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2022 J3 第6節 Y.S.C.C.横浜vsAC長野パルセイロ マッチレビュー

 2022 J3リーグ第6節の中で最も早い時間帯に行われたY.S.C.C.横浜vsAC長野パルセイロ、両チーム共に勝点3が是が非でも欲しかった一戦は手に汗握る接戦となりました。今季のパルセイロにはシュタルフ監督、船橋、池ヶ谷、宮本、佐藤、大内というようにY.S.C.C.横浜に所属経験のあるメンバーが多いです。お互いにやり方を認知し合う両チームだからこそ生まれた接戦だと思いますし、前節大敗を喫したパルセイロにとって非常にやりづらい対戦相手であったと思います。しかし、1点差であっても無失点で勝点3を奪うという次節につながる結果は達成しました。
 今節、ゴールがなかなか生まれなかった原因や交代選手によって攻撃がスムーズに見えた背景などを分析を通して考察していきます!

①試合結果

 今節の結果は0-1でアウェイチームの勝利となりました。最小の得点数しか生まれなかった今節ですが、Y.S.C.C.横浜の決定機の数やパルセイロの保持時間を考えるともう少し試合として得点が入ってもおかしくない試合だったと思います。
 前半終盤に訪れたY.S.C.C.横浜の決定機が決まっていれば、もっと難しい試合になったと思いますし、前半からパルセイロが押し込んだところからシュートで完結する攻撃を組み立てられていたら楽な試合になっていたのかなとも思います。サッカーで「たられば」の話の並べても仕方ないですから、早速試合内容の分析に入っていきましょう!

②基本システム

 Y.S.C.C.横浜はメンバーの変更や個々のポジション変更はあったものの、基本的に前節のガイナーレ鳥取戦と変わらない3-4-2-1、パルセイロは大敗を喫した前節から山中→三田の変更のみでしたが、システム的な観点で見ると3バックから4バックに変更していました。
 前節RWBの位置に入っていた水谷をLSBに戻し、4バックのRSBには池ヶ谷を起用してきました。中盤の配置はこれまでの試合と同様の3枚となっており、シュタルフ監督の中盤に対する信頼度が伺えます。

③前半

 前半のほとんどの時間帯はパルセイロがボールを握り、Y.S.C.C.横浜が機を見てカウンターを狙うというのが45分間の概要でした。

【攻撃】

 パルセイロとしては、Y.S.C.C.横浜の5-4-1or5-3-2のブロックに対して4-1-2-3でボールを握りながらブロックの隙を狙う前半になりました。Y.S.C.C.横浜がファーストプレスの高さを低い位置に設定していたため、DFラインでは難なくボールを握ることができていた前半でしたが、シュートまで持って行ける場面は少なかったです。データとしても前半のスタッツを見るとボールを握れていたはずのパルセイロよりも、カウンターでシュートまで完結したり、セットプレーから際どい場面を創出していたY.S.C.C.横浜の方がシュート数が多かったです。何となくボールを握れていたというよりも、ボールを持たされていたという時間帯が続いた前半でしたが、シュートまで持っていけなかった原因はどこにあったのでしょうか。

 まず、前半の攻撃を牽引していたところについては、水谷-坪川-森川の左サイドユニットの連動性の良さが挙げられるでしょう。
 5バックでセットした相手を出し抜いて守備組織の隙を逃さずに決定機を作り出すことは容易ではありません。68mのピッチ幅に対して5人を配置することでDF間のギャップが狭くなり、攻撃側が崩していく際には正確なパスワークを必要とします。その状況で左サイドでは3人がお互いの立ち位置を確認し合いながら、足りないところに3人目が進入していくことで相手の守備組織にズレを生み出せていました。

 パルセイロの左サイドは右サイドに比べるとそれぞれのポジションにいる選手の互換性が高いです。水谷-坪川-森川のどの選手がそれぞれのポジションに立っても、それぞれの特性を生かして位置を入れ替えながら相手の守備組織を撹乱することができます。
 この試合であと一歩及ばなかったのは、ラストパスの1本前にあたるパスの精度でしょう。前述したように5バックを崩していくには普段よりもより正確なパスワークが要求されますし、ポジションを入れ替えそれをお互いに認知しながら、正確なパスワークを実行する必要があります。何度か崩しかけていた場面ではそれができていたため、相手の懐に進入することが可能でした。

 シュートまで運べなかった理由の1つに左サイドでの崩しの精度は入ってきますが、正直及第点の崩しの入り方や押し込み方はできていたと考えます。シュートに持ち運ぶのにもう1つ不足していると感じたのが、二次攻撃の厚みです。ただ、これには怪我人問題も関わってくるところなので難しい問題になってきます。
 左サイドで相手を押し込む過程で全体が左サイドに偏った配置になります。二次攻撃として同サイドを繰り返し攻めることも時に効果的になりますが、相手ブロックの隙間を広げるために逆サイドに展開するのも効果的な一手でしょう。
 ただ、今節RSBに起用されたのはCBを本職とする池ヶ谷でした。CB起用時には運ぶドリブルなどで前進するのが上手な選手ですが、運ぶドリブルと相手を「かわす」ドリブルは本質的に異なる部分があり、その部分で言えば、池ヶ谷の能力と展開後のSBに求められる能力のミスマッチがあったように感じます。三田が相手の守備ブロックを中央でピン留めしているところでも、スタート位置が低かったり、相手の嫌がる位置に進入するのは三田に任せてブロックの外から配球する場面が目立ちました。
 この辺りは「なんでSBの攻撃的タスクをこなせないんだ!」となるのは甚だ見当違いといったところで、本来船橋や川田が得意とするプレーエリアでのタスクを完璧にこなせて、CBでも十分な活躍ができるのであれば、もっと上のカテゴリーに引き抜かれているはずです。選手にも得手・不得手があるので、4バックにする時のRSBの人選は怪我人問題が解消しない限り監督の頭を悩ませることになるでしょう。船橋は怪我でしばらく欠場が決まっているため、川田の怪我によるチーム戦術への適応出遅れなどをクリアしてスタメン争いに食い込むことが期待されます。

【守備】
 今節の前半では耐える守備というところはあまり見られず、基本的には奪いにいく守備が多かったと思います。

 開幕節のギラヴァンツ北九州戦と同じ4-3-3での守備でしたが、罠にかけて待つような守備ではなく積極的に前線からプレスをかけてミスを誘うor蹴らせることが狙いの守備でした。相手のボールの動かし方によって配置を変え、人を捕まえにいく守備なので一時的に後方が数的同数になる場面もありましたが、喜岡-秋山コンビが基本的にはシャットアウトしてくれたかと思います。

 ピンチを招いた場面の多くがセットプレーであったり、パルセイロ自陣深くでの中途半端なプレーによるものでした。ボール保持ができているというメンタル状態が自陣の危険なエリアでやってはいけないプレーにつながってしまっていたことも考えられますが、こういった些細な緩みが与えた決定機を決め切るチームとの対戦が多くあるはずなので反省しなければいけない点だったかと考えます。

④後半

【攻撃】

 後半開始の段階でシュタルフ監督が動きました。宮阪に代えて杉井を投入し、4-1-2-3という形自体は変えていないものの、交代に伴って何人かの選手の立ち位置を上図のように変更しました。この交代によって発生したいくつかの攻撃面での良かった点を紹介していきます。

 1つ目はいい意味で宮阪の展開力を頼りすぎなくなったことです。毎試合アンカーとして先発している宮阪の中盤の底からの展開力は超J3級であり、パルセイロの大きな武器になっていると思います。しかし、今節の展開では相手が5バックを構築してDFラインのスペースを消した状態で守備ブロックを固めていたため、押し込んだ状態で宮阪の能力が最大限発揮されることがありませんでした。
 また、5バックを崩す時に相手の状況を見ながら空いているところに対して細かに立ち位置変更をする必要がありますが、宮阪という絶対的な配球役がいることで前の5枚が膠着状態になっていたかと思います。この点を狙っての交代か、負傷による交代かは不明ですが、絶対的な配球役の不在により崩しに入る場面で前半よりも立ち位置修正を頻繁に行うようになり、地上戦での前進が増えました。5バックの構えに対して浮き球での崩しが少なくなり、Y.S.C.C.横浜としても前に出る場面が増え、守備組織の隙が生まれやすくなりました。

 2つ目は水谷のIHでの貢献です。この試合IHに入ってからの水谷の動きだけ見ていても呑めるほどの素晴らしい立ち位置をとっているので、ぜひ注目してみてください。CBやアンカーが持った時、相手の5-4-1のブロックに対して常に相手の嫌がるライン間の立ち位置をとっています。この動きによって2列目のブロックが思うように杉井に対してプレスをかけられず、前半よりも有効に押し込めていたと考えます。
 佐野が投入されて5-3-2になるまでの後半だけでも良いので水谷に注目してください!本当に素晴らしいポジショニングです。また、狭いスペースでも仕事ができると相手に印象付けている選手がライン間に立つからこそ効果があったのかもしれません。

【守備】

 3-4-2-1と4-1-2-3の噛み合わせの都合上、WBに対してはIHがスライドして対応することになりますが、前線からの制限がうまくかからなかった時はスライドの遅れにつながりWBに自由な時間とスペースを与えることになってしまい、ピンチにつながることがありました。ただ、こういった場面もあまり多くはなく、ボールロストが悪い局面以外はそもそも悪くない守備だったかと思います。攻守は表裏一体であるため、それほどまでに押し込めていた裏付けとも言えるでしょう。

 また、後半に入りアンカーに坪川が配置されましたが、イエローカードをもらった影響もあってか相手のカウンターに対して強く出られない場面もあったため、住永の早めの投入につながったかと考えます。押し込んだ状況においてのテンポ感をつくるゲームメイクは昨季から引き続きさすがといったところでした。1アンカーでも耐えられる守備強度が出てくると監督の中でもファーストチョイスとして悩みの種になれるかもしれません。

 Y.S.C.C.横浜の日高選手が投入された影響もあってか終盤は5-3-2のブロックを固めての守備になりました。Y.S.C.C.横浜は後ろからの組み立てを得意としており、前からプレスに行くことでこれまでは前進の自由を奪っていましたが、日高選手というロングボールでの逃げ道ができたことで、ロングボールも自信を持って供給できるようになりました。パルセイロとしてはリードしていますし、前からのプレスで後方を空けるよりも相手の攻めたいスペースを潰す狙いがあったと言えます。5-3-2にすることで相手のDFラインに自由を与え、4-1-2-3の時よりも押し込まれやすくなりましたが、最後まで無失点で乗り切ったのは狙い通りと言えるでしょう。

⑤個人的MOM

 この試合での個人的MOMは水谷拓磨です!
 後半の攻撃のところでも紹介しましたが、この試合でIHに配置された彼は相手にとって常に嫌な選手であり続けたと思います。攻撃時の立ち位置はもちろんのこと、自慢の運動量を生かした終盤でのセカンドボール回収率や相手より先に触るうまさはさすがとしか言いようがありません。
 キャプテンのプレー面での貢献あってこそ掴んだ貴重な勝点3ですから、来週の天皇杯県予選に加えて再来週の鹿児島ユナイテッドFC戦も勝って4月を3連勝で終えて5月の信州ダービーを迎えましょう。

まとめ

 ここまで第6節の激闘を振り返ってきました。ボールの保持から考えれば、もう数得点欲しかったですが、5バックで強固な守備組織を固めるY.S.C.C.横浜から流れの中で得点できたことは大きな成長の糧になるはずです。Y.S.C.C.横浜に対して流れの中で得点ができた良さと1得点しか奪えなかった課題の両方を整理してチーム全体で天皇杯長野県予選準決勝に臨んでほしいと思います。
 アルティスタ浅間も近年力をつけている難敵です。カテゴリーが下だからといって簡単に勝たせてくれる相手ではありません。ピッチに入ってしまえば、カテゴリーやプロというような肩書きが戦うのではなく、本気で勝利を望む2つのサッカーチームの戦いになります。今季ここまで負けなしの鹿児島ユナイテッドFC戦に向けて弾みをつけるためにも、絶対に24日の佐久陸では勝利を掴み取りましょう!

それでは、鹿児島ユナイテッドFCvsガイナーレ鳥取のマッチレビューでお会いしましょう!


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