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【阿南町】新野物語制作記①〜初顔合わせを終えて(山田百次さん 阿南滞在(6月))

4月から続いてきた阿南町でのリサーチも、ついに一つの作品を発表するところにまで辿り着きました。タイトルは『新野物語』。

NOA新野チラシ

11月の本番へ向けて、(※観劇の予約は定員に達したため受付を締め切っております)
どのように作品がつくられていったのか、レポートしていきたいと思います。まずは、出演者の顔合わせから。

6月18日、ホストの金田さんのお宅であるログハウスにて、初めて出演者3人が顔を合わせました。
初対面となった俳優の小原華さんの住む売木村(新野の隣村)の話や、今までの俳優活動の話を中心に、最近の生活のことや、それぞれの演劇にかける想いを語り合う、大変意義のある会合となりました。
そして、それを終えての感想、作品にかける想いを3人に伺いました。

山田百次さん(滞在アーティスト、脚本、出演)

ーー 普段の活動を教えてください。
主に舞台の台本を書いたり演出したり、俳優をやったりしています。
地元青森の方言を多用し、青森を題材にした作品をよく作ります。それ以外にも北海道を題材にした作品も作ったりしています。

ーー 初顔合わせしたときの印象はいかがでしたか。
案内を引き受けてくれたDeepJapan新野の金田さん一家が、とても親切にしてくれます。それに新野に住んでいる楽しい住人たちを紹介してくれます。父の信夫さんは新野に誇りをもって情報を発信し、移住者の受け入れも積極的に行なっていて、どうすれば自分たちが住む新野をよりよく存続できるかを常に考えています。
俳優として参加してくださる渚さんは小柄でかわいらしく、まるで天使が下界に舞い降りたかと思いました。それに自分の仕事の出張所を新野に作ったりして地元愛にあふれています。
小原華さんはお話がとても上手で一緒にいて楽しいし、自分の意見をちゃんとつたえてくれます。

ーー 俳優二人への今の印象はいかがですか?
三人そろったのが、まだ1回だけなので、これからどんどんコミュニケーションをとって、楽しい作品を作っていきたいです。

ーー NOAに参加することになったキッカケを教えてください。
NOAのコーディネーターの野村さんが、面白い町があるから来てみないかと新野のウェブサイトを紹介してくれました。即身仏の行人さまだったり、日本の祭りの原始的な部分が色濃く残る「雪祭り」などに衝撃を受け、興味をもったのがキッカケです。

ーー 新野に何度か滞在しての印象はいかがですか。
新野へは険しい山、深い谷を越えなければなりません。車で向かうのですが曲がりくねったり高低差があったりで緊張しながら運転します。そんな思いをしながら新野にたどりつくとパーッと視界が開け、田んぼとのどかな集落の風景が広がります。その途端とてもホッとするんですよね、何回きてもホッとします。
新野には民話がたくさん残っていて、各民話にちなんだ史跡が町の至る所に点在してます。なので民話が生まれた時代と現在が地続きで感じられます。
今までに4月5月6月と滞在したんですが、ひと月ごとに訪れるので季節の移ろいがはっきりと分かるのも良かったです。

ーー どのような物語にしようと今お考えですか。
新野は盆踊りや雪祭りのように特色あふれる行事があります。祭りの中身を知れば知るほど、祖先を大切にし、現在の自分たちの暮らし、お互いの絆を守るためのシステムだというのがよく分かります。死者と生者が同居しているというのがハッキリと感じられる。日本の祭りとは本来そういうものだということを思い知らされる。
そして宿場町としての色合いもあるので、他者を受けいれる懐の広さもある。
そういったことを面白おかしく物語に昇華できればと考えています。

ーー NAGANO ORGANIC AIRのフォロワーの皆さんにひとこと!
長野出身の友人たちに、自分が阿南町の新野にたびたび訪れているというと「行ったことない」と言われます。
おそらく長野在住の方でも行ったことがない人は少なくないと思います。
これを機にステキな新野に興味を持っていただけたら幸いです。

金田渚さん(ホスト・新野だら実行委員会メンバー、出演)

ーー まずは、普段されている活動について教えてください。
長野市内でTeaArrow(ティアロー)というユニット名で演劇の企画・制作・出演をしています。劇場ではない場所(カフェや美容室など)を貸し切って、お店のPRにもなるようなストーリーを考え上演し、街の活性化にも繋げようという「劇的NAGANO-project」という取組みをしています。
コロナ禍で公演活動は一時休止していますが、2016年から演劇の要素を使ったコミュニケーションWS「コミュショップ」の講師をつとめ、2020年からはオンラインでワークショップを続けています。

ーー 初顔合わせを終えた感想をお聞かせください。
山田さんの全編津軽弁の一人芝居動画を拝見していたので、お会いできるのがとても楽しみでした。また最初にお話したときに「お客さんが言葉が分からなくてもいいんだ」とおっしゃっていたのが印象的でした。
言葉でわかりやすくするのではなく土地の空気感を大事にされている百次さんが、新野のどんなところを切り取り作品にされるか楽しみでいます。またそこに関われることを光栄に思います。

ーー 脚本の山田さん、共演者の小原さんへの今の印象はいかがですか?
津軽の山田さん。兵庫の小原さん。そして長野の私がこんな山の中で出会って、同じ作品に取り組んでいることが未だに不思議です。この台詞は津軽弁ならなんていう?などそれぞれの方言に言い換えてみたりして、とても楽しく貴重なご縁だと感じます。
このご縁からいろんな繋がりへ広がっていきますように、最初の一歩になったら嬉しいです。

ーー 故郷である新野を題材にした作品をつくっていくわけですが、渚さんから見た新野の魅力とは何でしょう?
やはり何百年も前から繋がっている色濃い文化だと思っています。今回は盆踊りに焦点があたりそうですが、新野には雪祭りや即身仏、民話、風習など様々な文化が残っています。
伝わっている文化そのものも価値があるかと思いますが、私はそれを500年以上伝えてきた人たちがいることを尊く思います。またその流れの先頭に私たちがいるんだと最近よく感じます。
今回の作品で色んな人と繋がり、阿南町に興味を持ってくれる人が増えてくれたら嬉しいです。

ーー どのような作品にしていきたいですか?
色んなことが思うようにいかず、無念な想いをしている方がたくさんいるかと思います。そんな方の想いが見終わったときに少しでも消化できたらいいなと思います。

ーー NAGANO ORGANIC AIRのフォロワーの皆さんにひとこと!
南信からも長野の魅力を発信する素敵な作品が出来上がりそうです。ぜひ楽しみにしていてください。そしていつか阿南町を訪れてくださった折には、ご案内できたらと思います。


小原華さん(出演)

ーー まずは、普段されている活動について教えてください。
移住先でコーヒースタンドをオープンし、採算度外視のハイクオリティコーヒーをハンドドリップで淹れたりするから手首を腱鞘炎にさせてみたり、信州の高原野菜を無農薬で作って半農半xな生活を目指したりするけど草に完全に負け続けたり(でも土を触る生活は最高に幸せ)、映像の仕事はごくたまにさせてもらえる時に都会へ出て行ったり、演劇教育に携わり、小学校や近隣地域で講師をして、みるみる変わる子どもたちの姿に感動したり、地域おこし協力隊として村の方々と交流しながら田舎の魅力を発信したり、マルチタスクに飲み込まれて白目をむきながら格闘中。移住三年生。

ーー 初顔合わせを終えた感想をお聞かせください。
心臓が早鐘を打ち鳴らしております。

ーー 脚本の山田さん、共演者の渚さんへの今の印象はいかがですか?
山田さん 日高昆布。
渚さん  ピノコ。

ーー 今回のプロジェクトに参加することになった経緯を教えてください。
隣村に女優さんがいますよ、と金田ご夫妻に紹介していただけました。が、私は強く強く、もっと芝居に嵌りたい、役者で苦しみたい!と願っていたので、引き寄せてしまったんですね。有難いことです本当に。奇跡が起こったと思いましたよ。こんな山奥に素敵すぎる芝居チームが向こうからやって来てくれたのですから。すべての点が繋がって、ご一緒させていただくことになりました。

ーー 新野を題材にした作品をつくっていくわけですが、兵庫県出身の小原さんから見た新野の魅力とは何でしょう。
正直言いまして、新野のことはほとんど知りません。ただ、このあたりの文化としては関西の賑やかな祭りとは真逆の静かさ、しっかり続いている昔からの風習、”迷信”と片付けられない習慣など、日常が魅力に溢れています。不便だとか、非合理的だとか、そんな印象が田舎にはあるかもしれません。確かにそんな面もありますが、実際に生活してみると、知恵を尽くし、自然と調和した一つ一つの工夫や所作に感動の連続です。「実にアナログで、人間臭がぷんぷんするところ」と言うのが近いでしょうか。

ーー どのような作品にしていきたいですか?
私たちはこうやって生きてきて、そしてまた生きていくのであります。人間なのであります。と、感じるような。自分も、観た人も。「一緒に生きたな!」と感じるような。でもこれを書いている時点で、まだ台本はないので勝手なことを言っていますけどね。そんな芝居にしたいし、そんな芝居がしたいです。

ーー NAGANO ORGANIC AIRのフォロワーの皆さんにひとこと!
滋味深い芸術を!長野県で!阿南町で!!


青森出身の山田さん、兵庫出身の小原さん、長野出身の金田さん。
出身地も年齢も個性もバラバラな3人がこうして集まった偶然に感謝しつつ、いったいどのような化学反応が起こるのか、楽しみでなりません。
次は10月の稽古の模様をお届けします。
(文責:加藤亜弓)

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