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【マッチレビュー】2022 J3 第11節 テゲバジャーロ宮崎vsAC長野パルセイロ

『2試合連続…』


 悲劇が2試合連続で起こってしまいました。

 6月5日、大雨のユニスタで行われた第11節テゲバジャーロ宮崎vsAC長野パルセイロの試合は、1-0でホームチームの勝利となりました。得点が生まれたのは後半アディショナルタイム、再三与えてしまっていたCKのピンチでした。途中交代でピッチに入った橋本選手がマークを振り切るとCKを頭で合わせてファーサイドに流し込み。

 直近2試合チャンスを作りながらも得点できなかったテゲバジャーロ宮崎にとって待望の先制点となりました。一方のAC長野パルセイロとしては前節に続いて後半アディショナルタイムでの痛恨の失点…。5月の未勝利に続いて6月のファーストマッチでも勝利することはできませんでした。
 
 テゲバジャーロ宮崎はホームゲーム連続無敗記録を12試合とし、今季リーグ戦でも8試合連続で無敗を継続しています。直近の2試合で勝ち切れていなかった分、最後にホームで敗北を喫したパルセイロ相手に勝利したことで上位浮上に向けて勢いがついたことでしょう。
 一方のパルセイロは、これで公式戦4試合勝ちなし。うち3試合は無得点と5月以降急激に失速し、順位も暫定9位、昇格圏との勝ち点差8と大きく後退してしまいました。11試合で12得点、12失点と決して悪くはない数字ですが、悪くない数字というだけで上位陣に比べると得失点という形で明確な特長が見られないとも言えます。

 上位3チームがそれぞれ1敗しかしておらず、混戦となったのは第2集団以降で、戦国J3と予想されながらも想像以上に上位陣のハイペースな勝点獲得が進んでいます。勝点差ということだけで考えると第11節時点で昇格圏との差は8。まだシーズンも3分の1なので何が起こるかはわかりませんが、試合を終えるごとに昇格圏内との勝点差を確認する段階は、一旦休憩ということになりそうです。より目の前の勝負でどう戦い、スタイルを積み重ねていくかに照準を合わせて戦っていく必要があるでしょう。

 大雨の中、ゲームプラン云々ではない場面も普段より多かったかと思いますが、今節もしっかり振り返って次節に向けたポイントを整理し、アップデートしていきましょう!

前半

想定内の試合運び

 お互いに試合前の大方の予想通りに試合が進んでいった前半だったかと思います。

 テゲバジャーロ宮崎のビルドアップは2CB+1アンカーが起点となり左右のSBに預けながら縦パスのタイミングを狙うスタイル。対するパルセイロも相手のビルドアップに対しては前線から中央への楔のパスを塞ぐようなお馴染みの4-3-3守備ブロックでした。

 この形で相手のやりたい攻撃を防ごうとするパルセイロと楔のパスから相手ゴール方向に対する勢いで前進してこようとするテゲバジャーロ宮崎という構図が基本的には続いていきます。この噛み合わせになるとズレが生じてくるのは、やはりテゲバジャーロ宮崎のSBとそこに圧力をかけるパルセイロのIHのところになってきます。SBが低い位置の時はWGが2度追いする形でも対処できますが、基本的には高い位置で攻撃の糸口を見つけようとするのがテゲバジャーロ宮崎の攻撃方法です。

 全体としてボール奪取位置とボール奪取タイミングが共有できていれば、相手のビルドアップを絡めとる強固な網が完成します。ただ、前半の間のピッチコンディションは水たまりというよりもまだ表面に雨粒が付着している程度で、ボールがよく"走る"状態でした。当然どんなに足が速い選手でもボールの進む速度には勝てないので、中盤3枚のスライド状況によってはIHが相手SBに寄せ切れない場面も出てきます。

 上図のように相手のIHがパルセイロの中盤ラインの"表"のスペースでボールを引き出そうとするなら、WGの選手がボールの移動中に下がることである程度監視することはできます。

 前半から相手CKがこちらと比較して多かったのは寄せ切れなかった時にSBの背後側からWGにランニングされるところに対して苦労したからだと推測します。右サイドと左サイドのメンバーを比較し、相手のこれまでの攻撃の主軸となっていたサイドを考えるとボールの取り所は、やはりパルセイロ側の右サイドだったかと思います。
 両サイド共にWG-IH-SBの3人で「今取りに行くべきなのか」「今は中央を封鎖するために行かないべきなのか」が揃っている時は網が完成していましたが、そうでないときは深い位置までボールを運ばれてCKに繋がってしまったかと思います。特にピッチコンディションのせいか若干DFラインが重くなった時にIHの選手がボール奪取に出ていったところのギャップをつかれる場面から前進されてしまったのではないでしょうか。

あと一工夫…

 攻撃に関しては、パルセイロは普段よりも鋭さを意識して試合に入っていたかと思います。

 相手のビルドアップを引っ掛けたら、パルセイロの守備の第一関門である3トップにすぐさま預けて攻撃のスイッチを入れることが直近の試合に比べると目立ったいたのではないでしょうか。前節テゲバジャーロ宮崎が戦った福島ユナイテッドFCも鋭い攻撃から決定機を何度も作っていたため、狙いとして非常に有効な策だったかと思います。

 しかし、あと1人…,あと1歩…,がなかなか足りない攻撃でもあったと言えます。数的同数or1枚少ない状態で3トップに入った時に3人のコンビネーションでシュートまで運んでほしい場面でスピードダウンしてしまう、あと1人サイドからの追い越しがあれば…。という場面も数回ありました。ここは選手個人のクオリティ依存の攻撃でもあるので100%成功させるのは難しいところですが、良い形で攻撃のスイッチが入ることが比較的多かったと感じたので2度ほど枠内シュートに持ち込んでほしい気持ちはあります。
 また、ファイナルサードの崩しに差し掛かったところで、攻撃陣の大半がボールに臍を向けて要求している場面も勿体無い…。と感じたため、個人のクオリティはもちろん2〜4人でのコンビネーションの質も最後の崩しでは求められてくるところだと再認識させられました。

後半

 後半に入っても前半から降り続いていた大雨は収まらずに、むしろ雨脚は強くなっていきました。スリッピーなピッチコンディションを通り過ぎて、水たまりになりボールが止まるような箇所が出てくると分析も何もない状況になってしまうわけですが…。まあ、許容範囲のピッチコンディションということで分析を続けていきます。

プレッシングと急所

 前半に続いて相手のやりたい攻撃を止めるための守備戦術はうまくはまっていたかと思います。

 決して走りやすいようなピッチコンディションではなかったはずですが、IHの2枚のプレッシングは鋭さを増し、前半よりもSBに対する守備の段階で引っ掛けることが多くなったかと思います。また、テゲバジャーロ宮崎のLCB→LSBのパスコースにボールが走りづらい水たまりがあったことも原因の一つかもしれません。

 パルセイロはテゲバジャーロ宮崎に対して取り所をSBに定めていたかと思いますが、相手SBに対して十分な制限ができなかった時のアンカー脇のスペースを使われる場面が後半になって増加しました。サイドレーンからアンカー脇に差し込まれるパスに対して強度を高くして外側へ弾き返せず、DFラインの前にボールがこぼれる場面が散見されました。セカンドボールに対して前向きに勢いを持って飛び込んでくるテゲバジャーロ宮崎の選手に対して若干遅れて対応するようなところもありましたが、決定機には至らせずDFラインが食い止めました。

背後を守る力

 パルセイロの守備組織的に3トップ+IH+SBでブロックの外側に追いやってライン際で相手をすり潰すような形が基本ですが、その分制限がかかりきらなかった時のアンカー脇のカバーは難しい対応になるのがはっきりしてきました。また、今節アンカーに入っていた宮阪も決して守備や個人の機動力に特長のある選手ではないため、一時的に広大なスペースを1人で見る状況でもありました。
 サッカーにおいてスペースが得点を取ることはなく、スペースに進入した人が得点をするのでどれだけスペースカバーの強度を許容するかという問題になります。

 アンカーに入る選手が所謂"潰し屋"タイプの選手であれば、バイタルの守備を任せてしまうような戦い方もできますが、基本的にパルセイロのアンカーポジションに入る選手は攻撃に特長のある住永や宮阪といった選手です。IHの選手は前方向にも睨みを利かせながら、自分の背後をどれだけ守れるかというところも求められてきそうです。セカンドボールの回収というところが大きなポイントであるからこそ、前節の山中や今節の三田といった選手たちが最前線ではなくIHで起用されているのかもしれません。もちろん攻撃の面でも、三田や山中といった一瞬の駆け引きや嗅覚で勝負する選手を相手DFの届かない位置から飛び込ませて得点を狙うこともできるので、4-1-2-3で次節以降も戦う場合、IHに入る選手の貢献度が今後の勝敗に大きく結びついていきそうです。

一瞬の隙

 やはり触れておかなければならない失点の場面。前節と今節は共に試合終了間際に失点してしまっているわけですが、今節の失点の方が前節の失点よりも"してやられた"感を抱きました。

 まずCKのボールの質として申し分のないクロスが入ってきました。パルセイロはニアサイドの低いボール対応のために2枚ストーンを置き、その後ろにニアポスト付近で空中戦で弾く役割の選手が1枚います。今回の失点ではそのストーンの選手がヘディングで届かないギリギリのところにクロスが入り、ファーサイドでほぼマンツーマンでついていたDFが振り切られ、その空いたスペースに走り込まれてしまいました。
 ストーンの選手の頭をわずかに越えるクロスの質に関しては相手を尊敬するしかありませんが、高さに特長のある橋本選手の動きについていけなかったのが厳しかったです。特に進路をブロックされた様子もなかったので、交代選手と90分間戦った選手の最後の一歩の差でやられてしまった失点でした。

まとめ

 2試合連続で試合終了間際で失点を喫し、勝点4が勝点1になってしまったわけですが、改めて試合を振り返ってみると悲観しすぎる必要もないと思います。相手が嫌がる守備は継続してできていますし、攻撃のスイッチとなるパスの鋭さはだんだん向上しています。ただ、あと1本のパス、1人の追い越しなど最後の崩しの場面で結果が出てきていないのも事実です。個人的には2列目の選手たちがフィニッシュワークに関わって来るようになると殻を破れそうな気がしているので、次節以降の攻撃はその辺りにも注目していきたいと思います。
 チームは間違いなく成長曲線の中にいると感じますし、結果だけが出ない試合も5月以降続いています。この成長を勝利をいうわかりやすい結果に繋げられるかは、ここからどれだけ成長曲線を急激に伸ばしていけるかが鍵になってくるはずです。シーズン序盤に掲げた『ORANGEの志』の下、全員がヒーローになる日を、J2に昇格する日を待ち望んでいます。
 次節こそ雌伏の時は終わらせ、雄飛への第一歩に。

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ

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