中村俊輔という財産(2014/4/4)

記事の初公開日:2014年 04月 04日


雨の休日になったので読書日
サッカーマガジン「ZONE」
中村俊輔のインタビューにはいつも新しい発見があって興味深い。
彼はあまり自分の心情を語らないし、サッカー愛やチーム愛や愛国につながるような言葉で煽るような発言もしない。感情に訴えることを極力控えるような言葉選びをする人だ。
反面、サッカーの中身に関しては平易な言葉を使い、具体的でとても分かりやすい。
彼が経験してきた日本、イタリア、スコットランド、スペインのサッカーやサポーター気質、それぞれに所属したチームのコンセプト、練習方法など、「そうなんだ?」や「ほー!」がいっぱいで相変わらず興味深い。

俊輔は昨年のインタビューで引退したらフリーの「フリーキックコーチ」というジャンルを作ろうかななどと言っていた。いろんなチームに短期間滞在してそのチームのGKやDFにスペシャルなFKを体感させるみたいな話だったが、こんなことを思いつくのも俊輔らしい。
今回のインタビューでもスペイン・エスパニョールでの練習を具体的に語っていたが、もっと詳しく教えて欲しい、指導して欲しいというチームは数多くあるんじゃないだろうか。

昨シーズンの彼の活躍は、選手の価値を若さに求めていた日本のサッカー界に一石を投じた。彼の活躍を見て奮起したり再生したベテラン選手たちもいるはずだし、チームに必要なベテランの経験値が見直されたと思う。
2008年に出版された自著「察知力」(幻冬舎)では、体格も劣るし足も速くない自分のような選手がどこまでやれるか「実験台」だと思っていると言っていた。また海外で活躍中にあっても「トップフォームのうちに日本に戻ってきて、経験を日本のサッカーに還元する」とも言っていた。
今彼はその言葉を実践している。
俊輔のいいところは、そんな大きなミッションも日常のこととして自分の身の回りから始めているところだ。
彼はまたパイオニアでもある。
助っ人外人として海外に渡り、欧州チャンピオンズリーグでの得点や海外でのMVP選出など輝かしい実績もさることながら、その経験を日本に還元することを模索している。バラエティー番組が仕掛ける難題をクリアしてお茶の間にサッカー選手の技術の高さを披露し、自然体なキャラクターで新しいサッカーファンを獲得している。
いまでこそだれもが書いているというサッカーノートも中村俊輔を語る代名詞でもあり、そのノートの内容を公開したり(「夢をかなえるサッカーノート」(文芸春秋))、子供たちに向けて使いやすい「オリジナルサッカーノート」を開発して3冊セット540円という求めやすい値段で商品化している。サッカー以外での俊輔の行動は、プロサッカー選手にとってひとつのガイドラインになっているのではないだろうか。

「ZONE」の編集長・宮本恒靖はこの号の巻頭に「中村俊輔という財産」という文章を書いている。

中村俊輔という財産を所有しているのは横浜Fマリノスはもちろんのこと、クラブ,サポーター,ファン、さらには社会全体である。彼がもたらす感動や喜びを人々が享受し、時には悲しみを分かち合ってきたこの20年の月日はサッカー文化の醸成に多いにつながっている。
というフレーズでまとめられていた。

俊輔ファンとしてとても嬉しかったのはセルティックが今でも俊輔が帰ってくることを待っているというレポート。セルティックにとってナカはレジェンドの一人なのだ。
選手として最後の花道はセルティックで飾って欲しいというセルティックCEOやサポーターの思いは今も続いている。俊輔も「セルティックパークのあの雰囲気は忘れられない。現役を引退する前にもう一度あそこでプレーしたいという気持ちは心のどこかにある」という。
中村俊輔にとってセルティックはキャリアの一時代ではなく、もう1つの帰りたい場所であるということをこのレポートで知ることができた。

6万人のサポーターが唱う「You'll Never Walk Alone」に迎えられて緑と白のユニフォームを着た中村俊輔が再びセルティックパークでプレーする。
そんな夢のまた夢と思っていたことにも可能性がある。
マリノスサポーターには申し訳ないがセルティックの25番がいちばん好きな私には可能性があるというだけでも嬉しい。


もう1冊は逢坂剛 著のミステリー「百舌の叫ぶ夜」(集英社文庫)
20年以上前に読んだものだが、最近テレビドラマ化されると聞いたので再読した。
シリーズで4作くらいあったと思う。読んだ当時硬質だが魅力的な作品だと思ったのでなんでいままで映像化されなかったのか不思議なくらいだ。
テレビドラマとしてどのように変わるのか楽しみ。

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