ミステリを読んでいるという満足感が違うと感じるのは私だけ?
読んでいるのは「花崗岩の街」。英国ミステリー界に颯爽と登場した新星・スチュアート・マクブライトのデビュー作。
舞台は、著名な建築物のほとんどが花崗岩で作られているので「花崗岩の街」とよばれているスコットランド東北部の港湾都市アバディーン。
凶悪犯に刺されて1年間休職していたローガン・マクレイ刑事部長が職場復帰した早々、水路から幼児の変死体が発見され、これをきっかけに、街では幼児が姿を消し、続けてまた子供が犠牲になる。おまけに警察内の情報がマスコミに流れている。休職している間に上司も同僚も変わって苦労するローガン。
刑事たちが「この雨をなめてはいけない。アバディーンの雨は3年間は止むことがない」と軽口をたたくように、シーンはずっと寒々とした雨ばかり。しかし、読み進むにつれ寒風と雨のアバディーンの雰囲気がハードボイルドな魅力になってくる。まだ読み終えていないので、ミステリとして謎の全様を評価することはできないが、警察ミステリーとしてはすでに及第点は超えている。派手さのない主人公だけど魅力的。

アバディーンといえば、長崎に住む私には、トーマス・グラバーの出身地としても親しみがあるが、なんといっても、中村俊輔が所属するスコティッシュ・プレミアリーグにチームを持つ都市としても興味がある。
そのチームは「アバディーンFC」。チームの歴史は古く、過去にあのマンチェスターユナイテッド監督アレックス・ファーガソンがチームを率いたことがあり、セルティックの現在の監督ゴードン・ストラカンも選手として在籍したことがあるチームだ。過去には輝かしい記録があるようだが最近はリーグ優勝から遠ざかっている。
「花崗岩の街」の中でも、ありえないことをたとえるのに __ドンズの愛称で知られるアバディーン・フットボールクラブがスコティッシュ・プレミアリーグで優勝するのと同じくらい、見込みがないというわけだ。__という表現をしている。(日本だったら熱狂的なサポーターにクレームもらいそうな表現、こわっ)
「グラスゴー訛りが鼻持ちならない」とか、「ゲール語を話すやつはばかです」とか、その土地での人にしかわからない複雑な感情のようなものも随所にでてきて、英国の中のスコットランド、そのなかの第3の都市というアバディーンの位置づけのようなものへのシニカルな眼差しも感じられる。

いずれにしろ、イアン・ランキンのリーバス警部シリーズにつづく、新しいスコットランドの警察ミステリーを発見できたのは、大収穫。ポケミス独特の手触りを楽しみながらサクサクと読破できそう。

教会とパブと雨がやたらに多いと書かれているアバディーンだが、ミステリーの舞台としてはなかなか魅力的と感じている。

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